[社長インタビュー第2回]

円高、経済危機、大震災。観光立国への戦略が必要だ!

2011/11/9

日本スターウッド・ホテル株式会社
日本・韓国・グアム地区統括社長
ロタ・リチャード・ペール
インタビュアー:越石一彦、構成:木村俊太

前回は、スターウッド ホテル&リゾートが展開するホテルブランドの詳細について伺いました。今回は、グローバル企業の観点から、観光立国を目指す日本可能性や抱える課題とその克服法などについて伺います。

日本が観光立国となるために

――日本はこれから「観光立国」としての歩みを始めようと、平成19年から「観光立国推進基本法」が施行されました。「観光立国」に進もうとする矢先に、今回の大震災が起こり、いまだに原発事故は終息していません。経済と為替の安定、戦争や疾病がないことが観光立国の必要な最低条件ですが、世界は不況で、為替も記録的な円高、それに加えて放射能汚染の問題が深刻な影響を与えています。今後、日本が観光立国として成り立つためには、どのようなことを考えて、実行していかなければならないとお考えですか?

観光事業というのはとても興味深いビジネスです。旅行一つを見ても、飛行機や地域の交通手段、宿泊、サービスなどが連動して一緒に動いています。日本は昨年国全体でおよそ860万人※のお客さまをお迎えしているという数字を出していますが、シンガポールは1,160万人もの観光客が訪れています。もちろん、円高の影響はないとは言いませんが、日本は国全体で860万人、かたやシンガポールは国とはいえ事実上1都市1空港で1,160万人です。

※ 出典:日本政府観光局

私は、例えば京都に紅葉を見に行く、青森に桜を見に行く、北海道に夕張メロンを食べに行くといったようにピンポイントで観光客を追いかけるのではなく、日本という国を一つの観光スポットとして盛り上げていく必要があるのではないかと思っています。

「ビジット・ジャパン(国土交通省を中心とした外国人旅行者の訪日促進活動)」というキャンペーンのもとで観光立国に向けて動いてはいますが、「ビジット・ジャパン」とは果たしてどのような意味なのでしょうか?各都市が単体で観光客を誘致することなのでしょうか?それは、国として共通のビジョンをもって、一つのミッションをもって、日本を一つの観光地とするために盛り上げていくことではないでしょうか?

――なるほど。たしかに各地域がバラバラに誘致活動をしていて、国としての戦略がまったく見えません。

私は以前、バリ島で働いていたことがあるのですが、あの小さな島に1年間に700万人もの外国人観光客が訪れています。成功すればそういうことができるのです。

日本には人気のある観光地がいくつもあります。それぞれの場所でいろいろな催しがあります。しかし、ある旅行会社は旭山動物園ツアーを企画し、他方の旅行会社は宮古島ツアーを企画して、お互いに観光客の取り合いをしている状況が多々あるのです。同じ日本で観光地同士がお客さまを取り合うのではなく、一つの観光事業として大きな視野でとらえる必要があると思います。

「北海道に来てください」「いや、沖縄がいいよ」と競い合っている場合ではありません。競争相手は世界です。私には日本がアクセルをいっぱいに踏みこみながらフルブレーキをかけている車のように見えます。全体が正しくコントロールされていません。これでは車は動かないでしょう。

――その通りです。日本にはすばらしい四季があり、その時期によって見所が変わりますから、それぞれが正しく分担すればよいと思います。

そうです。ただし、この四季も慎重に扱わないとマイナスになりかねません。日本は観光客に波がありすぎます。春は桜、夏は海、秋は紅葉、冬は温泉と、四季ごとに決まりきった場所しか注目しないからです。ある期間だけある場所が盛り上がるのでなく、いつでも平均的に楽しめるようにしなければ観光客は全体で増えないと思います。

日本人の休暇を考えると、連休を取れる期間が限られているため、どうしても集中してしまうのは理解できます。でも観光事業とはそういうことではなく、どの時期に休みが取れても楽しめるよう企画するべきですし、世界を相手にした場合は、これまでの固定概念を取り払って考えなければなりません。

また、何かイベントがあるとその周辺は必ず混雑します。混雑はサービスの低下につながります。場合によっては、大手の旅行会社などが宿をすべて押さえてしまって、まったく宿泊できないという状況があります。

こうなると、海外からは「日本はいつも混んでいて、サービスの質が低い」と受け取られてしまいます。ある期間だけ観光客を呼ぶのではなく、常に来てもらえるようにすることを考えていかないといけないのです。これは私の個人的な考えであり、弊社の見解というわけではありませんが、一定の状況を保つことが「ブランド構築」という長い目で見ると大事なのです。

旅行業者はすべてグローバル企業であるべき

――それぞれの点が観光客を呼ぶのではなく、点を結んだ線、あるいは日本全体という面での戦略が必要になってくるわけですね。

そうです。日本のなかだけで競争するという時代は終わっています。世界と戦っていかなければならないのです。日本の観光事業に関わる各社はすべてグローバル企業であるべきです。

グローバル企業というのは、一貫した品質、一貫した価格、安定した配給量を必ず実現しています。ある瞬間だけ稼げればそれでいいという発想では、グローバル企業とは言えません。

――円高や経済不安の影響は、現実問題としてどのように受け止めればよいですか?

円高であっても、世界的な経済不安であっても、旅行の需要は必ずあります。不況だからといって、みんながずっと家に閉じこもっているわけではありません。私自身も、不況でも旅行したいという欲求はあります。

思い出してみてください。リーマンショックが起こったとき、世界経済はとてもたいへんな状態になりました。ですが、現実は道行く人たちが生活スタイルを大きく変えたかといえば、そのようなことはありませんでした。多くの人がステーキを食べにステーキ屋へ出かけましたし、ビールを飲みにバーへ行きました。

円高も経済的には大きな影響がありますが、アメリカの債務超過やギリシャの経済危機など、より大変な国に比べれば、円高というのは「日本の円は安全だ」ということを物語っています。

このようなことはコインの裏表のようなものですから、あえて悲観的に捉える必要はありません。むしろ、日本にとってはいい機会だと捉えることもできるのです。困難な時期だからこそ、この状況に立ち向かうために、日本が一つになれるチャンスだと認識すればよいのです。

インタビュアー:越石一彦、構成:木村俊太

投稿日:2011年11月9日
  • ご意見・ご感想

■この記事の評価(最高評価:★5)

0

■ご意見・ご感想はこちらからお願いします(任意)

« コラムの王様トップ »
このページの上部へ