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業務委託契約書の書き方と注意点

業務委託契約書の書き方と注意点

業務を外注するときなどに作成する「業務委託契約書」。最近は専門家に依頼せず、テンプレートなどを利用して作成するケースも増えています。

しかし、記載内容にミスや漏れがあると、後々大きなトラブルに発展する可能性があるため、正しい書き方を理解しておくことが大切です。

そこで今回は、業務委託契約書に記載すべき主な項目や、業務委託契約書作成のために知っておきたいポイントなどについて解説します。


業務委託契約書の書き方

業務委託契約書には、のちのトラブルを防ぐためにも、契約内容について細かく記載しておく必要があります。記載すべき項目は契約内容によって異なりますが、主な項目は以下のとおりです。

  1. 受託者・委託者の名称
  2. 委託する業務の内容
  3. 契約期間や納品日
  4. 委託料
  5. 委託料の支払条件と支払日
  6. 成果物の権利について
  7. 再委託について
  8. 契約内容の変更・解除の条件
  9. 秘密保持について
  10. 反社会的勢力の排除について
  11. 紛争・損害賠償について
  12. 受託者・委託者の署名欄
  13. その他必要事項

それぞれの項目に何を記載すると良いのか、くわしく見ていきましょう。

1.受託者・委託者の名称

誰が誰に対して業務を委託したのかがわかるように、受託者・委託者の名称を記載します。業務委託契約書の始まりに、以下のように記載するのが一般的です。

【例文】
〇〇(以下「甲」という)は、〇〇(以下「乙」という)に対し、〇〇に関する業務における業務委託契約(以下「本契約」という)を締結する

2.委託する業務の内容

委託する業務の内容を記載します。業務範囲でもめることがないように、できるだけ詳細に書きましょう。

委託する業務に関連する内容ではあるものの、今回の業務範囲に含まない業務がある場合は、その対象外の業務についても記載しておくと安心です。

【例文】
甲が乙に委託する業務(以下「本業務」という)は、〇〇及び〇〇に付随する〇〇業務とする。但し、〇〇等は本業務に含まれないものとする

3.契約期間や納品日

業務委託期間や成果物の納期などについて記載します。検品方法や納品方法などに指定がある場合は、その内容も記載しておきましょう。契約更新を行う予定がある場合は、自動更新や途中解約に関する記述も入れておきます。

【例文】
本業務の委託期間は、令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までとする。契約満了の〇ヶ月前までに、甲及び乙のいずれからも本契約に関する解約の申し込みがない場合は、当該委託期間の末日の翌日から〇年間を新たな業務委託期間として自動更新されるものとし、以後もこの例による

4.委託料

委託料や報酬の金額を明記します。消費税や着手金、必要経費の請求、保証金の有無や金額なども記載しておきましょう。

【例文】
甲は乙に対し、本業務の委託料として〇〇円(消費税別)を支払うものとする

5.委託料の支払条件と支払日

委託料や報酬の支払条件と支払日も、忘れずに記載しておきましょう。

  • 一括か分割か
  • 何日締めの何日払いか
  • 銀行振込かその他の支払方法か
  • 振込手数料は甲と乙のどちらが負担するか

上記のように、委託料の支払いに関する情報を具体的に記載します。請求書の発行が必要な場合は、その旨も記載しておきましょう。

【例文】
甲による支払いは〇〇締め〇〇までに、乙の指定する銀行口座に振り込むものとする。振込手数料は甲が負担する。

6.成果物の権利について

委託する業務が何らかの著作物制作である場合、成果物の権利が甲と乙のどちらに帰属するかを記載しましょう。権利についてあいまいにすると、著作権侵害などのトラブルが起こるリスクがあります。

【例文】
本業務により作成された成果物は、有体・無体に関わらず、一切の権利を甲に帰属するものとする

7.再委託について

委託する業務について、再委託(※)を認めるかどうかを記載します。再委託を認める場合、誰にでも再委託をして良いのか、どの範囲まで再委託を認めるのかといった条件も記載しておきましょう。

【例文】
乙は甲に事前通知することなく、本業務の全部または一部を第三者に再委託してはならない

※再委託:受託者が自身以外の第三者に業務を委託すること

8.契約内容の変更・解除の条件

委託した業務が遂行されないなど、何らかの理由から契約内容を変更したり、契約を解除したりする必要が出てくることがあります。

そのようなときのために、契約内容の変更・解除の条件も記載しておきましょう。条件が複数ある場合は、わかりやすいように箇条書きにします。

【例文】
当事者の一方が本契約の条項に違反した場合は、当事者は何らの催告をせず、直ちに本契約を解除できる

9.秘密保持について

委託した業務を遂行するにあたり、社内マニュアルや個人情報など、外部に漏らしたくない情報を受託者に共有することがあるでしょう。そうした情報の流出を防ぐために、秘密保持についても記載する必要があります。

ただし、別途秘密保持契約書を締結する場合は、秘密保持に関する記述は省いてもかまいません。

【例文】
乙は本契約に関して知りえた情報を一切他に漏洩させてはならない

10.反社会的勢力の排除について

「暴力団排除条例」の施行後、さまざまな契約書に当事者のどちらかが反社会的勢力に属している場合、もう一方の当事者は契約解除できる旨が盛り込まれるようになりました。

各自治体で定められている条例などをもとに、反社会的勢力の排除に関する内容を記載しておきましょう。

11.紛争・損害賠償について

トラブルが起きた場合の対応方法や、損害賠償責任の範囲、賠償額などについて記載します。契約書に定められた内容以外の問題が起きた場合に、どう解決するのかといったことも記載しておくと良いでしょう。

【例文】
損害を被った場合は賠償を請求できるものとする
本契約に定めのない事項に関しては、甲乙協議の上、都度定めるものとする

12.受託者・委託者の署名欄

業務委託契約は、受託者・委託者双方が署名捺印することで成立します。業務委託契約書の最後に、受託者と委託者それぞれの署名欄と捺印欄を設けておきましょう。

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13.その他必要事項

業務委託契約書の内容は、委託する業務によって変わってきます。ここまでに紹介した項目のほかに、必要な項目があれば追加しましょう。

たとえば、コンサルタント業務では委託された業務に対しての「報酬や費用分担」について明記されるのが一般的です。販売委託の場合は「検品義務」「返品ルール」「品質保証」「第三者による権利侵害への対処」「販売価格や売上の清算時期」などを記載する必要があるでしょう。価格や清算、支払いに関する項目は契約内容が幅広いため、別途契約書を作成するのが基本です。

それぞれの業務で必要とされる項目を漏れのないように記載するためには、テンプレートを活用するのが効率的でしょう。

業務委託契約書の書式テンプレート

業務委託契約書を作成する際のポイント

ここでは、業務委託契約書を作成するにあたって、押さえておきたいポイントを3つ紹介します。

契約書は必ず2通作成し、うち1通には収入印紙を貼る

業務委託契約書は偽造・加筆防止のために、必ず2通作成することが大切です。また、作成したうちの1通には、収入印紙を貼っておきましょう。

「請負契約」に関する業務委託契約書には、代理店や特約店の契約を除き、収入印紙を貼り付けるよう印紙税法で定められているためでます。

貼り付ける収入印紙の金額は、業務委託契約書に記載されている契約金額によって異なります。

契約金額 印紙税額
1万円未満 非課税
1万円超 100万円未満 200円
100万円超 200万円以下 400円
200万円超 300万円以下 1,000円
300万円超 500万円以下 2,000円
500万円超 1,000万円以下 1万円
1,000万円超 5,000万円以下 2万円
5,00万円超 1億円以下 6万円
1億円超 5億円以下 10万円
5億円超 10億円以下 20万円
10億円超 50億円以下 40万円
50億円超 60万円

契約金額が記載されていない場合は、1通につき200円です。契約期間が3カ月以上になる代理店や特約店の契約に関しては、1通につき4,000円の印紙貼付が義務付けられています。

なお、「委任契約」に関する業務委託契約書については、原則として収入印紙を貼り付ける必要はありません。収入印紙が必要かどうか判断がつかない場合は、専門家に相談しましょう。

委託者側が作成する

業務委託契約書は、委託者・受託者のどちらが作成してもかまいません。しかし、受託者に業務委託契約書の作成を任せると、委託者側が求める内容にならない可能性があります。

業務範囲や契約期間などを詳細に伝える手間もかかるので、委託者側が作成したほうが良いでしょう。

受託者が負うべき義務を知る

業務委託契約書を作成するにあたって、「善管注意義務(善良な管理者の注意義務)」という受託者が負うべき義務について理解しておくことも重要です。善管注意義務とは、受託者が今回受託する業務について、通常要求されるレベルの注意を払う義務のことを指します。

すべての取引で善管注意義務が課せられるわけではなく、中古品や建築物の特定物の取引など、法律行為・事実行為を受託する場合に善管注意義務が課せられます。また、完成物の引渡しが契約事項になっている場合、受託者は瑕疵のない完成物を引き渡す義務も負います。

業務請負契約書・業務委託証明書との違い

業務委託契約書と似た名称の書類として、「業務委託証明書」や「業務請負契約書」がありますが、これらの書類と業務委託契約書には以下のような違いがあります。

  • 業務委託契約書:実際に処理した業務に対して報酬を支払う際に用いる書類
  • 業務請負契約書:完成させたプロジェクトや成果物に対して報酬を支払う際に用いる書類
  • 業務委託証明書:委託者から業務委託を受けていることを証明する書類

とくに業務委託契約書と業務委託証明書は名称が似ていますが、業務の処理が目的か、成果物の提出が目的かという点が違います。ただし、「業務委託」は委任契約と請負契約の総称といえるものなので、明確に区分していないケースもあるでしょう。

業務委託証明書は、受託者が第三者に対し、業務委託を受けて仕事をしていることを証明したいときに必要となる書類です。たとえば、保育園の申し込みの際に在籍証明書の代わりに使うなどするもので、業務委託契約書や業務請負契約書とは大きく異なります。

業務委託契約書作成時の注意点

業務委託契約書を作成するにあたり、いくつか注意したいことがあります。トラブル回避のためにも、ここで解説する内容を把握しておきましょう。

業務範囲・責任範囲を明確に

業務範囲や責任範囲の記載があいまいな場合、特に受託者側は、契約締結後に追加業務が発生したり、思ってもみなかった責任を取らされたりすることがあります。「まあ、これくらいなら」というような契約や態度はトラブルの元です。契約書作成までの話し合いを思い出しながら、しっかりと確認しておきましょう

受託者の同意を得た内容のみ記載する

業務委託契約書には、受託側との話し合いのなかでまとまった内容だけを記載するよう心掛けましょう。

業務委託契約書は命令書ではなく、委託者と受託者の双方が契約内容を確認するための書類です。受託者の同意を得ていない内容を勝手に追加すると、トラブルになる可能性があります。

まとめ

業務委託契約はいろいろな場面で見られるものですが、意外と暗黙の了解や口頭での約束が多いのも事実です。仕事に対しての取り組み方が明確にされた契約を取り交わして、トラブルなく仕事が進められるように心掛けましょう。

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