第4回 正しい債権回収の基本 チャンスは利用しよう
弁護士が伝授!正しい債権回収の方法 【第1回、第2回、第3回、第4回】
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危険信号はチャンスでもある
こちらがきちんと請求をすると、相手によっては、支払いの延期や分割払いを求めてくることがあります。
このことは、相手の信用状態が危険であることを示していますが、債権回収における最悪の場合や最後の手段を意識すれば、チャンスともいえる場面です。
つまり、既に相手が危険で、担保もない状態では、相手が破産することは避けるべきですし、訴訟を提起するのもデメリットが大きいです。このような場合、立場が極めて優位ですから、ただ相手の要望を受け入れるのではなく、その代わりに、相手に債務や遅延損害金を認めさせたり、新たに担保を取得したり、訴訟を回避する公正証書を作成させたりといった、こちらの要望を受け入れさせられる可能性が高いのです。これは、債権の回収保全という視点からはチャンスにもなりえます。
まずは債務を認めさせましょう
こういったケースでは、まずは相手に債務を認めさせる条項を作りましょう。これは後々裁判になった際に極めて有効な証拠となります。
最初から契約書を作っていない取引などでは、債務承認がとれるだけでも意味があります。また、債務承認には時効を中断させる効果もあります。売掛金の時効はわずか二年ですから、これも債権管理上は意味があります。
また、これまで利息の定めをしていなかったとしても、商取引ですから年6%の利息は相手に請求できますから、この際、利息は認めさせましょう。これらの内訳は明確に分けて記載した方がよいでしょう。
支払方法は微妙なバランス
難しいのは、いつ、いくら払うのかという点です。
何十年にも渡る分割払いを受け入れることはできませんが、分割の回数が少なくなると一度に支払う金額が大きくなって結局は支払えないということになりかねません。
裁判所での和解では3年~5年の分割払いを認めることが多いですので、この範囲であれば、任意に支払ってもらうことが重要ですから、認めることも検討に値するのではないでしょうか。
なお、書式例の第2条は「元金を」と記載されていますが、その下の記載からすれば誤記と思われます。
分割払いの場合には、いつ元金を、いつ利息を、いつ遅延損害金を支払うと明確に定めておかないと、一部しか支払われなかった場合に支払ったものが元金、利息、遅延損害金のどこに充当されたのかがわからなくなる可能性がありますので、明確にしておいた方がよいでしょう。
ペナルティは厳格に
支払を延期したり、分割払いにするだけでも、相手にとってはメリットが大きく、こちらにとってはデメリットがある契約です。それを考えれば、この約束が守られなかった場合のペナルティは厳格にするべきです。
たとえば、一度でも分割金の支払いが遅れれば、期限の利益を喪失させ、残金全額と遅延損害金をすぐに支払うという内容にすべきでしょう。立場の優位性を利用して、連帯保証人や担保が取得できれば、このペナルティはこちらにとっては有利に働きます。
分割払いにするのであれば、相手の負担で公正証書にすべき
公正証書は、その証書に記載した契約内容に違反した場合、訴訟を経なくても、強制執行が可能になるという強い効力を持った証書です。これによって、わざわざ訴訟をする時間と手間が節約できますので、支払いの延期や分割払いを認める場合には、是非作成すべきでしょう。証書の案を持参し、お近くの公証役場に出向いて相談してみてください。
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