第3回
ニューノーマルはオフィスとリモートのハイブリッド

2021/04/15

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長 
月刊総務』編集長 豊田健一
ニューノーマル
リモートワークの実態調査

二項対立からハイブリッドへ

『月刊総務』では、2020年8月にコロナ禍におけるオフィスのあり方について調査をした。303名の総務担当者より回答をもらった。その中で、「これからの働き方はどうなると思うか?」という質問に対して、71.3%の総務担当者が「オフィスとリモートワークの融合」と答えた。「オフィスメインで働く」は25.4%、「リモートワークメインで働く」は、3.3%の回答であった。

これからの働き方については、当然総務も入っているはず。総務もリモートワークができる状態にしなければならないし、感染拡大状況が続くのであれば、総務もリモートワークができる状態にしておかなければならないのだ。では、その総務のリモートワーク状況はどうだったのだろうか?

総務の完全リモートワーク、1.6%

『月刊総務』では、2020年6月に、総務のリモートワークの実態を調査した。320名の総務担当者より回答を頂いた。緊急事態宣言中の総務のリモートワーク実施状況について尋ねたところ、「完全にリモートワークだった」のは、たったの1.6%。

ほとんどの会社の総務が、何らかの形で出社。その内容は、以下の通り。完全リモートワークとは程遠い実態が浮き彫りになった。

  1. 交代制で毎日ではないが週に数回出社した:40.0%
  2. 交代制で毎日最低でも1人は出社するようにした:33.1%
  3. ほとんど毎日出社していた:25.3%

なぜ、出社しなければならないのか。その理由として、「郵便物の対応」が79.7%で最多、次いで「契約書等の押印」が60.3%、「代表電話の対応」が49.8%の順となっている。物理的な郵送物が届いてしまうので、その中身を確認して対応しなければならない。特に、月末月初には、請求書が届く。内容の確認とともに、経理に支払処理を依頼しなければならない。担当者の確認印も押して、現物が回っていく。

契約書の押印が第二位。これも物理的に存在する紙の契約書への対応。内容の確認とともに、合意のための角印、代表者印を押して、場合により印紙を貼って、消印、割り印の処理をして、一部を先方に返送する。

契約行為の実態、電子化についても調査しているが、それによると、電子契約のシステムを導入しているのは、11.6%にとどまる。よって、多くの企業が物理的な対応をせざるを得ず、結果、総務で完全テレワークが進まない実態となっているのだ。

総務のリモートワークに必要なITツールは「電子契約」「電子決裁」

一方、総務がリモートワークをするために会社に導入してほしいITツールについて尋ねたところ、「電子契約」が61.3%で最多、次いで「電子決裁(稟議申請、経費精算等)」が43.8%となった。前問で「電子契約」の導入状況は11.6%にとどまっており、総務の現場の要望と会社のツール導入状況に大きな差があることが判明した。総務としても、この部分をなんとかしたいという、切実な思いの表れである。

ちなみに、ランキングは下記の通り、

  1. 電子契約:61.3%
  2. 電子決裁(稟議申請、経費精算等):43.8%
  3. 電話転送:26.3%
  4. 仮想オフィス:21.9%
  5. 人事管理(採用、評価、タレントマネジメント等):16.9%
  6. オンラインストレージ:16.9%
  7. 勤怠・労務管理:16.6%
  8. ビデオ会議:15.3%
  9. ビジネスチャット:14.7%
  10. ウェビナー:7.5%
  11. その他:5.0%

さらに、この回答企業の中から、実際にフルリモートができている総務に取材をしてみた。どこも、総務のテレワークを阻む三大課題、押印、代表電話、郵送物には苦労したようだ。しかし、押印については、電子押印サービスで乗り越え、電話は転送サービスで乗り越えている。唯一、郵送物だけは人力で対応しており、その日に出社している他部門のメンバーに、届いている郵送物を開封してもらい、関係者に連絡し、その対応の指示を仰ぎ、処理しているとのこと。

その三大課題の前に重要なのが、ペーパーレス。フルリモートができているところは、全てペーパーレスを実践していた。業務で必要な書類は電子化されており、それもクラウドストレージに収納されていて、在宅であっても仕事ができる。また、稟議や申請についても電子ワークフローで回っていく。そのような状態がベースとなって、初めて三大課題に頭を悩ますのだ。ペーパーレスが実現していなければ、三大課題どころの話ではない。

コロナは今回だけではない

意識してほしいのは、このような感染症パンデミックは、今回限りではないということ。専門家に言わせると、五年おきにやってくるという。さらに強力なコロナウイルスが出現する可能性もなきにしもあらず。次に同様のパンデミックが来てしまったら…。

第二波が到来しているが、ワクチンができてしまえば一安心。そのワクチンの完成を心待ちにして、リモートワーク実現の手を緩めてはいけない。「なぜ、2020年の新型コロナの際に対応しておかなかったのだ!」と絶対に言われるはずである。

むしろ、この災難を好機と捉え、総務ではなかなか実現、あるいは、想定もしていなかった、総務でのリモートワークを実現する最大のチャンスなのである。総務は会社に居て当たり前、ではなく、総務も現場と同様にリモートワークが当たり前、そんな世界を実現する絶好の機会なのである。

たとえ、世の中が元に戻ろうとも、次に備えてペーパーレスの実現、さらには総務における完全リモートワークができる体制は、是が非でも整えておきたいものである。

関連書式

  • 著者プロフィール
豊田 健一

豊田健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務

この著者の関連記事