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病気になっても働き続けられる会社を支援!(治療と仕事の両立支援助成金)

著者:本山社会保険労務士事務所 所長  本山 恭子

病気になっても働き続けられる会社を支援!(治療と仕事の両立支援助成金)

最近は以前に比べて、例えば「がんなどの病気にかかったイコール会社を退職する」ではない事例を目にすることが、増えてきたように思います。皆様の周りではどうでしょうか。

厚生労働省から平成28年にガイドラインが出され、そのころから少しずつ病気の治療をしつつ働き続けられるようにするための「両立支援」が言われるようになってきました。しかし、まだまだ浸透するとまでは言えない状況のようでもあります。

両立支援の必要性が出てきた理由には、人手不足等により以前よりも就労する高齢の方が増えたこと、医療の進歩により疾病罹患後の生存率が高くなったこと、入院日数の減少など様々なものが挙げられます。

これらの他にも、両立支援には労働者の安心感やモチベーション向上による人材の定着、健康経営の実現、多様な人材の活用による組織や事業の活性化、企業としての社会的責任の実現など多くの意義があると言われています。

両立支援ができる仕組みづくりを考えている事業場がありましたら、ぜひ検討していただきたい助成金があります。

今回ご紹介します助成金は、独立行政法人労働者健康安全機構が行っている「治療と仕事の両立支援助成金」のなかの「環境整備コース」です。これは、実際に両立支援を必要とする対象労働者がいなくても申請できるものです。


治療と仕事の両立支援助成金(環境整備コース)

この助成金は、事業者が両立支援環境整備計画を作成し、計画に基づき新たに両立支援制度の導入を行い、かつ、両立支援コーディネーターを配置した場合に費用の助成を受けることができる制度です。概要を見ていきましょう。

≪助成金を受けるための事業場の要件≫

  • (1)労働保険の適用事業場であること
  • (2)過去に両立支援コーディネーターを配置したことを事由として、障害者雇用安定助成金(障害・治療と仕事の両立支援制度助成コース)(平成30年4月から「障害や傷病治療と仕事の両立支援コース」に改称)及び今回紹介する2つの助成金を既に受給していないこと。

≪助成金を受けるための取組要件≫

以下(1)に挙げる両立支援制度を導入し、かつ(2)に挙げる両立支援コーディネーターを配置します。

  • (1)認定された両立支援環境整備計画(認定両立支援環境整備計画)に基づき、計画期間内に次の3つの要件をすべて満たす両立支援制度を新たに導入すること
    • ①がんなどの反復・継続して治療が必要となる傷病を抱える労働者の、障害や傷病に応じた治療のための配慮を行う制度であること
      (例)時間単位の年次有給休暇、傷病休暇、病気休暇などの休暇制度
      フレックスタイム制度、時差出勤制度、短時間勤務制度、在宅勤務制度
      注)取得条件や取得中の処遇(賃金支払いの有無など)は問われません。
    • ②雇用形態を問わず雇用保険一般被保険者にも適用される制度であること
    • ③両立支援制度を利用するための要件、基準、手続き等が就業規則または労働協約に明示されていること
  • (2)次の要件すべてを満たす両立支援コーディネーターを配置していること
    • ①両立支援コーディネーター基礎研修を受講、終了している「労働者」であること(研修受講、終了するのは認定両立支援環境整備計画の期間中)
    • ②助成金支給申請時点において、雇用保険一般被保険者として継続して1年以上雇用することが確実であると認められる「労働者」であること
    • ③両立支援コーディネーター基礎研修費用(交通費、宿泊費等)が発生する場合には、事業者がこれを全額負担していること

≪助成額≫

200,000円(一法人または一個人事業主当たり、1回限り)

≪申請の流れ≫

実施事項 注意点等
事業所内で両立支援にかかる課題等を検討し、環境整備にかかる計画期間、改正就業規則等、両立支援コーディネーターの配置を検討する。 計画期間は両立支援制度導入月の初日または両立支援コーディネーター配置予定月の初日のいずれか早い日を起算日として1年以内
両立支援環境整備計画申請書の作成と送付添付書類を同封する。
  • 「両立支援環境整備計画書(指定書式あり)」
  • 現行の就業規則または労働協約と改正する就業規則案または労働協約案
  • 支給要件確認申立書
  • 注)上記以外にも必要書類あり
この時点で就業規則または労働協約の改正案を添付する必要があります
【申請期間】
両立支援環境整備計画の計画期間の開始日6か月前から1か月前の日の前日まで
機構内で計画の審査後、認定・不認定通知のいずれかが事業場に送付される。
計画に基づき次の事項の実施
  • 両立支援コーディネーター養成研修申込、受講、研修の終了、両立支援コーディネーターの配置
  • 改正就業規則の労働基準監督署への提出、労働者への周知・施行(両立支援制度の導入)または労働協約締結による導入
計画が認定されたことを受けて実際に動き出します
治療と仕事の両立支援助成金(環境整備コース)支給申請書の提出
【添付書類】(一部省略あり)を同封する。
  • 導入した制度内容が確認できる次の書類のいずれか(就業規則の場合、労働基準監督署の受付印があるもの、10人未満事業場の場合は労働者全員に周知されたことが確認できる書面。労使の署名または記名押印のある労働協約)
  • 両立支援コーディネーター基礎研修の修了証書の写し
  • 配置した両立支援コーディネーターが研修修了日後1年以上継続して雇用されることを証明する「雇用契約書」「労働条件通知書」等の写し
  • 両立支援コーディネーター基礎研修受講期間中の賃金全額払いが確認できる賃金台帳等の写し
  • 両立支援コーディネーター基礎研修に当たって、労働者がその費用を立て替えた場合、事業者がその全額を補填したことを証明する書類の写し
  • 両立支援環境整備実施状況報告書
【申請期間】
両立支援環境整備計画の計画期間の末日の翌日から起算して2か月以内(申請期限厳守)



(注)期間の定めの有無の記載、期間の定めありの場合には更新の可能性の記載が必要です
機構内で支給申請書の審査、支給決定通知・振込
支給決定通知書及び助成金の受領

※ ②で申請した両立支援制度の内容や計画の内容に変更が生じる場合には、計画提出時と同じ書式で変更届を提出しなければなりません。行っていない場合には助成金が不支給となることがありますので、ご注意ください。

【提出先】

独立行政法人労働者健康安全機構 勤労者医療・産業保健部 産業保健業務指導課

詳しくは以下のURLから独立行政法人労働者健康安全機構の該当ページをご覧ください。
不明な点がありましたら、Q&Aもありますので確認しながらご準備いただきますようお願いします。
参照:独立行政法人労働者健康安全機構「令和2年度治療と仕事の両立支援助成金(環境整備コース)

ご紹介しました「治療と仕事の両立支援助成金」には、「環境整備コース」の他に「制度活用コース」もあります。これは、事業者が両立支援制度活用計画を作成し、計画に基づき両立支援コーディネーターを活用し、両立支援制度を用いた両立支援プランを策定し、実際に適用した場合に支給されるものです。環境整備コースで助成金を受給した事業場も、制度活用コースの助成金を受けていただく事も可能となっています。

【注意】

現在、コロナ禍にあり両立支援コーディネーター養成研修が実施されていないことから、認定申請の提出も受付が止まっているようです。申請を検討する場合には状況をご確認の上行ってください。

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著者プロフィール

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本山 恭子

本山社会保険労務士事務所 所長

特定社会保険労務士、行政書士、公認心理師、産業カウンセラー、消費生活アドバイザー
ストレスが多く、事業運営もグローバル化の中厳しく、企業、労働者共に大変な今、少しでも働きやすい環境を作るお手伝いをすることを通して、企業、労働者の皆様のお手伝いを精一杯してまいります。法律だけの四角四面でない、気持ちを汲んだサポートを心掛けています。

【事業内容】
「働く」社会で一番大切な「人」にまつわる事柄へのお手伝いをいたします。労働基準法、社会・労働保険に関する相談から、メンタルヘルス対策、コミュニケーション、社内活性化など以下の通りです。企業、個人いずれからのご相談も可能です。
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