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第11回 課題解決のための、働き方改革

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

第11回 課題解決のための、働き方改革

そもそも何を解決したいのかを問う

今回の新型コロナウィルス対策で、多くの企業がテレワークを実施。社員を守りつつ、事業継続するために実施したかと思う。課題があり、あるいは目的があってのテレワーク導入であり、テレワークを導入することが目的ではなかったはず。つまり、働き方改革が目的ではない。

端的な例で言うと、女性管理職の数値目標「2030」というキーワード。2020年までに、女性管理職を30%にする、という目標。結果、やみくもに女性を管理職に登用し、組織も本人も不幸になってしまったという事例もある。そもそも自社は、何のために働き方を変える必要があるのか、そのことを真剣に問わなければならないのである。

多くの企業に当てはまる働き方改革の本質的な課題とは、何なのか。大きく分けて二つ考えられる。一つは、日本の労働力の減少だ。現場の課題を見れば、人手不足や採用が難しいという課題がある。もう一つが、グローバル化に伴う競争の激化により、新たな取り組みが必要となってきていることだ。現場の課題で言えば、新たな視点、イノベーションの創出。この二軸で整理すると、以下のようになる。

人手不足
(ア) 新たな人手の確保
(イ) 既存社員の退職防止
(ウ) 人員を増加させなくても回る仕組みづくり

新たな取り組み、イノベーションの創出
(ア) さまざまな価値観、属性を持つ社員の多様化
(イ) 多様な社員の交わりの機会を増やす、出会いの場の多様化
(ウ) オープン・イノベーションのための外部との接点作り

以上のような課題解決のために働き方改革を行うのだ、と考えることが重要である。

人材確保のための働き方改革

では、どのようにその課題を解決していくのか。まずは人手不足について。新たな人手の確保、既存社員の退職防止のために、誰もが働き続けられる、働きやすい職場環境整備、制度の確立が必要となる。いつでも、どこでも、誰とでも仕事ができる環境整備のためにテレワークが導入されるのだ。ある条件に適合した人だけが利用できるものから、誰でもが利用できるものに変えていく。流れとしては、利用についての制限を徐々になくしていく方向である。

テレワークの進め方のポイントは、役員から、あるいは部長から利用してもらうというように、上位職者から実施してもらうこと。上位職者が実行すると、下位の者にも勧めやすいからだ。期せずして今回の新型コロナウィルス対応で、役員会を自宅からのウェブ会議で行った企業がある。何の支障もなく実施できたため、役員の在宅勤務が急速に定着したという。

限定正社員制度も同様に、社員の確保に効果がある。時間や場所、勤務地に制限をつけることで働き続けられることになり、それならこの会社で働いてみようと思うことになる。副業も同様の効果がある。IT企業の中には、副業ができるから離職をしないで済む、副業ができるなら入社する、という事例も見られる。副業を解禁したとたん、優秀な社員が数多く応募したという企業もある。

既存業務の効率化も進めたいものだ。人材を新たに採用できなくとも、業務効率化が実現できれば同じ人数で業務を回し、さらに新しいことにもチャレンジできる。いわゆる生産性の向上である。業務効率化といった点では、紙文書の電子化、クラウド化、そしてタブレットやスマホ等のITデバイスの導入と貸与も必須。テレワークの導入には、欠かせないインフラとなる。

イノベーションは、「新結合」とも言われるように、組み合わせから生じる。さまざまな人の考えの組み合わせの数が多いほど、イノベーションの可能性は高まる。すなわち、さまざまな価値観、属性、考えやナレッジを持った多種多様な人材がいる会社ほど、イノベーションの可能性は高まることになるのだ。

すると、どのような状況、環境、属性であっても働き続けられる職場環境や人事制度の構築が必要となる。その次に必要なことは、その多様な人材の交わりの場を作ること。社内イベント等によるリアルな場での交わりを増やす、フリーアドレス等によるオフィスでの交わりを増やす、そして社内SNS等によるITツールでの交わりを増やす施策が実施されるのだ。

あるいは、社内大学として、多くの交わりの場を作っている企業もある。「元気プロジェクト」と称して、例えばヨガに精通している社員によるヨガ教室を開いたり、業務中ではなかなか交わらない社員の出会いの場を作っている企業もある。

外との接点作りにおけるオープン・イノベーションは、制度としていかに外との接点を作るかが課題だが、副業もその一つ。副業を通じて形成した人脈や知識を社内に還元してくれることにより、本業への貢献が期待できる。

このように、課題解決のためにいろいろな手段を取りうることが理解できると思う。どのような手段を取ったとしても、それはあくまでも手段に過ぎない。テレワークをすることで、生産性が向上したのか、人材確保に寄与したのか、その点を見るのであって、何人がテレワークしたのかを目標にしてはならないということだ。

確かに、中間KPIとしてその利用率は把握する必要はあるが、無理に利用させることは避けるべき。問うべきは、その人がどうしたら最も生産性が高まるかということであって、なんでもかんでもテレワークをするということではないのだ。

繰り返すが、そもそも何を解決したいのか、その本質的な課題をしっかりと見定めて、各社各様の働き方改革があるのである。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

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戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

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