[トップインタビュー 第1回]

「平成世代」の新しい力を引き出せ!

2011/5/27

帝京大学ラグビー部監督 岩出雅之
インタビュアー:越石一彦

若者の力を引き出す組織マネジメント

今年1月、帝京大学ラグビー部は大学選手権で優勝し、2年連続大学日本一という偉業を達成した。対抗戦(大学選手権に挑む前のリーグ総当たり戦)では明治大学、早稲田大学、慶應義塾大学という強豪伝統校に敗れ、4位という成績だったが、大学選手権に入るとその姿をがらりと変え、並みいる強敵を次々と撃破し、頂点へと駆け上がった。その変貌の裏には、岩出雅之監督の知識と経験に裏打ちされた「平成世代」の力を引き出すための組織マネジメントと、その「平成世代」の学生たちが自らを奮い立たせたチーム力の結集があった。その手法は、企業の組織マネジメントにも大いに参考となるに違いない。

目の前の仕事に全力を尽くす

――まずは、大学選手権2連覇、おめでとうございます。

ありがとうございます。

――やはり同じ優勝でも、初優勝と連覇とでは喜びも違いましたか?

優勝ということで言えば同じなのですが、その過程はまったく違いました。どちらも選手を信じて送り出したのですが、1年目のときはとにかく信じることに一生懸命と言いますか、「信じるしかない」という心境だったのに対して、2年目のときは「信じ切る」ことができました。

前年の初優勝という経験のおかげで、ここまで力をつければこういう結果が出るはずだという確信が持てたのは大きかったです。

――監督は大学の准教授として教べんを執られていますが、ずっと先生をされていたのですか?

日本体育大学(ラグビー部主将)に進学し、卒業後は、学校の先生として高校のラグビー部の顧問になって、花園(全国高等学校ラグビーフットボール大会の通称)に行きたいと思っていました。

それで、大学卒業後、滋賀県の教員採用試験を受けて合格しました。ところが、教員採用で先生になれると思ったのに、最初に配属されたのが公園の管理人だったのです(笑)。

――そのようなことがあるのですね!

社会の厳しさを教えていただいたということですね。高校でラグビーを教えられると思っていたら、来る日も来る日も公園の掃除をする毎日です。「なんでこんなことをしているのだろう」とひとりで自問自答していました。でも、このときにくさって地元に帰ってしまえば、その先はないと自分を奮い立たせ、与えられた仕事に精一杯取り組みました。

やがて、学校に配属されたのですが、今度は高校ではなく中学校。そこでも心が折れそうなときが何度もありましたが、辞めてしまったら終わりです。目の前の仕事を無我夢中にこなすうちに、高校ラグビー部の顧問になれました。

――そこでの活躍が認められて、高校の日本代表の監督に抜擢されたのですか?

いいえ、最初は自分から志願して研修生として参加させていただきました。県教育委員会に勤務している時期、高校ラグビー日本代表の合宿があるという話を聞き、近い将来には、高校の指導者を目指していたので、費用をすべて自腹で参加することを条件に自主参加させてもらいました。幸いにこれがきっかけで、高校日本代表チームの指導者として声をかけてもらうのです。

どうやら「自腹で参加するほどやる気のあるやつがいた」という話になったようです。最終的には、監督までやらせていただきました。その後、1996年から帝京大学の監督に就任しています。

「最近の若者」の傾向とは

――最近は、「ゆとり世代」などとやゆされるような、マイペースであまり出世欲も強くない若者が増えていると言われています。平成生まれが新入社員として入社してくる時代となり、経営者や管理職たちのなかでは、若者たちとの接し方が大きな課題となっています。監督は大学生を指導されていて、最近の若い人たちの傾向をどのように捉えていますか?

私たちの世代は、大人よりも子どもが多くて、放ったらかしにされて育ってきました。基本的には、子どもたちだけで遊んで、子どもたちだけで関係を作って、自分のポジションをどこに置くかといったことも遊びのなかで自然に学べるような環境があったと思います。

それに対して、最近の若者は、少子化とか治安の悪化とかもあって、家庭内で育ってきたので、親が関わる度合いがものすごく高くなっています。「昭和」の子どもは親のペースで育ち、「平成」の子どもは子どものペースで育っていると言えます。

大学の講義でも、「昭和」はじっと黙って座って聞いていました。先生のペースというものに慣れているからです。ところが「平成」は、ずっと自分のペースで育てられてきているので、先生のペースで授業が進むのに耐えられない子が多いようです。私語も多い。でも、悪気があるわけではないのです。それが普通という環境で育ってきただけです。

――若い世代は仕事に対するモチベーションの低い人が多いという話をよく聞きます。

それは「飢えていない」からです。小さい頃から欲しいものはなんでも与えられて、しかも自分で主張しなくても、顔色とか態度のちょっとした変化を親が察知して、「おなか、すいたの?」とか「気分でも悪いの?」と言われて、全部をやってもらえる環境にいたのです。ハングリーになりようがないです。

それと、リーダーシップを取れる子どもが減っていると思います。私たち「昭和」は基本的に放ったらかしですから、子どもだけで何かをしなければなりません。「何をして遊ぼうか」となったときに、「あれをしよう」「これをしよう」と主張し、意見がまとまらないときには、「じゃあ、こうしよう」と決めるガキ大将というまとめ役が自然発生で生まれるなど、遊びのなかで他人との関係性を学べる時代でした。

でも、「平成」は親、特に母親と自分という1対1の関係が強いなかで育っていますから、親との関係だけを気にしていれば、すべてがうまくいくわけです。

――そのような意味では、ラグビー部という環境は、親との1対1からはじめて離れて、他人との関係性を学べる「疑似社会」でもありますね。

まさにそのとおりです。それまで体験したことのない、血縁ではない他人との共存を学べる環境があると思います。

一方、「平成」にもよいところがあって、例えば、たくさんの知識があるので、いい意味で早熟です。また、意外に純粋なので、うまく指導してあげれば努力家になったり、前向きな部分を発揮したりするのです。このような彼らのいいところを中心に据えてあげて、それに足りない経験を加えてあげれば、彼らの新しい力を引き出すことができると思っています。

うちのチーム・スローガンのひとつに「チームワーク」があるのですが、これはお互いにシナジー効果を生み出すための混ざり合うという意味です。他人との関わり合いを学ぶことで、自分自身をより成長させることができ、それがまた組織の進化につながるということを求めているのです。

今回は、岩出監督が大学で指導者になるまでの経歴と、いわゆる「平成ゆとり世代」の特徴について伺いました。次回は、そうした「平成ゆとり世代」の力を引き出すための具体的な手法について伺います

投稿日:2011年5月27日
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