第23回
働き方改革と両輪の健康経営とは

2020/12/25

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長 
月刊総務』編集長 豊田健一
働き方改革
健康経営の具体的な事例とメリット

働き方改革、健康経営ともに目指すは生産性の向上

働き方改革は生産性の向上がテーマとなっている。その生産性を向上させるのは、個々の従業員の働きであり、その従業員が不健康な状態では生産性が向上するはずがない。ここ数年の働き方改革が始まる前に流行った健康経営。それは生産性向上のために必須の要件であり、働き方改革と別に考えることではない。

生産性向上を働き方という側面で捉えれば「働き方改革」となり、健康面で捉えれば「健康経営」となるだけであり、ともに目指すのは生産性の向上なのである。本来は働き方改革と健康経営はセットで考え、実現していくものなのである。そこで今回は、あらためて健康経営の意味を紹介しよう。

「健康経営」とは、特定非営利活動法人・健康経営研究会が定義した言葉であり、その意味は、「経営者が従業員とコミュニケーションを密に図り、従業員の健康に配慮した企業を戦略的に創造することによって、組織の健康と健全な経営を維持していくこと」である。

健康経営研究会の岡田邦夫理事長は、「健康経営とは、『企業が従業員の健康に配慮することで、経営面でも大きな成果が期待できる』との基盤に立ち、健康管理を経営的視点から考え、 戦略的に実践することだ」と補足している。

では、健康経営のメリットとは何なのか。

  • 医療費負担の節減
  • 生産性の向上
  • 従業員の創造性の向上
  • 企業イメージの向上
  • リスクマネジメント面の効果

従業員の健康管理責任者は経営者であり、その指導力のもと、健康管理を組織戦略に則って展開することが重要になるのは、健康経営のメリットを鑑みると理解できるだろう。

また、今の企業にはパートやアルバイト、契約社員や派遣社員などさまざまな雇用形態の従業員、また外国籍の従業員がいる企業も増えている。価値観・文化が異なるさまざまな従業員全員の健康に留意することが健康経営であり、この健康には身体のみならず精神面も含まれる。

健康経営の具体的事例

健康経営を考えるにあたり、最初に必要となるのが、全社員の勤務状況の把握。どのような働き方をしているか把握しないことには、対応策が見えない。法定の定期健康診断の結果と勤務状況を照らし合わせ、対応策を検討していく。目指すのは法的に必要な「定期健康診断の100%実施」。ストレスチェックなどの法的に要求される事項も確実に実施する。

そのMustな部分をクリアしてからは、自社の課題と社風に即した、個社ごとの取り組みを実施していく。その事例を以下に紹介していく。

日本政策金融公庫の資料によると、以下のような取り組み事例が紹介されている。

  • 社長による「食」の情報提供
  • 「メモリアル休暇」の新設
  • 毎朝のラジオ体操や禁煙運動
  • 建設現場の衛生管理を徹底し、働きやすい職場を創設
  • 健康診断は診断後こそ重要
  • 健康状態の共有に向けた工夫
  • 要再検査受診率100%の達成に向けて
  • 残業時間を削減し、ワーク・ライフ・バランスを追求
  • 全国労働衛生週間を活用した行事計画の策定
  • 有休取得の推進と健康データの還元
  • 健康教室の開催

経済産業省の「健康経営会議」の資料によると、下記のような取り組みが紹介されている。

(啓蒙関連)

  • 目標体重に挑戦する「ダイエットチャレンジ」の実施
  • 毎年10~11月を「健康生活月間」とし、各自が目標を決め生活習慣の改善に取り組む
  • イントラサイトに「健康レター」を毎月配信
  • 減量ゲーム(減量キャンペーン活動)の導入
  • 健康アプリを導入、グループ間で競争しながら生活習慣の改善を目指す
  • 新入社員に適切な睡眠や食事などをアドバイスする
  • 健康教育を30、40、50代の年代別で実施
  • 35歳の従業員を対象とした「ヘルスアップセミナー」の実施
  • 社長の血液サラサラ指数を従業員が超えられるかどうかをイベント形式の企画にした「社長に挑戦! サラサラ宣言」
  • 従業員の家族や取引先へ健康増進に関する手紙を送る
  • 職種別の生活習慣指導の実施
  • 「健康を測る環境作り」として、事業所に体組成計と血圧計を設置
  • ストレステストをウェブ化して、通年で受信できる体制を構築

(健康診断関連)

  • 人事担当役員や上司からの定期健康診断の受診勧奨
  • 部署や事業所ごとに受診率を公開し、競う
  • 有所見者の診断結果に「イエローペーパー」を同封

(休暇制度関連)

  • 四半期ごとに有給休暇を計画的に取得する「ホームホリデー」を、時間単位、半日単位でも取得できる
  • 四半期ごとに必ず1日有給休暇を取得する「俺(私)の休日」

(食事関連)

  • 全員参加型の「ヘルスアップキャンペーン」の実施
  • 1ヵ月間、腹八分目を心がける「ハラハチキャンペーン」の実施
  • 社員食堂のしょうゆ差しをワンプッシュタイプに変更

(運動推進関連)

  • 1日1万歩、2ヵ月間の「ウォーキングキャンペーン」の実施
  • ヨガ体験などの女性社員向け健康増進プログラムの実施

(睡眠関連)

  • 睡眠改善プログラムの実施
  • お昼寝タイムの実施

(その他)

  • 職場にバランスボールを導入
  • 禁煙プログラムを実施し、最初の参加者は社長とした

健康経営実践により、それを自社サイトに掲載するなどして、採用の応募者数が増加したり、従業員の定着率が高まったり、人口減少の日本において、働き方改革とともに、ますます必要とされる戦略がこの健康経営なのである。

働き方改革・労務関連書式

  • 著者プロフィール
豊田 健一

豊田健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務

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