第5回
ニューノーマル時代の健康管理

2021/05/17

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長 
月刊総務』編集長 豊田健一
ニューノーマル
在宅勤務がもたらす健康課題

「見えない」がニューノーマル

緊急事態宣言が出され、強制的に在宅勤務となったころは、なんとか乗り越えなくてはならず、また、通勤時間がなくなり、身体的に楽となったことにより、多くのワーカーは気分的に「High」な状態であった。しかし、時がたち、冷静になり始めてから、いろいろな課題が目についてきた。

それが下記の三点、

  • 生産性の向上
  • コミュニケーション不足
  • 健康管理(メンタル含む)

どれもその根底にあるのは、「見えない」という問題である。

見えないがゆえに、成果、生産性が図りにくく、マネージメントに齟齬をきたしている。また、リモートでのコミュニケーションとなるがゆえに、気軽に聞けない、話せない、結果、不安を抱えたままの状態となってしまう。さらに、見えないがゆえに、健康状態が把握できず、また、見えないがゆえに、先のコミュニケーション不足が問題となり、メンタル不全に陥りがちとなる。今回は、その中でも健康管理について考えてみたい。

通勤がもたらす変化

在宅勤務でメリハリがなくなることにより、だらだらと長時間仕事をしてしまうケース、特に、若手の独り暮らしに多いと言われる。起床して、そのまま仕事ができ、食事をしながらそのまま仕事をして、そのまま寝られるので、いつまでも仕事をし続ける。仕事とプライベートの境がなくなることが原因である。家族と住んでいると、家族の日常もあり、その影響によって、仕事とプライベートとのメリハリがつくことになる。

考えてみれば、通勤には仕事とプライベートのマインドセットの意味合いもあったようだ。通勤途上で仕事モードとなり、帰路ではプライベートの世界へ舞い戻ることができる。オフィスの仕事であれば、外にランチに行けば、その際は、仕事から離れることができる。出社することによるメリハリが、在宅勤務により失われたのである。

また、健康的な面から言うと、日光を浴びることで、体として活動モードにシフトすることができる。在宅勤務だと外にでず、日光を浴びずに仕事に入ってしまうこともある。その場合は、体が活動モードになっておらず、生産性が高まらない状態のまま仕事をすることになってしまう。

通勤した方が良い、という意味ではないが、通勤によるメリハリと、活動モードへのシフトチェンジが、ごく自然にできていたことになる。なので、それと同様のアクションをすることが、健康管理には大事となるのだ。朝起きたら、日光を浴び、メリハリを意識した儀式を行う。家の周りを散歩したり、服装を変えたり、メリハリの意識を持つことである。

メンタルヘルスケアの実態

月刊総務では、2020年9月に全国の総務担当者を対象にメンタルヘルスケアに関する調査を実施し、255名から回答を得た。その中から、メンタルケアについての実態を見ていくことにする。

テレワークの推進によってストレスが増えていると感じているか尋ねたところ、「とても増えた」「やや増えた」が合わせて54.6%と、半数以上の総務がテレワークの推進によりストレスが増えたと実感していることがわかった。

また、新型コロナウイルスの感染拡大以降において、従業員のメンタル不調の要因が何だと思うか尋ねたところ、「テレワークによるコミュニケーション不足・孤独感」が60.0%で最も多く、「外出しないことによる閉塞感」が56.5%、「新型コロナウイルス感染への不安感」が54.9%となっている。

怖い調査データがある、新型コロナウイルスの感染拡大によって、従業員からのメンタル不調の相談に変化があるか尋ねたところ、「把握できていない」が36.5%で最も多く、「変わらない」が32.2%となっており、そもそも把握ができていない、という状態が浮き彫りとなった。まさに「見えない」課題であるのだ。

相談内容はどのようなものが来ているのだろうか。その一部を紹介する。

  • 孤独感や、コロナ感染の不安
  • 収益悪化による不安
  • 仕事とプライベートの切り分け。 社員それぞれの仕事時間が異なるため、時間に制限なくメールなどの連絡がくること
  • 生活のリズムが乱れることに対する不安
  • 社会との繋がりが感じられなくなったと聞くことが多い
  • Web会議でのパワハラ的言動からの不安増加
  • 問題がハッキリしている人はまだ少なく、漠然と「今後どうなるんだろう」と思っている人が多いように思う

当然と言えば当然だが、テレワークの方が従業員のメンタルケアが難しいと思うか尋ねたところ、「はい」が73.3%、「いいえ」が26.7%という結果となった。リアルの場であっても難しい課題であり、「見えない」がゆえにもっと難しくなっている。

従業員のメンタルケアのために行っている施策について尋ねたところ、「相談窓口の設置」が34.1%で最も多く、「朝礼・夕礼等の実施」が26.7%、「アンケートや聞き取りの実施」が22.0%と続き、また、「実施している施策はない」が28.2%という結果となった。

このリモートありきの働き方は、日本においては始まったばかり。しかし、これがニューノーマルとなることが予想される。この状況下で、健康管理の勝ちパターンは、いまだ見えていないが、早々に取り組む重要な課題であることは間違いない。

コミュニケーション不足という課題と、健康管理、特にメンタルヘルスケアは表裏一体として考えていくことが重要ではなかろうか。結果、それが生産性向上へと結びついていく。ニューノーマルを迎えるにあたって直面する課題は、その関係性を見ながら解決策を考えることがポイントのようだ。

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  • 著者プロフィール
豊田 健一

豊田健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務

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