総論
120年ぶりの民法大改正。
重要項目をポイント解説

2020/02/05

監修:行政書士のぞみ合同事務所 
特定行政書士 今村正典
民法改正
本を持つ男性

既にご承知の方も多い、民法の改正。

しかし、「民法の大改正と言われても、それがどのように私たちに関係あるの?」、そのように疑問を持つ方も多いかもしれません。自身に関係ないと、興味が持てないものですよね。
このコーナーでは、いきなり民法改正の解説に入るより、まずは皆さんに、その民法がどのように日常生活に関係しているのか、日々いろいろなところで接する「契約」をテーマにご説明していきましょう。

そもそも、契約とは?

契約というと、不動産の売買や企業間の商談の成立などに伴って必要なことだと思いがちですが、実は日常生活の中でも、私たちは意識しないうちに無数の契約をしているのです。例えば、通勤通学のために電車に乗る行為も鉄道会社との間での運送契約となりますし、コンビニで缶コーヒーを買えば売買契約、昨日飲み代が足りなくて友人に借りた1,000円も金銭消費貸借契約という立派な契約行為なのです。

民法では、お互いの意思が表示され、その意思表示が双方で合致すれば契約が成立したことになります。お互いの意思表示が合致したのであれば、必ずしも契約書は必要ではなく、たとえそれが口約束であったとしても、契約は成立するのです。

契約が成立することによって契約の当事者には、契約の内容が実現されるという権利(これを「債権」といいます)が生じ、その代わりに代金の支払いや、作業などを行わなければならないという義務(債務といいます)が生じます。

契約が成立すると法律上の権利や義務が発生し、契約の相手が契約内容を守らなかった場合には、裁判所に訴えて契約内容を強制的に履行させたり、損害賠償を請求したりすることができるようになります。

そもそも、なぜ契約書を作成するの?

企業間の取引などでは、契約書を作成して取り交わすことが一般的です。契約書の作成は民法で定められた要件ではないのに、なぜ契約書を作成する必要性があるのでしょうか?

契約書を作成する目的には、以下の4つがあります。

①互いに合意した内容を確認することで、間違いや誤解の発生を可能な限り小さくする

契約書を作成し、それぞれに内容を読み込むことで、これまでの契約の経過や合意内容が明確となるので、内容の間違いや誤解していた部分が交渉の過程であぶり出されてきます。その結果、作成された契約書では、どのような目的で、何を契約したのかについて記載されることになります。そうすることで、契約締結後の間違いや誤解の発生を極力小さくすることが可能となります。

②契約内容を実行するにあたってのマニュアルとなる

契約書には、契約内容が明確に記載されていますので、相手方が何を求めているのか、そのためにどのようなことが必要なのかを検討する際に、一つのマニュアルとして機能します。契約行為を進めていくために必要な原点だと言えると思います。

③契約内容を文書化することで、忘れたり、担当者の異動によって契約内容がわからなくなったりすることを防ぐ

人事異動などで、担当者が替わってしまうことがあります。自社もそうですが、相手方も同様に替わることがあります。契約書はこのような場合でも文書として残っていますので、人によって内容が変わってしまうことがありません。

④後日紛争となった時の重要な証拠書類となる

紛争がとなった場合にも、裁判所に証拠として提出することで、いつ、どのような契約が成立していたのかについて、証明することが可能です。

契約書を作成する目的がわかると、内容をよく読まずに押印したり、読んでも十分理解しないままにしておくことの危険性が理解できるのではないでしょうか。契約内容に納得ができない場合には、納得できるまで話し合いや交渉を進めるべきで、場合によっては契約そのものを見送るという判断もありえます。

後から修正すればいいと、納得できないまま押印してしまうと、取り返しがつかないことにもなりかねません。契約書などの文書は、本人や代理人の署名捺印がある書面については、真正に成立したものと推定されることになっています。(民事訴訟法228条4項)

ですから、いったん契約書に署名捺印してしまうと、契約書に記載した内容について合意していると推定されることになってしまいます。最初に書いた通り、契約には「法的拘束力」がありますから、もし契約内容を実現できなければ、法的な責任を負うことになる可能性が高くなります。

つまり、私たちが何気なく行っている行為(契約行為)であっても、それはしっかりと法律(民法等)に則った行為となるのです。ですから、今回の民法改正も大事なところは理解しておくことが望まれるのです。

民法改正とその影響

2017年に成立した民法の一部を改正する法律が一部の例外部分を除いて、2020年4月1日に施行されます。明治時代に民法財産編が制定されてから120年ぶりの大改正が行われることになりました。

120年前の法律とはいえ、それまでの長い時間の中で変化してきた社会の流れに合わせて、様々な決まりごとが裁判の判例や学説の中に蓄積され、それらが実質的なルールとなっていました。今回の大改正は、「民法のうち債権関係の規定について、同法制定以来の社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かりやすいものとする」ことが大きな目的となっています。さらに、社会で必要とされる新たな制度も導入されるなど、改正項目は約200項目にもおよびます。

しかし、今回の改正事項の全てが契約書に影響するわけではありません。契約の内容や種類、取り決め内容によって、変える必要のあるものと、それほど影響のないものがあります。

ここでは、今回行われた主な改正のうち、注意したほうがいいポイントについていくつか説明したいと思います。

  • 監修者プロフィール

今村正典

社会的責任に関する各種テーマ、企業コンプライアンスと法的リスク管理、外国人の在留に関するテーマを専門とし、社会的責任に関する各種の支援業務、外国人の在留に関する業務、建設業などの各種許認可に関する業務などの活動を行う。
「外国人の在留資格」、契約に関する注意点、企業内コンプライアンスセミナーなど、各業界の企業等向けにコンプライアンス関連セミナー、企業内研修など、講演、セミナーの実績多数。その他執筆活動として以下のコラムの執筆を精力的に行っている。
■ 『月刊総務オンライン コラム』次世代育成支援対策推進法の情報
■ 松本肇著『ホームページ泥棒をやっつける』にて専門家として一部執筆
■ 月刊プレイグラフ 法務相談カルテ(執筆中)
■ ブログ法務コンシェルジュ『ISO26000』(執筆中)

その他業界誌・業界向け新聞等にコンプライアンス関連記事の執筆を行う。