[社長インタビュー第3回]

農家が誇りを取り戻すために

2011/3/25

オイシックス株式会社
代表取締役社長 高島宏平
インタビュアー:越石一彦
前回は、TPPなど国際的な貿易自由化の波の中で日本の農業はどうあるべきかなどについて伺いました。今回は、農家の自立のためにオイシックスが取り組んでいること、さらには高島社長の経営観などについて伺います。

これまで日の目を見なかった農作物に注目

――とてもいいものなのに、これまで商品として認められなかった作物を商品として見直す手助けをしているわけですね。

最近「地産地消」などとよく言われます。その地域で採れた作物をその地域で消費しましょうということですが、私はこの言葉に疑問を感じています。先ほどの道の駅の産直コーナーのようなものばかりでは、本気の農家は生活できません。「地産都消」になる必要があるのです。

「地産地消」というのはどうやらアメリカから来た概念らしく、例えば「カリフォルニア州の農産物はカリフォルニア州で消費しましょう」というような話です。これをそのまま日本に当てはめると、日本列島がすっぽり全部入ってしまうわけです。ですから、「地産地消」というのは「国産農作物を食べよう」というくらいの話だと思っていいでしょう。

そういう発想から、「地方のいい作物を都会デビューさせよう」という取り組みを行っています。

――具体的にはどのようなことをされているのですか?

都会デビューに限らずですが、前回で申しあげた、プライシングの自由を取り戻すための3要素「付加価値、および伝達」「ブランディング」「生産者のモチベーション向上」を実現するために、いくつかの具体的な施策を行っています。

例えば、「Web物産展(うぇぶっさんてん)」という、ネット上での地域物産展を開催しています。各県がこだわりの商品を全国に向けてインターネット上で発信し、新たな販路開拓に取り組むためのお手伝いをしています。

また、時代の波に淘汰されてしまった野菜や、地元では愛されつつも全国には広まらなかった野菜などを発掘して、もう一度、スポットを当てようという活動をしています。この野菜はリバイバル・ベジタブル、略して「リバベジ」と呼んでいます。ある農家が自家用に少量栽培されていたかぶを「ピーチかぶ」と銘打って売り出したところ、大ヒットしたことがありました。これなど、都会デビューのいい例ですね。

――価格の部分での努力もされていますよね。

前にも述べたように、現在の流通システムでは形がいいこと、重いことが商品価値を決めています。ですが、安全、安心、おいしいという基準からすれば、形がいいとか重いというものさしはあまり重要ではありません。

食べられないほど傷んでいるのではダメですが、表面だけちょっと傷がついているだけとか、大きく曲がってしまっている野菜などは、食べる上では何の問題もありません。ところが、通常の流通では規格外として弾かれてしまうのです。そこで、「ふぞろいの野菜」と呼ぶ規格外の野菜を通常の約30%オフの割安価格で販売しています。

また、本来はおいしく食べることができるのに、流通の都合などで捨てられてしまう食品を「もったいない」コーナーとして割安で販売しています。もちろん、安心、安全、おいしいという基準を満たしたものです。

カリスマ農家はみんな「ロジカル」

――農家のモチベーションアップという点ではどのような取り組みをされているのですか?

特にすばらしい農作物を育てている「カリスマ農家」と呼ばれる方々がおられるのですが、その「カリスマ農家」からもっともおいしい野菜と農家の方を表彰する「農家・オブザイヤー」というイベントがあります。

経営や農業技術などの観点からではなく、消費者のみなさんの「おいしい」という声を評価基準として決めています。年間消費者の声とウェブ上での消費者の投票によって受賞者が決まります。

「農家・オブザイヤー」「若手農家部門」「リバベジ部門」「トマト部門」「フルーツ部門」などの部門があり、受賞された農家の方は特別販売ページで販売できます。

――農家が誇りを取り戻すことができる施策ですね。そういったカリスマ農家の方となる条件とか、共通点のようなものはありますか。

条件というのはないと思いますが、結果的に人気の高い農家の方はみな研究熱心です。「野菜作りは土づくり」などと言われますが、本当に「土おたく」みたいな農家の方がたくさんいます。

それと、みなさんは非常にロジカルですね。「何でこんなにおいしくできたのですか?」と尋ねると、しっかりと説明してくれます。「こういう理由でこうしたらきっとおいしくなるだろうと思ったので、やってみたらやっぱりおいしくなった」と。「なんだかわからないけど、こうやったらたまたまおいしくなった」という人はいません。

それと、お客様の声に敏感ですね。謙虚に聞くという意味ではないです(笑)。「クレームが悔しいから改良したよ」と。「クレームなんて一件も言わせない」というこだわりがあります。

いいことをするともうかるという仕組みを作りたい


――高島社長の経営理念はどのようなものなのですか?

オイシックスに関して言えば「一般のご家庭での豊かな食生活の実現」を目指しています。経営全般に関して言いますと、「世の中にいいことをすると会社がもうかる」という仕組みを作りたいと考えています。
人の善意を信じているのですが、例えばボランティアのようなものですと、経営が苦しくなった途端にやめてしまうということがありえます。そうではなくて、世の中にいいことをすると会社がもうかる、いいことをしたから大きな会社になったという仕組みができれば、世の中全体がよくなるのではないかと思っています。

――最後に読者へのメッセージをお願いします。

経営とは戦いだと実感されておられる方も多いことでしょう。私自身もそんなふうに思うこともしばしばです。戦いにはまず健康な体づくりが不可欠です。「腹が減っては戦はできぬ」ではありませんが、戦いやその基礎となる健康な体づくりは、安心、安全な食生活から始まるのだと思います。日々戦っているビジネスマンの方々の健康な食生活を支えられるような企業になるべく、さまざまなチャレンジをしていきたいと思っています。

KOSHIISHI’S NOTE ~インタビュー後記~

頑張っている人に光をあてる仕事

高島社長と話をしていくうちに、「単なるネットスーパーの領域をはるかにこえている」と感じました。

一生懸命、愚直なまでに野菜作りにこだわっている生産者はたくさんいます。しかし、真面目に誠実に取り組んでいても、売り方が分からなかったり、その良さを広くたくさんの方々に知ってもらう手立てを知らなかったりする生産者はたくさんいると思います。

そのがんばっている人に光を当てたところが、高島社長の成功の1つではないでしょうか。

毎日の献立を家族の為に考えているお母さんや奥さまたちのその努力に報いるような、安全・安心の食材とレシピまで提供し、家庭で戦っている方々へも光をあて、充実した毎日を送る為に必要な家族の大切な「食」を応援できることはすばらしいです。美味しくて安全な食材を家庭に届けるという役割は本当に奥深い事業なのです。

これから、食コミュニケーションを追究し続け、たくさんの人に光を当てることのできる会社であると、高島社長とのインタビューを通して実感しました。努力している人へ光を当てる仕事が、これからビジネスを立ち上げようとしている人々の成功の一つのキーワードになるのではないでしょうか。

 

株式会社クライアントサイド・コンサルティング
代表取締役社長 越石 一彦

投稿日:2011年3月25日
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