雇用のミスマッチを防ぐトライアル雇用助成金

2021/01/27

新型コロナ助成金

トライアル雇用制度とは

雇用のミスマッチに関して「七五三現象」という言葉があります。これは、就職して3年以内に中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が離職する現象のこと。せっかく費用と時間をかけて採用しても、短期間で離職となれば、企業経営への影響は少なくありません。

もちろん、新卒に限らず中途採用でも短期間での離職は防ぎたいものです。しかし、履歴書や職務経歴書、面接等だけでわが社に合う人材かどうかを完全に見極めることは困難だといえます。短期間に転職を繰り返していたり、1年以上も全く働いていない方などを採用する際は、特に判断が難しいといえるでしょう。

そこで、こうした求職者を一定期間、「お試し」で雇うことができる制度があります。「トライアル雇用」といわれ、職業経験の不足などから就職が困難な求職者を試行的に雇い、その適性や能力を見極めてから常用雇用への移行を促す制度です。

トライアル雇用を行った場合、企業には対象者1人あたり月額4万円の助成がなされます。今回は、トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)をご紹介いたします。

トライアル雇用助成金の受給要件

雇用のミスマッチを防ぐことができると期待されているトライアル雇用に関する本助成金。まずは受給要件をみてみましょう。

【トライアル雇用助成金の受給要件】

  • ① 次にみる「トライアル雇用の対象者」に該当している
  • ② 紹介日時点において、以下のいずれにも該当しない
    • 安定した職業に就いている人
    • 自ら事業を営んでいる人または役員に就いている人で、1週間あたりの実働時間が30時間以上の人
    • 学校に在籍している人(卒業年度の1月1日以降も卒業後の就職内定がない人は対象)
    • 他の事業所でトライアル雇用期間中の人
  • ③ ハローワーク・職業紹介事業者等に提出された求人に対し、ハローワーク・紹介事業者等の紹介により雇い入れること
  • ④ 原則3か月のトライアル雇用をすること
  • ⑤ 1週間の所定労働時間が原則として通常の労働者と同等の30時間(ケースにより20時間)を下回らないこと

トライアル雇用の対象者は次の通りです。

【トライアル雇用の対象者】

要件 備考
① 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
② 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている パートやアルバイトなどを含め、一切の就労をしていないこと
③ 妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている 安定した職業とは、期間の定めのない労働契約であって、1週間の所定労働時間が通常の労働者と同等であるもの
④ 紹介日において、ニートやフリーター等で55歳未満である ハローワーク等において担当者制による個別支援を受けていること
⑤ 就職の援助を行うにあたって、特別な配慮を要する 生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者

助成金申請の流れ

本助成金の全体像をみてみましょう。まずはハローワークに「トライアル雇用求人」を提出します。その後の流れは以下の通りです。

助成金申請の流れ
  • ① ハローワークから紹介を受け、対象者のトライアル雇用を開始します
  • ② トライアル雇用開始日から2週間以内に、対象者を紹介したハローワークにトライアル雇用実施計画書を提出します。計画書には、雇用契約書など労働条件が確認できる書類を添付してください
  • ③ トライアル雇用から常用雇用に移行します
  • ④ トライアル雇用終了日の翌日から起算して2か月以内に、事業所を管轄するハローワークまたは労働局に支給申請書を提出します。申請期限を過ぎると助成金を受給できなくなりますので、ご注意ください

なお、トライアル雇用期間の途中で常用雇用へ移行した場合や、対象者が自己都合で離職した場合は支給申請期間も変わりますので、速やかに紹介を受けたハローワークに連絡してください。

助成される金額は、対象者1人につき月額4万円です(対象者が母子家庭の母等又は父子家庭の父の場合などは月額5万円)となります。助成金は各月の合計額をまとめて1回で支給されます。

支給対象期間 3か月
支給金額 対象者1人あたり月額4万円(合計12万円)
※ 対象者が母子家庭の母等又は父子家庭の父の場合などは、1人あたり月額5万円(合計15万円)

支給対象期間は3か月ですが、期間中に常用雇用に移行した場合や、対象者が離職してしまった場合等には、一定の計算式で算出された支給額となります。

添付書類の確認を

支給申請は、「トライアル雇用結果報告書兼トライアル雇用助成金支給申請書」で行います。添付書類は以下の通りです。雇用契約書や出勤簿(タイムカード)、賃金台帳などの書類は、日ごろから労務管理を適切に行っていれば問題なく用意できるものですから、準備にそれほど労力はかからないと思われます。

【添付書類】

  • ハローワーク等の受理印のある計画書の写し
  • トライアル雇用期間中の出勤状況が確認できる書類又はその写し(出勤簿など)
  • トライアル雇用労働者に対してトライアル雇用期間中に支払われるべき賃金について支払ったことが確認できる賃金台帳又はその写し
  • トライアル雇用期間中の労働契約について確認できる書類又はその写し(雇用契約書もしくは雇入れ通知書等)
  • 当該労働者の常用雇用移行後の労働契約について確認できる書類又はその写し(トライアル雇用労働者が常用雇用へ移行した後の期間に係る雇用契約書もしくは雇入れ通知書等)
  • その他支給要件を確認するにあたって管轄労働局長が必要と認める書類

トライアル雇用のメリット・デメリット

最後に、トライアル雇用のメリットとデメリットをまとめてみます。

メリット デメリット
  • 常用雇用する前に求職者の能力や適性を見極めることができる
  • 雇用のミスマッチを防ぐことができ、短期間での離職を避けることができる
  • 1人あたり12万円の助成があるので、採用コストを削減できる
  • 求職者の能力や適性を判断し、わが社に合わないと判断すれば本採用の義務がない
  • 就業経験が不足している人や、ブランク期間が長い求職者等が対象なので、教育や育成の負担が大きくなりがちである
  • 即戦力者の採用には向かない
  • 申請書類や添付書類の作成・確認の時間が必要である

トライアル雇用と似たものとして、試用期間があります。試用期間の場合、初めから期間の定めのない契約を結ぶため(本採用が前提)、試用期間満了時に本採用を拒否することは解雇にあたります。一方、トライアル雇用は常用雇用への移行を目的としているものの、わが社に合わないと判断すれば本採用する必要はありません(解雇にはあたりません)。

トライアル雇用では、本採用前に書類や面接だけでは判断しにくい能力や適正をみることができます。雇用のミスマッチを防ぐため、ぜひトライアル雇用の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

※本内容は、令和2年12月25日現在、厚生労働省より公表されている情報に基づいております。申請にあたっての詳細は、労働局又はハローワークにご確認をお願いします。

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  • 著者プロフィール
角村俊一

明治大学法学部卒業。地方公務員(杉並区役所)を経て独立開業。
「埼玉働き方改革推進支援センター」アドバイザー(2018年度)、「介護労働者雇用管理責任者講習」講師(2018年度/17年度)、「介護分野における人材確保のための雇用管理改善推進事業」サポーター(2017年度)。
社会保険労務士、行政書士、1級FP技能士、CFP、介護福祉経営士、介護職員初任者研修(ヘルパー2級)、福祉用具専門相談員、健康管理士、終活カウンセラー、海洋散骨アドバイザーなど20個以上の資格を持ち、誰もが安心して暮らせる超高齢社会の実現に向け活動している。