対話でわかる!建設業許可のポイント

2021/07/14

著者:弁護士・法務博士(専門職) 平 裕介
企業法務
建設業許可のポイント

〔建設業許可が必要となる場合・不要となる場合〕

社長

当社も建設業の許可(建設業許可)を受けた方が良いのではないかと検討しているところなのですが、そもそも必要ない場合もあると聞きました。行政書士に許可の申請について依頼するとしても、その前にメリットやデメリットなど、建設業の許可のポイントやツボを知っておきたいと思っています。これらについて教えてください。

弁護士
弁護士

はい。おっしゃるとおり、工事の施工をする場合であっても、常に、建設業の許可が必要というわけではありません。建設業(元請、下請などの名義で建設工事の完成を請け負う営業)を営もうとする者は、原則として、建設業法(以下「法」と略します)という法律で定められた建設業の許可を受ける必要があります。ただし、例外的に、一定の「軽微な建設工事のみ」を請け負うことを営業とする者は、許可を受ける必要がありません(法3条1項)。

社長

その「軽微な建設工事」ですが、具体的に工事の金額などが決まっているのですか。

弁護士
弁護士

決まっています。許可が不要となる例外は2つありまして、1つ目は、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事を施工する場合です。ただし、当該建設工事が建築一式工事である場合は、1500万円未満の場合になります。

2つ目は、建築一式工事のうち延べ面積が150m²未満の木造住宅を建設する工事を施工する場合です。これらの場合には、許可は必要ありません。

社長

分割で請負代金が支払われる場合は、分けて考えていいのでしょうか。

弁護士
弁護士

いえ、原則として、請負代金の合計額で、500万円または1500万円未満の判断をすることになります。請負代金の額は、同一の建設業を営む者が工事の完成を2以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とするとされていますが、例外的に、正当な理由に基づいて契約を分割したとき[1]は、分割した金額を基準に判断します(法施行令1条の2第2項)[2]

社長

それと、そもそもの話かもしれませんが、今お話にあった「建築一式工事」というのは、どのような工事ですか。

弁護士
弁護士

建築一式工事も、建設業法に規定がありまして(法2条1項の別表第1)、告示で「総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事」であると説明されています[3]。ちなみに、建設業許可は、法定されている建設工事の種類ごとに受けるものなので、建築一式工事の許可のみを受けている業者は、その許可を受けているからといって、例えば、「大工工事」(法2条1項の別表第1)の許可を受けているわけではありません。

社長

建築一式工事の建設業許可だけを受けている業者が、その業者だけで大工工事をやってはいけないということですか。

弁護士
弁護士

そのとおりです。大工工事も同じ告示で「木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事」と説明されていますが、木材の加工や取付けなどの工事をするためには、別途、大工工事の建設業許可を受けるか、あるいは、大工工事の建設業許可を受けている業者(下請業者となる場合が多い)とともに役割を分担して工事を施工する必要があります。

〔建設業許可を受けるメリット〕

社長

建設業許可を受けなくても良い場合については分かりました。とはいえ、例えば、1件500万円未満の工事するような場合でも、許可を受けることはできるわけですか。

弁護士
弁護士

はい、受けられます。許可を受ければ、例えば、500万円以上の工事を受けられるようになるというメリットがありますが、許可が建設業法上必要ないとされている場合であっても、許可を受けるメリットはあります。

社長

それは、どのようなメリットですか。

弁護士
弁護士

実務的に、許可を受けるメリットは大きいと思います。例えば、企業が発注者である消費者個人から、一軒家のリフォーム工事などを元請として直接に請け負う場合、消費者個人がリフォーム代金についてローンを組むことが多いのですが、ローンを組むに際して、借り入れ銀行から、建設業者の許可の内容(建設業許可の取得の有無や許可業種の確認)について問われ、その情報が融資を受けるに当たっての判断材料とされることが少なくありません[4]

社長

それは、元請のメリットということですが、下請の場合はどうなのでしょうか。

弁護士
弁護士

下請業者にもメリットはあります。というのも、近年、下請業者であっても、元請業者の社内コンプライアンス(法令遵守)の一環として、関係する取引先である下請業者に対し、建設業許可の取得を求めることがあります。

社長

許可を受けていない下請業者とは取引しないということですか。

弁護士
弁護士

はい、許可を受けていない下請業者とは取引しないというケースは実際に多いですね[5]

〔建設業許可を受けるデメリット〕

社長

なるほど。では、逆に許可が本来必要ないのに許可を受けることによって被るデメリットはないのでしょうか。申請の手続をしなければならないということのほかに何かあれば教えてください。

弁護士
弁護士

はい、営業所の所在地によって許可は知事許可と大臣許可に分かれます。2以上の都道府県の区域内に営業所(本店、支店等)を設けて営業をしようとする場合は国土交通大臣の許可(大臣許可)が必要となりますが、1つの都道府県の区域内にのみ営業所を設ける場合はその営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可(知事許可)を受けなければならないとされています(法3条1項本文)。
しかし、1つの都道府県で知事許可を受けてはいるが、他の都道府県では知事許可を受けていない場合には、当該他の都道府県では、許可が不要とされている「軽微な建設工事」(同項但書)であっても、請け負うことができなくなってしまいます。

社長

知事許可を受けてしまうと、他の都道府県では、軽微な建設工事ですら請け負えなくなるというのがデメリットということですね。

弁護士
弁護士

仰るとおりです。法令で明確に定められているわけではないのですが、国交省のガイドライン(後掲)がそのような法解釈を示しているからです。

社長

営業所のない他の都道府県でも建設工事の請負契約の締結等をしたければ大臣許可が必要なのですね。

弁護士
弁護士

国の考え方はそうです。法の趣旨目的(法1条参照)からすると、関係のガイドラインは不合理な考え方とまではいえないように思われますので、知事許可よりも取得のハードルが高い大臣許可を得る必要があります。

社長

そうすると、複数の都道府県で、軽微な建設工事だけを請け負いたければ、あえて知事許可を受けないということもあり得る選択なのですね。

弁護士
弁護士

そうなります。監督処分(法29条の2第1項による許可取消処分)の対象になるリスクが生じてしまうでしょうね。ちなみに、知事許可を受けた業者が知事許可を受けていない他の都道府県で建設工事を施工することはできます。建設工事の場所については建設業法上特に制限がないからです。

社長

なるほど、建設業許可の概要やポイントがわかりました。

弁護士
弁護士

それは何よりです。またいつでもご相談ください。

〇建設業許可事務ガイドライン(平成13年4月3日国総建第97号総合政策局建設業課長から地方整備局建政部長等あて、最終改正令和2年12月25日国不建第311号)(下線引用者)

【第3条関係】

1.許可の区分について

(1)大臣許可と知事許可 国土交通大臣の許可と都道府県知事の許可の区分については、二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業しようとする場合には国土交通大臣の許可、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業しようとする場合には都道府県知事の許可とされているが、この場合における営業所は、当該許可に係る営業所のみでなく、当該建設業者についての当該許可に係る建設業を営むすべての営業所と解して取り扱う。すなわち、許可を受けた業種について軽微な建設工事のみ行う営業所についても法に規定する営業所に該当し、当該営業所が主たる営業所の所在する都道府県以外の区域内に設けられている場合は、国土交通大臣の許可として取り扱う。

(2)(略)

2.営業所の範囲について

営業所の範囲について「営業所」とは、本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいう。したがって、本店又は支店は常時建設工事の請負契約を締結する事務所でない場合であっても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行う等建設業に係る営業に実質的に関与するものである場合には、当然本条の営業所に該当する。

また「常時請負契約を締結する事務所」とは、請負契約の見積り、入札、狭義の契約締結等請負契約の締結に係る実体的な行為を行う事務所をいい、契約書の名義人が当該事務所を代表する者であるか否かを問わない。

なお、1.(1)のとおり、許可を受けた業種については軽微な建設工事のみを請け負う場合であっても、届出をしている営業所以外においては当該業種について営業することはできない。

脚注

1.正当な理由に基づく分割の場合には、法の適用を逃れるための分割ではないことを十分に証明できることが必要と考えられています(公益財団法人建設業適正取引推進機構『改訂3版 わかりやすい建設業法Q&A』(大成出版社、2018年)9頁参照)。

2.なお、注文者が材料を提供する場合、「その市場価格又は市場価格及び運送賃を当該請負契約の請負代金の額に加えたもの」を請負代金の額とするとされています(法施行令1条の2第3項)ので、提供された材料費が合計額に含まれることになります。また、請負代金等に係る消費税も含まれます(前掲『改訂3版 わかりやすい建設業法Q&A』9頁参照)。

3.昭和47年3月8日建設省告示第350号。

4.日本行政書士会連合会編『建設業法と建設業許可 第2版―行政書士による実務と解説』(日本評論社、2021年)27頁参照。

5.前掲『建設業法と建設業許可 第2版』27頁参照。

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  • 著者プロフィール

平 裕介

弁護士・法務博士(専門職)

中央大学法学部法律学科卒業。行政事件・民事事件を中心に取り扱うとともに、行政法学を中心に研究を行い、大学や法科大学院の講義も担当する。東京都建築審査会専門調査員、小平市建築審査会委員、小平市建築紛争調停委員、国立市行政不服審査会委員、杉並区法律相談員、江戸川区法律アドバイザー、厚木市職員研修講師など自治体の委員等を多数担当し、行政争訟(市民と行政との紛争・訴訟)や自治体の法務に関する知見に精通する。
著書に、『行政手続実務体系』(民事法研究会、2021年)〔分担執筆〕、『実務解説 行政訴訟』(勁草書房、2020年)〔分担執筆〕、『法律家のための行政手続きハンドブック』(ぎょうせい、2019年)〔分担執筆〕、『新・行政不服審査の実務』(三協法規、2019年)〔分担執筆〕等多数。