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1.はじめに ―テレワークとは―

著者:一般社団法人日本テレワーク協会 相談員  小山 貴子

1.はじめに ―テレワークとは―

強制的なテレワークの実施

働く環境が一気にかわってしまった2020年。それまでは、日本は他国と比較し、公共交通機関網が発達していることや、人事制度の問題などから、テレワークの普及が遅れていると言われていた。ただ、2020年4月7日に緊急事態宣言が発令されると、人との接触が多い満員電車での通勤解消のため、テレワークが推奨された。

これまでも政府主導で2020オリンピック開幕式の7月24日を「テレワーク・デイ」に制定し、2017年から交通混乱を避けるための予行練習として企業の参加を呼び掛けていたが、なかなか普及しないという課題があった。ただ、今回、コロナ禍においては、準備期間はほとんどなかった企業があったにも関わらず、テレワークに切り替える会社も相次いだ。

これまで実施を検討してきた企業は、就労者の生活の質の向上のため、通勤時間や渋滞に巻き込まれる時間を減らすことができ、仕事の責任と私生活や家族の役割(子どもや高齢の両親の介護など)とのバランスを取りやすくなることができる等を考えてきた。

これに加えて、組織として全体のコスト削減や「働き方改革」を意識した生産性向上等を目的にテレワークの準備をしていた企業も多くみられた。そして、社会へのアプローチとして、渋滞や大気汚染を軽減し、道路上の車の数を減らすことができるため、環境上の理由から採用している企業もある。今回はこれに人の生命維持のため、医療を中心とした社会インフラの安定のために、急ぎテレワークを実施する形となった。

そもそもテレワークとは

そもそも、テレワークとは情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと。「tele = 離れたところ」と「work = 働く」をあわせた造語である。

日本テレワーク協会は、1991年に日本サテライトオフィス協会として設立され、2000年に日本テレワーク協会に名称変更。設立以来、約30年間にわたり、情報通信技術(ICT)を活用した、場所と時間にとらわれない柔軟な働き方である「テレワーク」を、広く社会に普及・啓発することにより、個人に活力とゆとりをもたらし、企業・地域の活性化による調和のとれた日本社会の持続的な発展に寄与することに努めている。

昨今、テレワークとリモートワークは何が違うのかといった質問をいただくことがある。テレワークのテレは、「tele = 離れたところで」という意味で、リモートというのはどこかに中心があって遠隔でという意味合いが強いところが異なる。身近な例としては、テレパシーのテレとリモートコントロール(いわゆるリモコン)のリモートの違い。お互いに離れたところで仕事をするテレワークと、本拠地となる拠点があって、そこに対して遠隔で働くリモートワークは似て非なるものであるといえる。

テレワーク、6つの種類

そもそもテレワークには、働く場所によって、自宅利用型テレワーク、モバイルワーク、施設利用型テレワークの3つに区分され、また就業形態によって、雇用型テレワーク、自営型テレワークの2つに区分され、全部で6つの種類に分けられる。(図表1参照)

図表1:テレワークとは

自宅利用型というのは、今回コロナ禍で多くの方々が体験せざるを得なくなった在宅勤務。モバイルワークというのは、移動中や移動の合間に喫茶店などで行うものを指す。モバイル端末でその日の予定を確認し自宅から作業場所に直行、作業を終えてそのまま帰宅する場合もこれにあたる。施設利用型テレワークとは、サテライトオフィスなどを利用するもの。就業場所と就業形態で分けると、この6通りある。

そして、テレワークは、そもそも就業者、企業、社会の全体にとってプラスの効果をもたらすことも多い(図表2参照)。今回のコロナ禍でのテレワークを経験し、実感された方も多いと思うが、通勤時間が削減され時間の有効活用ができた、テレワークになって家族と過ごす時間が増えた、というだけでなく、睡眠時間が増えたというご意見もいただくことが多い。

図表2.テレワークの効果

また、多様な働き方が受け入れられ、どこに居住している方でも就業ができるので、優秀な人材の確保や、地方創生にも繋がる。実際にテレワークを導入して、就職希望先ランキングがアップしたという企業があったり、大学生に対するアンケートでも、テレワークのできる会社に就職すると考えている人が増えていたり、採用・就職活動に影響を及ぼすひとつの重要なアイテムになりつつある。

一方で急な対応であったために、会社としてのルールが確立されていない段階で実施することになり、暗中模索でテレワークでの業務を開始し、ルールを後追いで確立させていったり、家庭内の環境も整わず、不協和音を奏でてしまったりという例には枚挙に暇がない。

実施に取り組まれている企業にも、これから取り組まれようとしている企業にも、ご参考いただけるような内容をこれから10回にわたりお伝えしてきたいと思っている。

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著者プロフィール

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小山 貴子

一般社団法人日本テレワーク協会 相談員

1970年生まれ。12年間のリクルート社勤務後、ベンチャー企業の人事、社労士事務所勤務を経て、2012年社会保険労務士事務所フォーアンド設立。ただいま、テレワーク協会の相談員と共に、人事コンサル会社の代表取締役、東証一部上場企業の非常勤監査役、一般社団法人Work Design Labのパートナー、東京都中小企業振興公社の専門相談員等にも携わる。2年半ほど横浜と大分の2拠点生活を実施中。

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