[社長インタビュー第1回]

幸せな社員が増えると業績が上がる!

2012/7/11

株式会社シマーズ
代表取締役 島津清彦
インタビュアー:越石一彦、構成:木村俊太

幸福度が社員のパフォーマンスを高める

島津清彦社長は、大手不動産会社の代表取締役社長などを歴任し、今年の4月に株式会社シマーズを立ち上げた。彼には、会社を成功させるひとつの持論がある。それは、「組織の幸福度と業績は正比例する」ということ。社長退任時に、一人一人のメッセージが書かれたオリジナルの本をプレゼントされるほど慕われ、社員との絆を大切してきた島津社長だが、人事を長く担当した経験から、「幸福だと感じている社員が多いとその会社は伸びる」ということを肌で感じたという。今回は、組織の活性化と業績アップとの関係を新たな視点から考察し、徹底した現場主義によって成功に導くその経営手腕に迫る。

常に学びがあり、気づきがある組織

島津清彦氏のプロフィール

――25年間勤めた大手不動産会社をこの3月でお辞めになり、エグゼクティブコーチとして独立されると同時に、人材開発・組織開発のコンサルティング会社、株式会社シマーズを立ち上げられました。これまで人事部長として組織づくりにも着手されましたし、グループ会社の社長として組織改革を成功させるなど、組織づくりのエキスパートでいらっしゃいますが、島津社長が考える理想の組織とはどのようなものですか?

言葉にするとやや抽象的な印象になりますが、私が考える理想の組織とは「幸せな組織」です。つまり働く社員の幸福度が高い組織ということです。

最近、近年の経済成長が必ずしも国民の幸福につながっていないとの認識から、GDPではなくGNH(Gross National Happiness=国民総幸福)を国家目標に掲げるブータンのように、世界各国で幸福度指標の作成が進められています。日本でも、平成22年度に閣議決定された「新成長戦略」に幸福度指標を作成する旨が盛り込まれています。

社員の幸福度と企業の業績との関係については、ハーバード・ビジネススクールでも注目されていて、相関関係があるという研究結果がいくつも発表されています。

――「幸せな組織」が業績を伸ばすということが注目されつつあるのですね。「幸せな組織」というのは、具体的にはどのような組織をイメージすればよいのですか?

一般的には、社員一人ひとりが、自分は会社(もしくは社会)の役に立っており、自分自身の成長にもつながっているという実感を持っていて、それを喜びや誇りとして取り組める組織を指すでしょう。

しかし、「何を幸せと感じるか」は人によってそれぞれで異なるように、「幸福度」という指標も会社それぞれです。なので、広く社員を巻き込んで「幸せな組織とは?」という議論を尽くす必要があります。

私自身が目指す組織は、わかりやすく言うと、常に学びがあり、気づきがある組織です。働くことを通して、人として成長できる組織のことです。自分が成長できたら、楽しいし、ワクワクします。そのような組織で働けば、時間も忘れて仕事に熱中します。これを「フロー状態」と言いますが、このような状態が続けば業績が上がらないはずがありません。

密なコミュニケーションが重要

社員が製作した島津社長へのメッセージ本
社員が製作した島津社長へのメッセージ本

――なるほど、まずは組織の幸せについて社内でとことん議論するのが大事ということですね。

その通りです。幸せな組織づくりのために最初にやることは、指標をつくることではありません。議論を尽くし、社員同士がしっかりとお互いを理解しあう組織をつくることです。そのためにはまず、経営者自身が、社員一人ひとりと密なコミュニケーションを取らなければなりません。しかし経営者自身が自分で目配せできる時間や範囲は限られていますので、幸せの組織マネジメントが必要になります。特に上司と部下とのコミュニケーションは重要です。

――初めて管理職を任されたりすると、組織マネジメントを難しいと感じてしまう人もいるようです。

下からのコミュニケーションを待っているのではなくて上司や先輩の方から部下や後輩の方へ降りていかなければなりませんが、それも密なコミュニケーションによって解決できます。

学生時代に部活動に励んだ経験がある方はご存じだと思いますが、夏休みなどの泊り込み合宿で多くの時間をともにすると、先輩とか後輩とか関係なく、いきなり仲がよくなったりします。あれは長時間いっしょにいるとどうしてもコミュニケーションを取らねばならず、そのコミュニケーション量や会話量がチームを一丸にするという組織で成果をだす手法のひとつなのです。

いきなり合宿をしろとは言いませんが、社員や部下と接する時間を増やすことは確実に効果がでますし、成果を出す基礎となります。

台風に陣中見舞い

――ご自身の体験のなかでの成功例はありますか?

ビル管理の会社の社長をしていたときの話をします。

このビル管理会社はM&Aによってグループの仲間入りをした会社で、そこに本社から私が副社長(後に社長)として赴任することになりました。ちょうど赴任した日が社員総会だったので、パワーポイントで資料をしっかり作成して、当日も気合い十分に会社の方針を話したのですが、社員の反応は「しーん」と静まり返った状態でした。

これまでは20~30代が中心の若手が多い組織で働いていましたが、新しく赴任したビル管理会社はひとまわりも平均年齢が高い会社でした。なので、最初から私が気合を入れすぎたのだろうと考え、みんなの興味のある話をしようと工夫しましたが、なかなか手応えをつかめずにいました。

――何が良くなかったのですか?

最初は私が目上の方との付き合い方を理解できていなかったことが原因かと思いましたが、やがて本当の原因は、私自身が「現場を知らない」ということに気がつきました。

――新任の経営者だから仕様がないではありませんか?

いいえ、そんなことはないです。現場を知らない経営者が何を言っても、社員は腹の底から理解してくれません。現場を知らないということは、社員自身を知らないと同義だからです。

自分をよく知らない人から指示されたらどのように感じますか?決していい気分にはならないと思います。知らない人に褒められてやる気が起きますか?何も感じず、逆にこびた態度を疑ってしまいます。

実は、社員の幸福度を上げる第一歩は、経営者が社員をよく知ること、上司が部下をよく知ることです。そういう段階を一歩一歩踏むことが、お互いを信頼しあうことにつながります。

――島津社長は何をなさったのですか?

とにかく現場に足を運び、業務内容や職場環境、社員の心を観察することから始めました。

今でも印象深い出来事は、さまざまな災害対応でした。大型の台風が関東にも上陸するという事態がたびたびありました。ビル管理の会社として台風被害に備えて対策本部を立ち上げ、現場の各ビルでは、管理室に社員が泊まり込みで待機するということになりました。緊急の事態に備えて、すぐに対処できるようにするためです。

対策本部長は私でしたので、私も待機することになりました。通常、社長が待機するといっても対策本部の置かれている本社にいて指示をするのが普通でしょう。

――そういう社長のほうが多いかもしれません。

ですが、私にとっても大型台風の上陸は初めての経験でしたので、現場の管理している物件がどのような状態になるのかを知らないと、この先指示も出せないと考えました。待機を役員に任せ、暴風雨のなか、各現場を回ることにしたのです。徹夜で現場待機している社員たちに声を掛けて回りました。私としては現場を知りたい、あとはとにかく社員と同じ目線に立とうと思ったのです。このことが後日社員の間で話題になったと、ずいぶん後になってから聞きました。

――それから台風のとき以外でも、現場回りを欠かさなかったのですね。

とにかく時間が空けば現場を訪問しました。いろいろな現場を回ってみると、本当にいろいろな事情がたくさんあり、社員の顔と名前を覚えながらも、様々な現場の課題を丹念に拾って歩きました。

最初の頃は「社長が現場に行く」とあらかじめ伝えると、その場の社員が全員並んでお出迎え(笑)という状態になってしまいます。準備して構えてしまうのです。なので、現場に何も伝えず突然訪問するということを何度もやりました。

このような「観察」を続けていくと、本当にリアルな現場の声や状態が、やがて直感的に理解することができるようになり、会社や組織の改善点がはっきりと見えてきたのです…。

次回は、幸せな組織論の第二弾として、人材採用の基準や若手社員とのコミュニケーションの取り方について語っていただきます。

<第2回:いまの若者は我々よりも進化している!>

インタビュアー:越石一彦、構成:木村俊太

投稿日:2012年7月11日
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