第24回
社員が納得する健康経営の進め方

2021/01/13

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長 
月刊総務』編集長 豊田健一
働き方改革
健康経営を継続させるポイントとは?

とにもかくにも定期健康診断

健康経営を行うためには、継続が重要だ。というのも、何かをすればすぐに結果が出るものではないからだ。また、健康な人にストレートに「健康を意識して、健康的な活動をするように」と言ってもなかなか動いてくれるものではない。ましてや、「プライベートに踏み込むなんて!」というハレーションを起こす可能性すらある。

しかし、働く人にとって健康は全てのベースであり、プレゼンティズムという言葉があるように、健康不良のまま働くと、当人にとっても組織にとっても大きな損害を生じてしまう。では、健康経営をどのように、無理なく、そして社員の納得を得ながら進めていけば良いのか?

健康経営だけでなく、仕事を進めるうえでは、現状把握が欠かせない。実態がどうなっているのかが分からないと打ち手も見えないし、何か施策を実行した後も改善しているのかどうか判然としない。健康経営の実態把握の筆頭は、何といっても定期健康診断。

法的にも、会社としては受けさせる義務があり、社員側も受ける義務がある。健康診断の受診率は100%であるべきで、それを目指さなければならない。健康経営とは何から始めれば良いのか、という場合には、間違いなく健診受診率100%を目指すことから始めるのが良い。

データの掛け合わせで意外な真実も

定期健康診断の結果は、他の調査項目と掛け合わせて分析したい。どのような仕事の仕方をしているのか、どのような生活リズムなのか、体の調子はどうか。健診だけでは把握できない現状を調査する。これに、業績を掛け合わせてみる。

ある調査結果がある。飲酒パターンと業績の相関。奇しくも二つの企業が同じ結果となった。週三回、飲みに行っている社員が最も業績が高かった。全く飲まない人より適度に飲んでいる人の方が、パフォーマンスが高い。その理由は、飲み会の場での情報共有、コミュニケーション活性化により業績が高いからではないか、ということに落ち着いた。

さらに、オフィスIoT。いまは、位置情報と環境情報、心理情報が把握できる。誰がどこで働いているか。その場所の環境、温度と湿度、二酸化炭素濃度や照度。そして、その人が集中しているのかどうか。全て把握できる。それと健康状態、業績。いろいろなものを掛け合わせて、自社の傾向、状況を把握していけば、総務が作る働く場の検証も可能となる。社員のみならず、会社の場としての健康状態も見えてくるのではないだろうか。

社長による健康宣言

健康経営を成功させている企業は、専門部署が存在することが多い。健康経営推進室等の名称で、特別の部門が存在することが多いようだ。そして、そのトップに経営トップ、社長を据えるところが多い。総務部長でもなく、人事部長でもなく、社長。

会社としての本気度を示すのだ。社員は上、最上階を見るもの。「総務が勝手にやっているのでは? 人事だけでしょ?」と思わせないためにも、社長を巻き込んで進めていく。そして、社長に健康宣言をしてもらうのだ。

健康経営銘柄に連続して選ばれている、花王。健康経営で有名な企業だが、ここでは、次のような健康宣言をしている。
「私たちは、日々いきいきと健康づくりに取り組み、すこやかで心豊かな生活の実現をはかるとともに、元気で活力のある職場を通し、お客様と共に感動する社会を目指します」
このような健康宣言を社内外共に発信している。それにより、そのような会社であると見られ、取引先の場で、お客様との会話の中に出てくることにより、社員の意識も高まってくる。トップの関与、それによる会社としての本気度、そしてその表れである健康宣言は、健康経営推進のためには必ず行いたい。

継続させる仕掛け

健康経営の施策にはいろいろなものがある。歩数計をつけて部門ごとの合計数値を競ったり、「血圧を計ろう」キャンペーンをしたり、期間を定めて集中的に健康的な取り組みをするもの。しかし、時期が過ぎると、どこ吹く風となり、いつものようにコンビニ弁当、甘い飲み物…。

健康的な施策の多くが、日常生活にプラスアルファするものが多く、少し負担と感じてしまいがち。負担と感じると、まずまず健康な人は継続してくれない。そこで、「どうせ人は食べる」、「どうせ人は寝る」。あるいは、「トイレに行くついでに」、「席を立ったついでに」という、「どうせ」人が必ず行うものに変化を加える、「ついでに」何かできることを加える、そのような取り組みが継続されやすいようだ。

必ず人は寝る。そして、良質な睡眠は生産性に大きく寄与する。睡眠改善プログラムを導入する企業も多い。睡眠の正しい作法を知っていると、その睡眠の質が高まり、翌日の仕事の生産性に大きな違いをもたらす。また、昼寝を容認する企業も増えており、その専用の場所も確保している企業もある。

必ず人は食べる。社食があるところでは健康メニューに徐々に切り替え、飲み物もトクホのお茶に切り替えているところもある。人は必ず寝て、食べて、水分補給するので、その中に健康的な取り組みを仕掛けていくのだ。

さらに、必ず人は排泄する。そこで、トイレに行く動線に自販機を置いたり、リフレッシュルームを作ったりと、トイレに行くついでに少し休憩してもらう。わざわざ出向くのではなく、トイレに行くついでの機会をとらえるのだ。あるいは、席を立ったついでに、簡単にできるストレッチを教える。わざわざ時間を取って体を動かすのではなく、これもトイレに行くついでに簡単にやってもらう、というもの。

病気やケガ、日ごろから調子が悪い人は健康への意識が高く、何らかの動きをしているだろうが、まずまず健康な人に健康的な動きをしてもらうのは難しいもの。簡単に、そして長続きする健康経営施策を考えることが、継続するポイントなのだ。

働き方改革・労務関連書式

  • 著者プロフィール
豊田 健一

豊田健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務

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