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3.テレワークの導入手順

著者:一般社団法人日本テレワーク協会 相談員  小山 貴子

3.テレワークの導入手順

テレワークの全体像をつかむ

コロナ禍で「急ぎテレワークを導入しなければならない」という状況になっている方も多くいらっしゃると思います。前回「本来、テレワークは、実施目的を明確にし、経営判断を経て推進体制をつくり、業務の洗い出しと見える化を行い、導入範囲や導入方法、社内ルールの整備やシステム構築、研修などの導入の準備を進め、試行導入から始めていただくものです」と申しましたが、急ぎ対応した後の少し落ち着いたこのタイミングで本来の流れを鑑み、振り返りをしていただくといいのではないかと思っています。

導入の大まかなプロセスは、図表1のとおりとなります。それぞれのプロセスについて今回以降詳しく解説をしていきます。まず、今回は「テレワークの全体像をつかむ」「全社方針を決定する」に関してお話をしていきます。

図表1:テレワーク導入の大まかなプロセス

「テレワークの全体像をつかむ」ためにはテレワーク導入のイメージをつかむことが重要です。推進体制をつくる際に、特に「人事・労務」の観点、「ICT」の観点、そして、「実施」の観点の3つを意識する必要があります。

  • 人事・労務:テレワーク実施者がテレワークを通じてでも適切な労働環境で働けるようにルールを整備する
  • ICT:テレワーク実施者が勤務場所を離れても、より安全で快適なシステム環境で働けるようにICTのシステムやツールを選択、導入する
  • 実施:テレワークを実施する上で用意すべき体制や理解を得る方法、導入だけでなくその後普及させていくためにも必要な考え方を理解する

関連する部署が推進の意義を理解する

上記3つの観点は部署ごとに分担することもあるかと思いますが、テレワークは全社的な取り組みでもあり、経営企画部門、人事・総務部門、情報システム部門など、社内の各部署が推進の意義を理解し、テレワークが円滑に進むよう一丸となることが重要です。

テレワーク推進に関わる社内制度や施策を担当する部門が中心となり、導入を検討している対象部門の代表者なども加え、セキュリティに関するルール策定など、部門を越えて議論しなければならない内容もあり、全社横断的な体制づくりが求められます。また、その活動を強力に支援し、経営方針とテレワークの実施・積極的な活用を宣言することが経営トップの重要な役割の一つとも言えます。

全社方針を決定する

次に「全社方針を決定する」必要があります。テレワーク導入目的の明確化や実際にテレワークを利用する従業員の理解を得る等、導入・普及・推進のために必要な「土台づくり」と言えるでしょう。

テレワークを導入することでどのような効果を得たいと思われていましたか。実際に実施してその効果は得られましたか。目指す効果は必ずしも一つに絞り込む必要はありません。ただ、テレワークの導入そのものが目的化しないように導入段階において目的意識の共有を行うことが重要です。図表2、図表3

図表2:テレワークを導入することで目指す効果

図表3:テレワークの導入目的

導入目的を明確にした上で、導入に当たっての基本方針(テレワーク・ポリシー)を策定します。具体的には、テレワークの導入目的、実施部門、対象者、対象業務などを盛り込みます。労使で十分に協議を行い、導入について全社で認識を共有することが重要です。

基本方針の策定後は、社内の合意形成をするために、以下の流れで進めていくことをお勧めします。

  • テレワークの導入は、経営層のトップダウンでスタートするのが理想的。
  • 上記1でない場合は、おおむね「推進担当者による起案」→「経営層への説明・承認」→「関係者への説明・承認」というプロセスが必要。
  • 起案の際には、導入目的や対象業務、対象者や効果測定などのポイントを示す。トライアル(試行導入)を行う場合は、期間なども示す。
  • 経営層への説明の際は、テレワークが多様な経営課題の解決に役立つことを説明する。社内で普及が進むよう、導入に当たって経営層に期待される役割についても丁寧に説明する。
  • 経営層は、テレワーク導入の意義を十分に理解し、自ら率先して、テレワークの目的や効果について社内に情報発信を行うことにより、従業員の意識改革を進めることが重要。
  • テレワークの導入に当たって、労使で認識に齟齬のないようにする。あらかじめ、導入目的や対象業務、対象者の範囲、テレワークの実施方法などについて、労使委員会など十分に協議した上で、これを文書として保存するなどの手続きを経ることが望ましい。
  • 労働組合がある場合は労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者と合意する。
  • 社内のセミナーなどを活用した情報発信やワークショップの開催による普及啓蒙活動を積極的に行う。

経営層や推進担当者からの情報発信に加え、従業員からの質問や意見を広く募集し、そのフォローアップを行うことも大切です。これにより、相互にテレワークに対する理解が深まり、効果的に導入が進むことになるでしょう。

次回以降、導入のプロセスに関してそれ以降の詳細をお伝えしていきます。

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著者プロフィール

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小山 貴子

一般社団法人日本テレワーク協会 相談員

1970年生まれ。12年間のリクルート社勤務後、ベンチャー企業の人事、社労士事務所勤務を経て、2012年社会保険労務士事務所フォーアンド設立。ただいま、テレワーク協会の相談員と共に、人事コンサル会社の代表取締役、東証一部上場企業の非常勤監査役、一般社団法人Work Design Labのパートナー、東京都中小企業振興公社の専門相談員等にも携わる。2年半ほど横浜と大分の2拠点生活を実施中。

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