第1回
ニューノーマル時代のオフィスのあり方

2021/03/31

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長 
月刊総務』編集長 豊田健一
ニューノーマル
ニューノーマル時代のオフィス機能とは

オフィスは要るのか? なんのため?

オフィスは要るのか要らないのか。必要だとしても、今まで通りの床面積が必要なのか。オフィスを巡る議論が、バックオフィス関係者の間ではホットなテーマとなっている。新聞紙上でも、渋谷の空室率が上昇しているとか、IT系企業では、フルリモートのため、オフィスを全て解約したとか、さまざまな報道がされている。

確かに、在宅勤務により、ソロワークや集中ワークは、オフィスで行うよりも捗った、そのような声は聞かれる。ただ、家庭環境により、むしろ生産性は低下した、そのような声もあることは事実。全てのワーカーの生産性が上がったようではない。

また、課題もいろいろと見えてきた。コミュニケーションの量が減った、ちょっとした質問がしにくい、孤独感によりメンタル不全を起こしてしまう。そのような課題が、ニューノーマルなワークスタイル(リモートありきの働き方)の中で生じてきている。

さらに、オフィスに求められる機能として、安全の確保。新型コロナウイルス感染症罹患のリスクを減らすための設えが必要となり、今後のことを考えると、それがニューノーマルなオフィス設備となっていくことが想定される。

オフィスは要るのか? 要るとしたらどのような役割として存在すべきなのか? それに加えて安全をどう担保していくべきなのか。リモート時代のオフィスのあり方について考えてみたい。

オフィスは万能型から機能特化型へ

ここ数か月、さまざまな講演に呼ばれ、多くの方との対談をしてきた。また、月刊総務でもリモートワークやオフィスについての取材をしてきた。緊急事態宣言解除前の風潮では、もうオフィスは必要ない、フルリモートが最先端、そのような空気感であった。

しかし、いわゆるオフィスの専門家、あるいは総務のプロと言われる人たちは、一貫して、オフィスは無くならない、そのように主張していた。但し、その役割が従来のままではないだろう。とも言っていた。従来の万能型オフィス、ソロワークも会議も、集中仕事も、何でもできるオフィス、その役割ではなくなると。機能特化型オフィスになるのではないかと。

必要な機能としては、三つあると考えられている。一つは、イノベーション創発のための偶発的な出会いの場としての機能。もう一つは、OJT実戦の場としての機能。最後が、帰属意識を高める場としての機能である。

イノベーション、OJT、コミュニティ意識

一つ目の偶発的な出会いの場。まず、そもそもイノベーションとは、偶発的な出会いから生まれると言われている。部門の異なるメンバーが偶然出会い、ざっくばらんな会話の中からアイデアが生まれ、それが孵化してイノベーションが生まれるのだ。

グーグルのオフィスは、人が衝突するように設計されているし、多くの企業で行われている、フリーアドレス、マグネットポイント(コピー機やプリンター、文房具などの共用機材や備品を、あえて一か所に集めること)、リフレッシュルームは、そのための設えでもある。

この偶発的な出会いが、リモート会議では実現できない。リモート会議では、招待されたメンバーだけで、特定のテーマについて議論する場であり、ここに招待していないメンバーが入ってくることはない。必然性の場ということになり、偶発的な要素はあり得ない。この偶発性のための場として、まずはオフィスの役割が存在する。

もう一つが、OJTの場である。確かに知識習得系の研修であれば、e-ラーニングで行うことはできる。ただ、その人の所作や、ふるまい、作業途中でのアドバイスとなると、リアルの場に一緒に居ないと、なかなか伝えられるものではない。見取り稽古、そのようなOJTはどうしても場が必要となる。

三つ目が、帰属意識の醸成、コミュニティ意識の醸成の場である。これはJOB型採用の進展が大きく影響してくる。就社より、自らのスキルを伸ばせる場がある企業が選ばれるようになってくるだろうし、このコロナ禍により、リモートワークができる企業への転職活動も増加している。

多くの企業でワークスタイルが似通ってきて、そして、JOB型採用が当たり前になってくると、最後は、その企業らしさで帰属意識を高めておかないと、離職の可能性がある。その帰属意識を高める場、企業と言うコミュニティに所属している意識を醸成する必要がここに出てくるのである。

もう、オフィスとは呼ばせない

このように、三つの機能に特化した場としてのオフィスの必要性が高まってきているのだ。ソロワーク、集中仕事、ミーティングはリモートで行い、リモートでは補えない機能をオフィスが担う。オフィスもツールの一つでしかないということになる。

そうなると、必要となるのが、従業員のオフィスに対する認識のパラダイムシフト。新型コロナウイルス感染症が終息して、オフィスに戻り始めた時、従来型の万能オフィスの機能を、ニューノーマルなオフィスに求められても、そこにはその機能はもはや存在しないケースが考えられる。

三つの機能に特化している場合、ソロワークや集中仕事は、新しいオフィスではできない可能性がある。従業員のオフィスに対する認識が、Beforeコロナ状態だと、大きな不満要素になりかねない。オフィス管轄部門としては、ニューノーマルなオフィスを作りつつ、さらには、従業員のオフィスに対する認識のマインドセットを同時に行うことが重要となる。

ニューノーマルなオフィス作りには、このように、ハードのみならず、その使い方のソフト、さらには使う側の意識の変革が必要となるのである。

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  • 著者プロフィール
豊田 健一

豊田健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務

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