[ベンチャー・スタートアップ]
スタートアップ企業における社債を使った資金調達の可能性

2021/04/16

著者:日本大学商学部 准教授 鬼頭俊泰
企業法務
社債を使った資金調達とは

1 はじめに

今回は、スタートアップ企業のような会社が社債を用いて資金調達をする方策について解説します。

社債とは、会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であって、募集社債に関する事項の決定に従い償還されるものです(会社法2条23号)。

会社法は、会社が発行する社債を引き受ける者の募集しようとするときには、その都度、以下の募集事項を定めなければならないとしています(同法676条各号)。

【社債の募集事項】

募集社債の総額
各募集社債の金額
募集社債の利率
募集社債の償還の方法及び期限
利息支払の方法及び期限
社債券を発行するときは、その旨
社債権者が698条の規定による請求の全部又は一部をすることができないこととするときは、その旨
社債管理者を定めないこととするときは、その旨
社債管理者が社債権者集会の決議によらずに706条1項2号に掲げる行為をすることができることとするときは、その旨
社債管理補助者を定めることとするときは、その旨
各募集社債の払込金額(各募集社債と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)若しくはその最低金額又はこれらの算定方法
募集社債と引換えにする金銭の払込みの期日
一定の日までに募集社債の総額について割当てを受ける者を定めていない場合において、募集社債の全部を発行しないこととするときは、その旨及びその一定の日
前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

ただ、上表の通り、会社法の規定は社債の募集事項について明確に定めていますが、各規定の募集条件は自由に設定することが可能です。したがって、会社は様々な内容・性質を持つ社債を発行することができます(3で紹介する事案では、手形のような性質を持つ社債が発行されています)。

2 社債による資金調達

(1)社債と株式の比較

社債による資金調達と株式による資金調達について、表を用いて簡単に整理したいと思います。

株式 社債
共通点 ①投資家から多額の資金を調達する手段
②有価証券(※原則電子化)
③細分化された区分単位の形態
④株主総会・社債権者集会にて意思決定
相違点 経営参加権の有無 株主総会における議決権(308条)
取締役に対する監督・是正権(360条等)
なし
配当可能利益の分配であるか、利息の支払であるか 配当可能利益があって初めて利益の配当を受けられる(461条) 配当可能利益の有無にかかわらず、一定額の利息の支払いを受ける権利(676条)
残余財産分配時における優劣 会社債権者に対する弁済後の残余財産しか弁済を受けることができない(504条) 元本と利息の範囲内において株主に優先して会社財産から弁済を受けることができる
償還性の有無 会社が解散する等の事態に陥らない限り、原則として払込済みの株金の払戻しを受けることができない 償還期限が来れば償還を受けることができる(676条)

上表の通り、株主が会社の内部者であるのに対して、社債権者はあくまで会社に対する債権者に過ぎません。

つまり、社債はあくまで金銭債権(負債)であるため、発行しすぎると会社の財務体質を悪化させ、結果的に資金調達コストの上昇を招くこととなりますが、社債をいくら発行しようとも会社の経営権に影響は与えません。

(2)社債と銀行融資の比較

中小企業を中心にわが国で最も採られている資金調達方法は、銀行等の金融機関から資金を借入れる方法です。

金融機関からの借入れは、社債と同じく負債による資金調達であるため、株主の持株比率に変動をもたらすことはありません。

会社法上、金融機関からの借入れにせよ社債の発行にせよ、株主総会の決議は不要で、通常は、取締役会非設置会社においては取締役が(会社法348条1項)、取締役会設置会社においては取締役会が(同法362条2項1号)、それぞれ業務執行行為として決定します。

なお、それぞれ代表取締役をはじめ、他の取締役に業務を委任することが可能ですが、取締役会設置会社において取締役会は、多額の借財に関する業務執行を取締役に委任することはできません(同条4項2号)。

このように金融機関からの借入れと社債による資金調達には共通点が存在する一方で相違点も存在します。

たとえば、社債を市場で公募する場合、資金調達の成否は発行会社の信用力に直接左右されますが、金融機関からの借入れは会社と金融機関との間の金銭消費貸借契約であるため、必ずしも会社の信用力の多寡と融資実行の可否が結び付いているわけではありません。

また、金融機関からの借入れの場合、相応の担保を要求され、場合によっては役員も派遣され、会社の経営に干渉してくる可能性もあります。

さらに、金融機関からの借入れは、会社の業績、財務体質、景気動向等の悪化、そして利息制限法や出資法といった法的制約により、融資自体を断られる場合も発生します。

金融機関からの借入れでは利息制限法の上限金利が法的にはネックとなり貸し倒れリスクとの見合いで融資が断られることもありますが、3で紹介する事案のように、社債による資金調達の場合、社債の引き受け手を見つけることができれば、上記法的制約をある程度克服することが可能となります。

3 社債に利息制限法の適用はあるのか ~最判令和3年1月26日の紹介~

最判令和3年1月26日の事案の概要は以下の通りです。

平成24年、Z(システム開発等を業とする株式会社)は社債を引き受ける者の募集をしました。

上記募集に応じて引受けの申込みをしたYは、Zからその割当てを受け、平成24年、社債の募集事項に従って、2000万円を払い込み、平成27年までの間、Zから利息制限法所定の制限利率を超える利率の利息の支払と社債の償還を受けました。

Zは、平成28年4月、破産手続開始の決定を受け、Xが破産管財人に選任されました。

Zの破産管財人であるXは、社債の利息の支払いにつき、利息制限法所定の上限を超える約定金利をYに支払ったことからZに過払い金が生じている旨主張して、Yに対し、不当利得返還請求権に基づき、利息制限法所定の上限を超える額の支払いなどを求めました。

最高裁は、社債の成立までの手続が法定されている上、会社が定める募集事項の「払込金額」と「募集社債の金額」とが一致する必要はなく、償還されるべき社債の金額が払込金額を下回る定めをすることも許されると解される(会社法676条2号、9号参照)などの点において、社債と一般の金銭消費貸借における貸金債権との間には相違があると判示しました。

また最高裁は、社債が発行会社の事業資金調達のため、必要とする資金の規模やその信用力等を勘案し、自らの経営判断として、募集事項を定め、引受けの申込みをしようとする者を募集することが想定されているから利息制限法の趣旨が直ちに当てはまるわけではなく、今日、様々な商品設計の下に多種多様な社債が発行され、会社の資金調達に重要な役割を果たしていることに鑑みると、このような社債の利息を利息制限法1条によって制限することは、かえって会社法が会社の円滑な資金調達手段として社債制度を設けた趣旨に反することとなるとも判示しています。

4 おわりに ~社債発行による資金調達の可能性と発行時の注意点~

スタートアップ企業の中には、信用力不足などを理由に、株式発行や銀行融資による運転資金・設備投資のための資金調達を行えない企業も存在します。

3で紹介した事案のように、高い利率と引き換えに社債を引き受けてくれる者がいる場合には、社債による資金調達も可能となります。

ただし、その場合には注意も必要です。3で取り上げた最高裁は判決で以下のように述べています。

債権者が会社に金銭を貸し付けるに際して、社債の発行に仮託して、不当に高利を得る目的で当該会社に働きかけて社債を発行させるなど、社債の発行の目的、募集事項の内容、その決定の経緯等に照らし、当該社債の発行が利息制限法の規制を潜脱することを企図して行われたものと認められるなどの特段の事情がある場合には、このような社債制度の利用の仕方は会社法が予定しているものではないというべきであり、むしろ、上記で述べたとおりの利息制限法の趣旨が妥当する。

会社が利息制限法の上限金利を超える金利で社債を発行する場合、そのような社債発行による資金調達の正当性(たとえば、銀行等の金融機関からの融資を一切断られ、経営陣が他の資金調達手段も含めて適切に検討をした結果、そのような社債を発行せざるを得なくなったような場合)が必要となります。

社債の発行に際して最高裁が指摘するような事情が含まれる場合には、発行した社債に利息制限法が適用されたり、公序良俗違反により無効(民法90条)とされたりする可能性が生じます。

また、当該社債の発行を決定した取締役や取締役会は、株主などから、当該決定の内容には著しく不合理なものがあるとして善管注意義務違反または忠実義務違反に基づく責任を追及される可能性もあります(会社法330条、355条、847条、民法644条)。

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  • 著者プロフィール

鬼頭俊泰

日本大学商学部 准教授

日本大学大学院法学研究科博士課程前期課程修了。同後期課程満期退学ののち、八戸大学(現:八戸学院大学)ビジネス学部に着任。その後、日本大学商学部助教を経て現職。
著書に、ビジネス法務の理論と実践(芦書房、2020年)(共編・共著)、資金決済法の理論と実務(勁草書房、2019年)(共著)、インターネットビジネスの法務と実務(三協法規出版、2018年)(共著)、検証判例会社法(財経詳報社、2017年)(共著)などがある。

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