第2回
ニューノーマル時代のオフィスの安全性

2021/03/31

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長 
月刊総務』編集長 豊田健一
ニューノーマル
ニューノーマル時代のオフィスとは

効率性、創造性、快適性から安全性

Beforeコロナでのオフィスに求められていたキーワードは、効率性、創造性、快適性の向上であった。効率性の意味するところは、現場従業員が本業に特化できる環境整備。創造性の意味するところは、前回のコラムで記したように、イノベーション創発の可能性を高めることである。

快適性とは、Well-Beingの向上であり、バイオフィリアというコンセプトのもと、観葉植物を置いたりして、あたかも公園のようなオフィスを構築してきた。そこに降って湧いたように新型コロナウイルス感染症が襲来、罹患を防ぐために、オフィスには安全性の担保というテーマが課せられたのである。

緊急事態宣言時においては、オフィスに出社することを避け、強制的に在宅勤務。緊急事態宣言解除後に、企業によっては原則出社、というところもあった。ただ、罹患防止のために、三密を避けたり、出社率を下げたり、従業員の安全確保のためにいろいろな施策が採られたのである。

経団連オフィス対策ガイドライン

経団連より、オフィスの安全確保のための施策ガイドラインが出されている。その中から、いくつか紹介する。

  1. できる限り2メートルを目安に、一定の距離を保てるよう、人員配置について最大限の見直しを行う。
  2. 飛沫感染防止のため、座席配置などは広々と設置。仕切りのない対面の座席配置は避け、可能な限り対角に配置する、横並びにするなど工夫する。
  3. 始業時、休憩後を含め、定期的な手洗いを徹底。必要となる水道設備や石けんなどを配置。水道が使用できない環境下では、手指消毒液を配置。
  4. 従業員に対し、勤務中のマスクなどの着用を促す。
  5. 窓が開く場合1時間に2回以上、窓を開け換気する。建物全体や個別の作業スペースの換気に努める。
  6. 人と人が頻繁に対面する場所は、アクリル板・透明ビニールカーテンなどで遮蔽する。
  7. 共有する物品(テーブル、椅子など)は、定期的に消毒する。使用する際は、入退室の前後の手洗いを徹底する。
  8. 喫煙を含め、休憩・休息を取る場合には、できる限り2メートルを目安に距離を確保するよう努め、一定数以上が同時に休憩スペースに入らないよう、休憩スペースの追設や休憩時間をずらすなどの工夫を行う。特に屋内休憩スペースについては、スペース確保や、常時換気を行うなど、3つの密を防ぐことを徹底する。
  9. ドアノブ、電気のスイッチ、手すり・つり革、エレベーターのボタン、ゴミ箱、電話、共有のテーブル・椅子などの共有設備については、頻繁に洗浄・消毒を行う。

このように、かなり細かく対応策が記されている。

感染ルートの遮断が基本方針

経団連の対応策も、つまるところ、感染ルートを遮断するための施策である。感染ルートには二つあり、飛沫感染と接触感染。飛沫感染とは、感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つばなど)と一緒にウイルスが放出され、他の人がそのウイルスを口や鼻などから吸い込んで感染することであり、接触感染とは、感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手で周りの物に触れるとウイルスが付く。他の人がそれを触るとウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触ると粘膜から感染することである。

飛沫感染防止の原則は、距離を保つ、仕切る、ということになる。一方、接触感染防止の原則は、接触を減らす、清潔にする、ということになる。上記の経団連の対応施策が、どちらを意図して行うものか理解しておくと進めやすい。

また、対応施策の中には、総務が対応すれば完了するものもあるが、ほとんどの施策は、従業員に協力、実施してもらうものである。協力依頼のためにも、上記の基本方針をしっかりと説明することで、理解が容易になるものと考えられる。

忘れてはならない在宅の安全確保

ニューノーマルでの働き方となると、在宅勤務も当たり前となってくる。オフィスのみならず、在宅勤務中での安全確保も総務の範疇となる。その安全とは、新型コロナウイルス感染症罹患防止もさることながら、大規模震災や頻発する水害から守ることも含まれる。

Beforeコロナ時の防災であれば、オフィスで働いている勤務時間中での防災だけを考えていれば良かったが、ニューノーマルではそうはいかない。多くの従業員が在宅勤務をしている最中に、大規模震災が発生してしまったら、果たして、総務として、どこまで従業員を守り切れるか。

個々の家庭にいる従業員を、組織として守り切るのは、ほとんど不可能。総務としてできることは、防災意識の醸成を行いつつ、一人一人が個々の家庭環境にあわせて防災対策を行っていくしか方法はない。防災教育の実施とともに、やるべきことは三つある。

まずは、在宅勤務をする場所の落下防止、飛散防止の対策である。仕事をする場所の後ろに棚があり、その上に不安定な物が置いてあるとか、そのような落下物への対策である。次に、窓ガラスや、戸棚等のガラスの飛散防止。ガラスが割れて散乱すると避難時に相当の支障が生じてしまう。

ハザードマップの確認もしてもらいたい。個々人の自宅がある場所が、浸水想定地域なのかどうか。自治体が作成しているハザードマップで確認しておく。それにより、避難が必要か、その場合の非常持ち出し袋の準備も必要となる。

また、インフラの確保、備蓄品の確保も重要だ。会社負担で揃えるにはコストが掛かるので、必要な物品のリストを提示するなどして、各家庭で準備できるようにしておく。各自の自宅が緊急対策本部となるケースも出てくる。また、ハザードマップ上で避難の必要性が無い場合は、在宅での避難という事態にもなり、相応の備蓄品がないと、長く居続けることができないからだ。

いずれにせよ、働く場がオフィスだけではないニューノーマル。オフィスの安全と在宅での安全も担保することが求められる。

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  • 著者プロフィール
豊田 健一

豊田健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務

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