第4回
働き方改革における、生産性向上の意味とは

2020/04/07

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長 
月刊総務』編集長 豊田健一
働き方改革
働き方改革における生産性向上を考える

生産性の向上は、効率性と創造性の向上

働き方改革は、労働時間の短縮だけでは本質的な課題解決には繋がらず、国際競争力を向上させる上でも生産性の向上が重要な課題となりつつある。生産性を図式で表すと、以下ようになる。

生産性=アウトプット(付加価値)/インプット(投入資源)

  • インプット(投入資源)を減らしつつ、同等のアウトプット(付加価値)を生み出す生産性の向上
  • インプット(投入資源)はそのままで、アウトプット(付加価値)を増大させる生産性の向上
  • インプット(投入資源)を減らしつつ、さらにアウトプット(付加価値)を増大させる生産性の向上

この図式を頭に入れつつ、生産性向上のための考え方を見ていこう。

この生産性向上(生産性上昇)を、立正大学の吉川教授が絶妙な例えで表現している。「1時間あたりに作れるまんじゅうの数を増やすのが、技術的な意味での生産性上昇。世の中の変化に合わせて売れるまんじゅうを新たに作り出すという生産性の上昇もある」

技術的な意味での生産性上昇とは既存業務の効率化を意味し、新たに作り出すという生産性の上昇とは創造性の向上、イノベーションの創発の可能性を高めるということである。どちらにおいてもスタッフ部門が貢献できる部分は多い。

デジタルトランスフォーメーションで生産性を向上させる

デジタルトランスフォーメーションという言葉を聞いたことがあるだろう。経済産業省が音頭を取って行っている、企業活動の変革のことである。20世紀型の古い仕事の仕方はやめて、21世紀型の柔軟で俊敏な仕事の仕方に変えていくことがその意味するところである。

例えて言うと、巨大企業が後生大事に、つぎはぎだらけの巨大な基幹システムを使い続けるのが20世紀型の仕事の仕方。身軽なクラウドシステムを使いこなすのが21世紀型の仕事の仕方である。従来型の仕事の仕方、自前主義の仕事の仕方、全てを正社員で行う仕事の仕方を払拭することでもある。

そのために必要なのが「タスク分解」という考え方。目の前の仕事を可視化して、どこまでを人(正社員)が対応し、どこからをテクノロジーに置き換え、残りをどのようにBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)するかを考えることである。

言うなれば、不得意なことは得意な人に任せましょう、という考え方だ。例えば、大量の申請書のチェックは人がやるよりRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)に任せた方が正確であり、24時間作業でき、何より不平も不満も言わない。

対人の仕事であれば、正社員が行うと「Aさんは対応してくれたのに、Bさんは対応してくれない」といった不満が生じるところだが、常駐型のBPOに任せれば、SLA(サービス・レベル・アグリーメント)が締結されており誰であっても対応してくれる。サービスを享受する現場社員からは、BPOの方が評価が高いということもある。

デジタルトランスフォーメーションで実現できるのは、先に記した生産性の向上の図式の中のインプットを減らすという生産性の向上である。得意な人が得意分野において、手際良く、つまりは効率良く仕事をしていくことなのだ。

空いた時間に何をするか、それが大事

デジタルトランスフォーメーションによる(テクノロジーの活用、BPOの活用)効率化という生産性の向上が図られると、結果として、正社員の時間的、人的リソースを生み出すことになる。大事なのは、このリソースを使って、つまりは空いた時間で何をするかということなのだ。

生産性向上という側面では、効率化が一つの目的ではあるが、企業活動全体で考えた場合、効率化が最終目的ではない。事業継続、業績向上を目的とした場合、空いた時間で何を行うかがさらに重要となる。それは、本来やりたかった仕事であり、本来やるべき仕事である。

スタッフ部門においても同様である。既存の業務の効率化をすることで人的リソースを生み出し、本来やるべき仕事に集中するのだ。一つには、先の生産性向上のもう一つの側面、イノベーション創発の可能性を高めることである。

詳しくは後のコラムで、そのイノベーション創発の可能性を高める施策について述べるが、端的に言えば、現場従業員の成果を高める仕掛けをしていくことである。現場の仕事を引き取ることが効率性の向上だとしたら、創造性の向上も含め、さらに成果を上げる仕掛けを施すことが、スタッフ部門においての空いた時間の使い方である。

まず、「考える」という人として本来行うべき仕事がその前提にある。さらには、テクノロジー、AIの進展に伴う作業レベルの仕事が無くなっていく現在、その人として本来行うべき仕事にシフトしていく、慣れていくことが、自らの存在価値、プレゼンスを維持、高めることにも繋がる。

繰り返すが、スタッフ部門において効率化を目的とすると、それを達成した後はその人を他の部門に持っていかれるということが往々にしてある。本来やるべき仕事ができないから効率化をするのだ、そのように効率化を手段として捉えないと、スタッフ部門の生産性向上は実現がされないのだ。

働き方改革・労務関連書式

  • 著者プロフィール
豊田 健一

豊田健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務

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