[社長インタビュー第1回]

ヨーロッパの総合型スポーツクラブを目指せ!

2011/12/14

株式会社湘南ベルマーレ 代表取締役 眞壁潔
インタビュアー:越石一彦、構成:木村俊太

地域密着の「総合型スポーツクラブ」

湘南ベルマーレと言えば、あの中田英寿選手も所属していたJリーグのチームだ。だが、もう一つの顔がある。NPO法人湘南ベルマーレスポーツクラブとして、サッカーをはじめとしたさまざまなスポーツの振興、普及、育成活動を行っているのだ。現在は、企業スポーツから脱却し、高い理想とすばらしい理念に基づいて運営されているスポーツクラブだが、以前は長引く不況で親会社が撤退し、存続が危ぶまれたクラブであった。「勝ち負けだけではない価値を地域の方々に提供したい」と語る眞壁潔社長。Jリーグで数少ない、親会社をもたない湘南ベルマーレが挑む「市民球団」の経営手法に迫る。

強豪チームが突然、存続の危機に

――湘南ベルマーレはJリーグのなかで数少ない、親会社を持たない「市民クラブ」として活躍されています。また、地域密着の「総合型スポーツクラブ」として地域の人々、特に子どもたちのスポーツ活動などを支えています。まずは、こうした「市民クラブ」「総合型スポーツクラブ」へと変貌していった経緯についてお話いただけますか?

それでは、湘南ベルマーレの歴史から話します。湘南ベルマーレは1968年に創部された藤和不動産サッカー部から始まりました。ヨーロッパ型のサッカークラブを目指して、芝生のグラウンドを作るなど、当時としては斬新な取り組みを数多く取り入れました。

藤和不動産は当時フジタ工業の子会社で、その後、フジタグループ全体で支援しようということになり、フジタ工業サッカー部となりました。1993年、Jリーグ入りを目指してJリーグ準会員となり、チーム名を「湘南ベルマーレ」と改称。この年、JFL1部で優勝して、翌年のJリーグ入りを決めました。

当時、Jリーグはチーム名には都市名を使う規則だったため、「湘南」の呼称が使用できず、「ベルマーレ平塚」と改称してJリーグに参戦することになりました。

――そして、いきなり天皇杯優勝、翌年のアジアカップでも優勝と、輝かしい成績を残しました。

前期のサントリーシリーズでは名良橋晃、岩本輝雄の2人のサイドバックが同時に上がって攻撃参加していくような特徴のあるサッカーで「湘南の暴れん坊」と言われました。ただ、そうなると守りが2人。案の定、大量失点での敗戦が続き、12チーム中11位でした。

でも、若いチームということもあり、素直で吸収力も高かったので、ディフェンスを徹底的に強化したところ、すぐに機能し始めました。それで後期のニコスシリーズでは前期は全く歯が立たなかったヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)とわずかな差で2位。そして、天皇杯では優勝しました。

翌年には中田英寿が入団。1998年のフランスワールドカップでは日本代表に中田英寿、小島伸幸、呂比須ワグナー、韓国代表に洪明甫が選ばれました。1つのクラブから4人の代表選手が選ばれるというのは、世界のクラブでもなかなかないことだと思います。

――しかし長引く不況で、1999年にはフジタが突如撤退を表明しました。これによって、強豪チームが一転、存続の危機に見舞われることになりました。

前年に、横浜フリューゲルスのチーム消滅問題がありましたから、ここでベルマーレが消滅してしまったら、「やっぱりJリーグはダメだ」ということになってしまいます。クラブとしても、Jリーグとしても必死でクラブを存続させようとしました。

私としては、とにかく故郷の平塚をこれだけ盛り上げてくれたベルマーレをなんとか残したいという思いがありました。平塚出身の衆議院議員の河野太郎さんが会長として就任したので、彼に頼まれて、私も参加することとなりました。

ヨーロッパ型スポーツクラブを目指す

――サッカーチームは存続しましたが、総合型スポーツクラブへと変わっていくのにはどのような経緯があったのですか?

もともと経営が厳しかったので、どれだけたくさんの人を仲間にできるかというところがポイントになると思っていました。なので、「Jリーグ百年構想」をもう一度読み直してみたのです。そして、そこにはこのように書いてありました。

・あなたの町に、緑の芝生におおわれた広場やスポーツ施設をつくること。
・サッカーに限らず、あなたがやりたい競技を楽しめるスポーツクラブをつくること。
・「観る」「する」「参加する」。スポーツを通して世代を超えた触れ合いの場を広げること。

よく読んでみますと、サッカーのことだけではないのです。また、2番目の項目は、ヨーロッパ型のスポーツクラブを連想させました。いろいろなスポーツを多角的に運営し、それを教えていくことで、子どもや親という仲間をたくさん集めることができそうだと考えたのです。

――ヨーロッパ型のスポーツクラブというのは、かんたんに言うとどのようなことですか?

プロリーグなどで活躍するトップチームがあって、その下に育成チームがあり、それを支える地域の人が気軽に参加できるスポーツ施設やクラブチームがあるというイメージです。いろいろなスポーツ種目が集まっているので、好きな競技を楽しめます。

――高齢化による医療費の拡大は日本の大きな問題の一つですが、ヨーロッパでは、スポーツ振興によって医療費を軽減できるという考え方があって、行政も積極的だそうですね。

確かに、成熟した社会で医療費とスポーツ振興費を比較すると、国民の健康のためにはスポーツ振興に投資したほうが効果が高いというデータがあり、日本でもその考え方に傾倒していく可能性はあります。しかし、実際のところは、企業スポーツという形が限界を見せ始めてしまったわけですから、残るは「市民クラブ」「地域のためのスポーツクラブ」にしていくしかありませんでした。地元の方々に「なんとかベルマーレの存続にお力をお貸しください」とお願いして、「市民クラブ」にならざるをえなかったのです。

そのようなとき、ビーチバレーを指導されていたバレーボール元日本代表の川合俊一さんから、ビーチバレーチームのお話をいただくのです。(続きは第2回へ)

インタビュアー:越石一彦、構成:木村俊太

投稿日:2011年12月14日
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