第16回
テレワーク時代のオフィスのあり方

2020/05/25

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長 
月刊総務』編集長 豊田健一
働き方改革
テレワーク時代のオフィスの存在意義を考える

「そもそも、オフィスは何のため?」

期せずして新型コロナウィルスにより、多くの企業で強制的にテレワークが実施された。当初は2020年7月のオリンピックを目標に、主に首都圏を中心にテレワークが進展すると思われたところ、全国的にテレワークを実施することとなった。

いろいろなところから聞こえてくる声は、
「想定以上に仕事ができる」
「役員会議もウェブ会議で行うようになった」
「テレワーク、何も問題ない」
コロナが収束した後も、テレワークは定着しそうだ。

そうなると、出てくる声は、
「オフィスに行かなくとも仕事はできる」
「あんなに広いオフィスは必要なの?」
「そもそも、オフィスは何のためにあるの?」
オフィスの存在意義が問われることが想定される。

コミュニケーションツールも進化しており、さらにテレワーク実施により、多くのメンバーがその使い方に慣れてくる。ウェブ会議システム、ビジネス・チャット。フリーアドレスの進展もあり、いつでもどこでも、誰とでも働ける環境は整備されつつあり、オフィスに来なくとも仕事ができる環境整備はされつつある。

さらに、シェアオフィスやサテライトオフィス、コワーキングスペースなど、オフィスに来なくともオフィス並みに環境が整った設備がそこかしこにある。むしろ、集中するならオフィスより、そのようなスペースの方が、仕事がはかどる。社内の集中スペースもできつつあるが、人から声を掛けられることもある。

以上のように、オフィスに来なくとも働ける環境や設備が多くなっているいま、改めてオフィスのことを考えてみる必要があるのだ。オフィスの存在を突き詰めていけば存在意義が明確になり、存在意義が明確になれば、いままではコストとして捉えられていたオフィスが、ある目的を達成するための投資として認識されるのではないだろうか?

オフィスは実家、「らしさ」を体感

オフィスの存在意義を求めて、オフィスの専門家、プロフェッショナルに取材した。ある人いわく、
「オフィスは実家のようなもの、あるいは母港かな」
何かあれば帰れる実家のような存在があるから、外で仕事ができる。その拠り所がなくなったら、寂しくはないかな? そんな問いかけをされていた。求心力としてのオフィスの存在意義を語っていた。

実家だとしたら、そこには実家の「香り」がある。みなさんの実家、自宅にも、ほっとする、心安らぐ香りや雰囲気があるのではないだろうか。ある意味、それがその家らしさであり、オフィスで言えば企業らしさではないだろうか。社風や文化と言われるその「らしさ」を体感する場所。その「らしさ」を醸成し強固なものとする場としてオフィスの存在意義があるかと思う。

ある企業にはオフィスのデザイン・コードがあり、全国どの営業所、支店も同じデザインとなっている。本社のみならず、どの営業所を訪ねても同じ雰囲気、その企業らしさを体感できるのだ。また、ある企業は、ロゴマークがふんだんにオフィスの中に存在する。

リーチアウト、他人から知恵を借りる場所

ある企業のオフィスの定義は、「オフィスは他人の知恵を借りる場所。リーチアウトする場である」とされている。リーチアウトとは、他人から知恵を借りること。リーチアウトする場なので対話をせよ、コラボレーション・ワークをする場所だ、と定義されている。

そのため、そのオフィスでは、ソロワークや集中ワークは厳禁。よってデスクはなく、テーブルやミーティングスペースばかり。さらに、ソロワークや集中ワークをしようものなら、社長が寄ってきて、
「そのような仕事なら、家でもできるし、カフェでもできる。ここでやる必要ない」と言われ、追い出されるとか。

リーチアウト、コラボレーション・ワークのみが認められ、そのためのオフィスとして存在しているのだ。その結果、オフィスでは対話がされ、コミュニケーションの花が満開。ワイワイガヤガヤ、ある意味うるさいオフィスではある。

確かに、ウェブ会議システムでのコミュニケーションは可能だろうが、ある目的を持ったコミュニケーションには向いていても、ちょっとしたことを聞く、目が合ったら思い出して聞くといった、偶発的な出会いによるコミュニケーションは難しい。イノベーション創発には、このような偶発的な出会いによるコミュニケーションが大事と言われることから、オフィスの一つの存在意義としてイノベーション創発の可能性を高める場という存在意義もあるのではないだろうか。

分散と集中の繰り返し

今回テレワークが多くの企業で実施され、テレワークではできない活動やテレワークでは不足していると思われる組織活動があぶり出されるのではないだろうか。それがコラボレーションであったり一体感の醸成であったり、組織が人の集団であるがゆえの必要物が見えてくるのではないだろうか。

おそらく、それがオフィスであり、集団で同じ場で働くこと、という気がする。オフィス不要論が出てきそうな、強制的なテレワーク。一方で、オフィスの必要性、集団で働くことの意味と意義が明確になり、オフィスの再認識が進む。オフィスとしては好機と捉えられるような気がしてならない。

  • 著者プロフィール
豊田 健一

豊田健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務

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