第20回
働き方改革の促進のためのリカレント教育

2020/09/11

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長 
月刊総務』編集長 豊田健一
働き方改革
自らのキャリアを考える

全てのビジネスパーソンに必要な危機感

働き方改革は生産性の向上がメインテーマとなっている。生産性の向上は、仕事の仕組みやテクノロジーの活用(デジタルトランスフォーメーション)により実現することは可能だ。さらに向上させるのであれば、働く人の生産性の向上も必要となる。リカレント教育、経産省が推進している、学び直しである。

日本人は、大学を終えると、ほとんど学ぶことをしない。仕事柄必要なことは勉強するものの、自らを冷静に棚卸、内省した後、足りない部分、新たにチャレンジする分野を定めての勉強、あるいは教育をすることが少ないように思う。生産性向上もさることながら、高齢化時代を迎えている私たちにとっては、この学び直しが極めて重要なキーワードとなっているのだ。

働き方改革と時を同じくして出てきた言葉「人生100年時代」。ロンドンビジネススクールのリンダ・グラットンさんの著書『ライフ・シフト』もベストセラーになった。100歳まで生きるとすれば80歳まで働かなければならず、問題は、それまで今の仕事が存在するかである。

シンギュラリティという言葉をご存じだろうか? コンピューターが人間を超える日と言われ、それが2045年に来ると言われている。確かに賛否両論あるが、日本のメガバンクが大規模な人員削減を予定したり、変なホテルが登場したり、着実にその世界が近づいていることが体感できるだろう。

第四次産業革命と言われるような、AI(人工知能)、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ、ロボット、そして私たちスタッフ部門での関心事であるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)。今まで人が対応していた仕事がどんどんシステムに置き換えられている。つまり、いままでのスキルだけでは、いつシステムに取って代わられるか分からず、食べていけないのではないかという危機感を持たなければいけないのだ。

国も「人生100年時代構想会議」を立ち上げて議論した。国の働き方改革の推進者、経済産業省の産業人材政策室の室長(当時)の伊藤さんに取材した際は、「一億総学び」という言葉を使っていた。

複数のプロフェッショナル性

改めて考えてほしいことは、人生が100年あるとしたらどうなるのか、ということ。65歳で定年を迎えても、まだ35年ある。先述したように、80歳まで働き続けることも考えておかなければならない。その場合、先に記したシンギュラリティがまた影響してくる。

いまのスキルが、そのままずっと使えるか。経産省の伊藤さんいわく、「複数のプロフェッショナル性を持たないと、食べていけない」。技術の進展により、スキルの陳腐化が早まる現在、いくつもの使えるスキル、プロフェッショナルな技術や知識を保持していないと、80歳まで仕事をし続けられない可能性があるのだ。

多様なスキルを身に付けることを、リンダ・グラッドンさんは、「変身資産」と呼んでいる。変わり続ける能力を意味し、このことを経産省の伊藤さんは、「人生はすごろくから、ポケモンGOの時代」と表現された。

すごろくは、サイコロを振り続けていれば、いつかはゴールに到達する。しかし現在は、人生すごろくの途中で道がなくなっている場合、そもそもゴールがなくなっている場合もある。誰でもが最後のゴールまで到達できるとは限らない。

そこで、ポケモンGOのように、いろいろなところに出ていって、多様な出会いの中で、自らのスキルをまさに「ゲット」していく。いくつものスキルをゲット(習得)して、場面場面に応じてそのポケモン(スキル)で勝負(仕事)をしていくことが大事となるのだ。複数の専門性の習得の意味するところである。

自ら、自らのキャリアを考える

では、スタッフ部門としては、上記の課題に対して何をしていけばいいのだろうか? 経産省の伊藤さんは、「キャリア・オーナーシップ」の必要性を説いている。自らが、自らのキャリアについて、「どうしたいのか、どうなりたいのか、どうあるべきなのか」を主体的に考えるべきである、と力説していた。

会社から指示されたキャリアではなく、自らが主体的に自らのキャリアを考え、その中で、必要なスキルを自ら「ゲット」していく。人材の多様性が必要とされる現在、会社から、上から、一律に指示されたキャリア、スキルではなく、自ら考えることの重要性だ。

取材して思うのは、自らの人生において、一年後、三年後、五年後、自分はどうなりたいのかを考えさせる、キャリア研修が増えているように思う。自らの人生は自ら考えるべきものであり、その考える過程において、主体的に考えるというマインドチェンジを図る。そのような取り組みが、スタッフ部門には求められている。

この主体性、働き方の多様性に伴い重要なキーワードとなっている。いま働き方改革において、企業のスタンスは働き方の選択肢を最大限提供すること。「100人いれば、100通りの人事制度」と言うように、多くの選択肢が目の前にある。その選択肢の中から選ぶのは、あくまでも自分であり、いちいち課長の指示を仰ぐものではない。逆に、社員に主体性がなければ、スタッフ部門がいくら多くの選択肢を提供したところで、意味がない。

この主体性。先述した「人生100年時代」においての、自らの人生における危機として捉え、自ら醸成していきたいものである。

働き方改革・労務関連書式

  • 著者プロフィール
豊田 健一

豊田健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務

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