6.テレワークのためのICT環境づくり

2021/03/05

著者:一般社団法人日本テレワーク協会 相談員 小山貴子
テレワーク・リモートワーク特集

初心者向け!テレワークのためのICT環境づくり

1.導入のための手順

長期的な視野に立ち、理想のシステム環境の構築からスタートできればいいのですが、現在のテレワークへの取り組みは緊急性を帯びていることと思います。まずは、現在のシステム環境を活かしたテレワーク用のICT環境をつくっていく必要性があるでしょう。どの部署・担当者が推進していくのかが決まったら、従業員が現在利用している端末の種類や、回線、サーバなどのシステム環境について確認をするところからスタートです。情報システム関連の部署・担当者と一緒に内容を確認しつつ、テレワーク用ICT環境づくりの検討を進めていきましょう。導入手順の例を示します。

  • ①現在のICT環境の確認
  • ②テレワーク環境の方式選択・各種ツールの選択
  • ③導入に必要な期間の確認
  • ④導入中の業務の停滞箇所・要調整の確認
  • ⑤導入期間の全社周知(システムの利用に関する従業員向け研修)
  • ⑥システム導入~システムの実際の稼働

2.テレワーク環境の選択

(1)利用端末の確認

端末には主にPCやタブレット端末、スマートフォンなどがあります。特にPCについては、以下のように種類によって機能やセキュリティの内容が異なります。

①リッチクライアント(ファットクライアント)型PC

内蔵しているハードディスク内に情報を保存することができる端末のこと。書類の作成を行うアプリケーション(機能)の操作も、この端末単体で行うことができます。オフィスに設置されたデスクトップPCの多くは、このリッチクライアントです。

②シンクライアント型PC

ほとんどの機能がサーバで処理され、入出力程度の機能しか持たない端末のこと。書類の作成も保存もサーバ上で処理されるので、データが端末内に保持されません。したがって、端末が盗難・紛失した場合でもデータが端末内に存在しないので、データ漏えいが起きません。そのため、従業員に対しテレワーク用に貸与する端末として有効です。

③タブレット型PC・スマートフォン

移動制限が解除された際には、営業職等がモバイルワークとして、移動中にEメール対応や決裁業務などの簡単な業務をするために導入することもあるでしょう。業務に必要なアプリケーションしか使えないような機能制限をすることで、セキュリティが確保できます。

(2)ネットワーク

ネットワーク回線は、企業、自宅、モバイルデバイスをインターネット接続するためのものと、企業内にあるPC同士、PCとサーバ、PCからインターネットへの出口までをつなぐ企業内ネットワークがあります。インターネット回線の種類には、主に、Wi-Fi、光ファイバー、CATV、携帯電話網などがあります。近年ではインターネット回線上に組織内の専用線を仮想的につくるVPN(Virtual Private Network:仮想閉域網)の利用が増えています。利用している回線がセキュリティの対策状況や、回線利用時に通信量や速度などの制限はあるのか、新しいシステムを導入した際に、回線にかかるコストが増えるのかなど、現状の回線が今後導入するシステムに利用できる回線かを確認します。

(3)サーバ

端末から指示された内容に対して情報を提供したり処理結果を返したりする役割を持つコンピュータやソフトウェアのことで、社内でファイルの共有などをすることが可能です。サーバや従業員の利用する端末は、回線でつながっているため、既存の環境を確認する際や、ICT環境をつくっていく際には、端末や回線、サーバを一緒に確認しておくことが重要です。

3.テレワーク環境におけるシステム方式の選択

ICT 環境に向けて、作業環境を構築するシステム方式を選定する際には、利用する対象者の範囲やその業務内容、テレワークの形態などの考慮が必要です。テレワーク環境におけるシステム方式は、主に以下の4つの方式があります(図表)。それぞれシステムや特徴、導入にかかるコストが異なります。

テレワーク環境におけるシステム方式(まとめ)

4.コミュニケーションツール

テレワークを利用する従業員と職場で働く従業員とをつなぐコミュニケーションツールは、上司が労務管理をしたり、職場との業務連携を図ったりする上で重要です。導入時点ではまず、現在使っているツールの継続利用を前提とします。これは使い慣れたツールを使ってテレワーク実施のハードルを下げることと、コストをかけずに必要最低限のコミュニケーションツールを導入するためです。テレワークでよく利用されている会議システム、Eメール・チャット(インスタントメッセンジャー)、及び情報共有ツールについて、使い方や特徴を以下に紹介します。

①会議システム

会議システムは、遠隔地にいる複数の従業員や顧客が電話やTV 会議システム、Web会議システムを通して会議することができるシステムです。特に、TV会議システムや Web 会議システムは会話の相手や商品の実物を確認しながら進めるべき打合せなどの際に有効なツールです。また、カメラを通じて対面でのリアルタイムな会話ができるため、常時接続する場合には、テレワーク中の従業員の在席管理ツールの代わりとして利用することもで きます。

②Eメール・チャット(インスタントメッセンジャー)

従来から利用されている Eメールに加えて、簡単な声掛けやリアルタイムに単文的な会話のやり取りをする場合は、チャットツールを利用すると便利です。

③情報共有ツール

従業員の保有する情報を場所にとらわれず従業員間でやり取りするために利用するツールのこと。ここでは、データ共有ツールとグループウェアを紹介します。

1)データ共有ツール

資料の電子データや業務で利用する音声、写真、映像情報などを従業員間で共有するた めに利用するツールです。電子的な情報共有によって、場所にとらわれない共同作業が容 易にできるようになります。また、業務進捗の「見える化」や成果の提出、顧客から得た情報や従業員個人のノウハウ・知識の共有にもつながります。

2)グループウェア

Eメールや電子掲示板、ドキュメントの共有、スケジュールやワークフロー管理など、組織内の情報共有のために必要な機能が1つに統合されたシステムです。サービスによっては、コミュニケーション機能、労務管理機能も備えています。近年ではオンラインで提供されるグループウェアが多く登場しています。その場合ホストサーバ以外の専用ソフトウェアを必要としないため、初期導入コストを抑えることができます。

次回は、これまで述べてきたICT環境の整備と切っても切り離せないセキュリティ対策に関して述べていきたいと思います。

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  • 著者プロフィール
小山貴子

小山貴子

一般社団法人日本テレワーク協会 相談員

1970年生まれ。12年間のリクルート社勤務後、ベンチャー企業の人事、社労士事務所勤務を経て、2012年社会保険労務士事務所フォーアンド設立。ただいま、テレワーク協会の相談員と共に、人事コンサル会社の代表取締役、東証一部上場企業の非常勤監査役、一般社団法人Work Design Labのパートナー、東京都中小企業振興公社の専門相談員等にも携わる。2年半ほど横浜と大分の2拠点生活を実施中。