第27回
人手不足解消のための採用戦略

2021/05/11

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長 
月刊総務』編集長 豊田健一
働き方改革
新卒採用の広報戦略

制度が実際、どれだけ利用されているか

働き方改革の最大の要因である人手不足。日本においては、四月入社の新卒採用を軸に、不足分を中途採用で対応することが主流となっている。どちらにせよ、働きやすい会社として、自社のことをいかに魅力的に見せ、また理解してもらうか、その入り口である採用広報は大事な戦略となっている。今回は特に、新卒に対しての採用広報の戦略について紹介する。

いろいろな企業で行われている大学生就職意識調査では、学生の就職観はおおむね以下の通り。

  1. 楽しく働きたい
  2. 個人の生活と仕事を両立させたい
  3. 人のためになる仕事をしたい
  4. 自分の夢のために働きたい
  5. プライドの持てる仕事をしたい

この中で、「楽しく働きたい」はこの十数年変わりなく1位のまま。2位の「個人の生活と仕事を両立させたい」は、仕事と私生活の両立が就職観としてより重要視されるようになっている表れであり、上昇傾向にある。

その結果、「勤務制度、住宅などの福利厚生の良い会社」、「休日、休暇の多い会社」を選ぶ学生が増加傾向にあり、女子学生は特に、長く働ける制度があるか、女性が活躍しているか、単に制度があるだけでなく実際に利用されているか、といったことに高い関心を示しているようだ。

育児や介護等の両立支援、女性活躍推進の取り組みが進んでいること、福利厚生が充実していることは、採用活動においてはポイントとなる。しかし、良い面ばかりを強調してしまいがちだが、学生が望んでいるのは本音であり、先輩社員とのリアルなコミュニケーションの場で、じっくり説明してあげるのが効果的だ。

大事なのは、制度がどれだけ実際に利用されているのか、利用しやすい環境にあるかということ。利用率や、実際に利用している先輩社員の話を紹介する工夫が必要だ。

合同説明会、単独での会社説明会等、リアルのコミュニケーションで大事なのは、ベテラン社員ではなく、若手社員を登場させること。学生が苦手とするのは中年の男性。「怖い」と思われたら、ブースに立ち寄ってもらえなかったり、質問を避けられてしまうことがある。

若手の女性社員が相手をすると、男子学生も話しやすいので効果的。年の近い先輩社員に親近感、あこがれを持ち入社を決める、という場合もある。採用活動の配役にも気を配りたいものだ。

企業理念への共感を目指す

先に記した福利厚生は、学生が就職先を選ぶ際の大きなポイントとなっているが、この点で中小企業が大企業と互角に戦うのは正直厳しいだろう。一方で、学生はその福利厚生とともにその会社の企業理念もしっかりと見ている。

採用ブランディングの実践をサポートしている「むすび株式会社」代表の深澤さんによると、
「”企業理念”は、規模の大小に関わらず、事業戦略や社風や社員の雰囲気、仕事の仕方などに、その会社らしさ、あるいは価値観としてしみ込んでいます。だからこそ、単純に数値化して比べられません。企業理念を前面に出して勝負することで、企業規模や知名度を超えた部分で勝負できるのです」
「変化の激しい時代には、事業内容や待遇で会社選びをしても、将来的にどう変わっていくか不透明。しかし、価値観が一緒なら納得感や共感は変わらない可能性が高く、そうした本質を見極めたいと考える応募者が増えているのかもしれません」

ある企業では、各部署からの選抜メンバーがプロジェクト的に本業と兼務しながら採用活動を行っている。若手社員が説明会に登壇し、説明、面接、質問を受ける。学生からは「一緒に働く人がイメージできる」と好評。

この企業では、社員の中に「一緒に働きたい人」としてのロールモデルを見つけ、その社員に採用活動に加わってもらっているのだ。ロールモデルにあこがれ、共感する学生を集め、積極的に採用活動をしている。そのような魅力的な社員は、対人力も高く、学生から相談を受けながら上手に自社を売り込むそうだ。

また、採用パンフレットにも魅力的な社員を登場させることを徹底。どんな人が、どんな仕事を、どんな思いでしているのか。社員の情熱を感じてもらえるものとなっている。

採用サイトに掲載すべきコンテンツとは

最後に、採用広報ツールである採用サイトに掲載するコンテンツを紹介する。一般的なコンテンツとしては、

  • 企業ビジョン
  • 代表メッセージ・思い
  • 会社概要・事業紹介
  • インターンシップ紹介や募集事項

等があるが、その他にも掲載したいコンテンツとしては、働きがいや働きやすさを直接社員に語ってもらう社員インタビュー。テキストも良いが、動画だとさらにインパクトがある。男女、職種別に、多くの社員を掲載することで、フックポイントが増える。登場人物は、名前はもちろん、担当業務を詳細に掲載。一日の使い方やプライベートもできるだけ掲載。バックグラウンドを理解することで、より親密感が増す。

または、入社後の研修、教育風景の掲載、あるいは動画の掲載。自らがどのように成長していくのか、そのイメージを提供。入社後のイメージを持たせる、自己投影できるようなコンテンツが大切だ。サイトデザインは、シンプルに分かりやすく。多くの情報を確実に届けるには見る側が欲しい情報にすぐにリーチでき、多くの情報に触れられることが必要である。

働き方改革・労務関連書式

  • 著者プロフィール
豊田 健一

豊田健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務

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