[トップインタビュー最終回]

心で共感したビジネスは必ずうまくいく!

2013/1/9

社会起業大学学長 中村大作
インタビュアー:越石一彦、構成:木村俊太
中村大作

社会に貢献しない会社は存在する意味がない

「社会起業大学」は、社会貢献をビジネスとする起業家を育てるビジネススクールだ。社会貢献と聞くと、弱者救済のためのボランティア活動を思い浮かべるかもしれない。しかし、中村大作学長は、「一過性のボランティアでは本当の意味での社会貢献にはならない。ビジネスとして成り立たせることによって継続的に貢献していくことが必要だ」と訴える。バブル崩壊やリーマンショック、さらには東日本大震災などを経験した私たちが進むべき道はどこなのか。中村学長が自らの体験とともに、そのヒントを語る。

ビジネスの原点が自身の生い立ちにあったと気づいた

――前回はMBA経営の限界について語っていただきました。中村学長自身がMBAホルダーで、会社の経営で辛酸をなめたからこそ、逆に「ソーシャルビジネス」の意義に気づき、原点の大切さを痛いほどわかったのかもしれませんね。

「ソーシャルビジネス」が意味する範囲の問題はありますが、そもそも、本来はすべてのビジネスはソーシャルビジネスでなければならないと思っています。社会に貢献しない企業が収益をあげられるはずがありません。

例えば、松下幸之助さんは「主婦を家事労働から解放する」という理念で家電製品を製造・販売していました。これは立派な社会貢献です。社会に貢献するからこそ、ビジネスとしてお金をいただけるのです。

――原点すなわち自分を取り戻すためには、どうすればいいのですか。

学生には、自身の過去を最初に徹底的に掘り下げてもらいます。そのためにやっていることは、自己開示です。それまで身に着けてきたよろいを一つずつはがしていって、自分らしさへの原点回帰をしてもらいます。

これまで自分をごまかして生きてきたのではないか。本当はこれがしたいのに、「食えないから」とか「誰かに言われたから」、「世間からの評判がいいから」といった自分以外の理由で別のことをやってきたのではないか。そして、本当の自分らしさとは何なのかを探させます。これを入学した最初の時期に徹底的にやります。

初めは、かっこつけたり、すかしたり、自分の本性をさらけだすことを拒みますが、一人が話し出すと、みんな涙を流しながら自分の思いを語ります。心の中を徹底的に深掘りして、その事業をやりたいと思うに至った原体験を見つけ出すのです。これが見つかった人は、なにがあってもぶれることはありません。

――中村学長もこの「社会起業大学」を立ち上げるにあたって、ご自身の原体験を見つけ出して、原点回帰されたのだと思います。中村学長の原体験とはどのようなものだったのですか。

私自身、これまでの自分を振り返ってみますと、人が何かをするための「可能性を高める仕事」とか「選択肢を増やす仕事」への強い執着があったように思います。前回お話しした、超格安留学というビジネスも、「お金がなくて留学できない」という人たちに対して留学できる可能性を高めるためにはじめたものでした。

このような執着がどこから来ているのだろうと自ら振り返ったときに気づいたのは、自分の子どもの頃にその原体験がありました。

――子どもの頃と言いますと。

私の原体験を親しい仕事のパートナーや学生以外に話したことはないのですが、今回はあえてお話しさせていただきます。

実は私は、母子家庭で育ち、子どもの頃は非常に貧しい暮らしをしていました。遠足はお金が払えないからわざと休みました。誕生日にプレゼントをもらった記憶もありません。大学生になるまで外食をしたことがないので、アルバイトしたお金で友人たちとファミリーレストランにはじめて行ったとき、注文の仕方がわからなかったほどです。

――それは大変な日々でした。

新聞配達や皿洗いのアルバイトをしながら家計を助けるという生活でしたが、その頃は家計が苦しい生活から抜け出せる可能性がまったく見えませんでした。日々の暮らしで精一杯で、他の選択肢が目に入らなかったのです。

だからこそ、自分の可能性とか生きる選択肢を増やすビジネスに執着があったのです。私の原体験に気づくまで何年もかかりましたが、これを再発見したことで、私自身は迷いがなくなりました。

――貴重なお話をありがとうございます。中村学長からこのお話を伺った学生さんたちは、自身の原点の見つけ方がとても具体的にわかると思います。

自分の原体験に気づくことで、自分自身もこの仕事に心からまい進することができるようになりました。こうした原体験を共有することで、私に協力したいと言ってくれる人も増えたのだと思っています。

――人は共感した人、物事に対しては、とことん協力しますよね。

前回のMBA経営との対比の続きになってしまいますが、MBA型は「頭で考えるビジネス」です。それに対して、私たちがやっているソーシャルビジネスは「心で感じるビジネス」だと思っています。

MBA型ビジネスが競争型だとすれば、ソーシャルビジネスは共存型。戦うのではなく、心でつながったものどうしが助け合い、協力していくビジネスです。MBA型も助け合ったり、協力したりしますが、「金の切れ目が縁の切れ目」とはよく言ったもので、そこにあるのはあくまでもお金の論理です。

それに対して、心で共感した協力関係は、お金とは関係ないところでつながっていますから、本当に苦しいときにこそ協力関係が強まります。

起業をするのに年齢は関係ない

――前々回に伺ったなかにも、「社会貢献は続けなければ意味がない」といったお話がありました。心の底からやりたいことで、さらにその思いがいろいろな人の共感を呼んで、心でつながったビジネスができれば、ずっと続けられますね。

事業を立ち上げるときの気持ちの継続性、そして立ち上がったあとの事業の継続性の両方を支えるものになります。だからこそ、自身の原体験を見つめ直して、徹底的に掘り下げて、それに共感してくれる人たちと共有していくということを一番始めにやるわけです。ここで、きっちりと原体験を見つめることができ、自分のやりたいことがわかると、あとは特別なことをしなくても必ずうまくいきます。

事業を立ち上げるときの気持ちの継続性、そして立ち上がったあとの事業の継続性の両方を支えるものになります。だからこそ、自身の原体験を見つめ直して、徹底的に掘り下げて、それに共感してくれる人たちと共有していくということを一番始めにやるわけです。ここで、きっちりと原体験を見つめることができ、自分のやりたいことがわかると、あとは特別なことをしなくても必ずうまくいきます。

年齢は関係ありません。社会起業大学には、若い人から60代~70代といった年配の方々まで、幅広い年齢層の人が学んでいます。

実際、60歳をこえて起業し、ビジネスを軌道に乗せている人もいます。前々回に紹介した株式会社かい援隊本部などがいい例です。サラリーマンを定年退職して「さあ、これから社会に恩返しをするぞ」と言っている人もいます。

年齢を気にするのは、やらないための言い訳か、本当にやりたいことが見つかっていないかのどちらかだと思います。

――最後に、起業を考えている読者の方々へのメッセージをお願いします。

自分を見つめて、自分らしい生き方を自分自身で発見して、歩んでいってほしいと思います。人は誰しも、その人が生まれもった使命があります。多くの人はその使命に気付かないまま、使命とは違ったことをやり続けて一生を終えていくのです。

使命とは、自分がこの世に生まれてきた意味、もう少し具体的に言えば、自分がこの世の中に対してできる貢献とは何かということです。この使命を見つけ出すには、自分の原体験を見つめて、本当にやりたいことは何なのかを探し出すことです。

自分の使命に気付いた人はけっしてぶれません。とても強いです。もし、あなたが自分自身の使命を見つけることができたとしたら、その使命を発見した瞬間から、あなたは新たな人生を歩み始めることになるでしょう。

ぜひ見つけて、自身のやりたいことで社会に貢献してほしいと思います。

――ありがとうございました。

KOSHIISHI’S NOTE ~インタビュー後記~

今から12年前に、私が証券会社を辞めて起業をするときのことです。

辞める前に、独立して新しい会社を立ち上げたいといろいろな知人や友人に相談しました。同じサラリーマンは反対し、踏みとどまるよう説得する一方、すでに起業している経営者は心から喜んでくれて、力になってくれると言われたことを昨日のことのように覚えています。

あの時、同じ志を持った仲間と同じ環境で学び、お互いにサポートできたらどんなに心強かっただろうと取材のなかで感じました。会社をつくることは誰にでもできますが、それを続けていくことは難しいです。経営者だからこその喜びや楽しみがありますが、同時に経営者にしかわからない迷いや悩みがあります。だからこそ、お互いが切磋琢磨できる仲間や、利害の関係なしにアドバイスしてくれる師がいるということは非常に心強いし、人生の財産になると思います。

起業を志すみんなに、これからも勇気と知恵を授ける学びの場を続けてほしいと願ったインタビューとなりました。

株式会社クライアントサイド・コンサルティング
代表取締役社長 越石 一彦

<完>

インタビュアー:越石一彦、構成:木村俊太

投稿日:2013年1月9日
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