第21回
時短は結果。目的は生産性の向上

2020/11/24

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長 
月刊総務』編集長 豊田健一
働き方改革
生産性を向上させ残業時間の削減へ

業務を見直し、結果、労働時間が削減される

いま進んでいる働き方改革。まずは長時間の残業抑制から始まった。働き方改革関連法案も施行され、残業時間の抑制は待ったなしだ。改めて時間外労働の上限規制については以下の通りだ。
施行は2019年(中小企業2020年)4月1日からで、時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定するというものだ。

定められた上限を遵守するのは当然のことであり、長時間残業はゼロに越したことはない。ただ、考え方として、労働時間削減は目的ではなく、あくまでも結果。処理すべき業務量が変わらないまま、やみくもに労働時間を削減しても、企業活動が縮小してしまうだけだ。

これは、ある著名投資銀行のアナリストの言葉。
「労働時間を減らせば生産性が上がるという、短絡的な考え方が目立つ。これは逆。生産性が上がったときに労働時間が減るのだ」

つまり、長時間労働削減を行うには、いま行っている業務の生産性を向上させることが本質的な解決手段なのである。そこに手を付けないと、溢れた仕事を、いつやるか、どこでやるか、という問題になってしまい、結果、従業員を追い込んでしまう結果となる。

さらに、多くの企業で行われている、長時間労働削減の施策。往々にしてあるのが、その施策を行うことが目的となってしまい、それによるしわ寄せを考慮しないこと。管理職にしわ寄せがいってしまったという新聞記事もあった。

長時間労働削減の施策が悪いということではなく、考えたいのは、それを実施することで自らの業務を見直す、そのきっかけとして捉えること。ノー残業デーがあるのであれば、それに向けて、業務の進捗を厳しく見ていく。テレワークを実施するのであれば、外でできる仕事を切り出しておく。そのように、施策により業務改善を行う。改めて業務の意味と目的を再確認してみる。そのような見直す姿勢、取り組みが最も大事なのだ。

経営トップの率先垂範

先に記した業務の見直し、それによる生産性の向上が実現したとしても、次に立ちはだかる障害は、社風や職場の風土。「長時間働くことが美徳」という風土はまだまだあるもの。特に、意思決定者、管理監督者クラスには、「24時間働く」リゲイン世代が多い。このような風土を払拭していかないと、時短施策は進めていきにくいものだ。

ここは経営トップが率先して進めていく必要がある。「早く帰ることは良いことだ」、「早く帰る社員は優秀である」、そのような発言をし続けていく。さらに、トップ自らが定時に消灯、帰路につく。ある企業では、就業時間後に働いている従業員に「なぜ残業しているのか」を一人一人尋ね歩いている、という事例もある。

このような活動を地道に、そして継続的に続けていくことが大事だ。いつまでもダラダラと仕事をしていることは「悪」である、という雰囲気づくりが必要だ。

ある企業では、10時間残業してしまうとその理由と今後の対策をメンバーが課長に説明する、20時間を超えると課長が部長に説明する、40時間を超えると部長が役員に説明する、それ以上超えてしまうと役員が社長に、そのメンバーがそんなに残業した理由と今後の対策について社長に説明する。このようなルールとなっている。やってしまった残業のお叱りよりも、今後どのようにしていくかが重点的に話し合われる。さらに重要なことは、それだけ残業したメンバーの仕事の中身を上層部が把握することだ。

長時間残業の削減施策

有給休暇の計画的取得も効果がある。年間の有給日20日間を一挙に利用しようとするとなかなか取り切れないが、月に2日程度であれば、事前に予定しておけばそう難しいものではない。ある企業では、年度初めに取得予定日を確定し、部内にも共有している。

しかし、計画的に取得し続け、年度末に全て利用できるペースだったときに、インフルエンザに罹患してしまうような懸念があると、なかなか順調に利用し続けるのは、正直怖い。そこである企業では、バックアップ休暇として、通常の有給休暇とは別に、病気欠勤のため5日間を、足りない場合にバックアップしてくれる制度がある。これにより、安心して20日間フルに計画的に有給休暇を利用しているようだ。

その他、少し強引な施策としては、時間を定めての強制消灯や、パソコンの強制シャットダウンを取り入れている企業もある。17時に終業の場合、16時にアラーム、16:30、16:40、16:50、以降一分おきにアラームがパソコン上に現れるという。慌ただしいが、効果はあるようだ。

よくあるノー残業デーも、特定の日に全員ではなく、部署ごとに曜日を決めているところもある。また、月間で何日ノー残業デーを実施するとか、それぞれの実情に合ったように運用しているところもある。

このように長時間労働削減の施策はいろいろとあるが、大事なのは、その実施が目的ではないこと。それをすることで、自らの仕事を見直し、生産性を向上させ、結果、労働時間の削減に結び付く。その流れであることを意識することが大事なのだ。

働き方改革・労務関連書式

  • 著者プロフィール
豊田 健一

豊田健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務

この著者の関連記事(全て見る)