第14回
オフィスで行う効率化と創造性の向上とは

2020/05/20

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長 
月刊総務』編集長 豊田健一
働き方改革
生産性を向上させるためのオフィスとは

本業に専念できる場を目指す

総務が実践する現場のための働き方改革は、ずばり「場作り」。職場、働く場と言われる「場」をいかに生産性の高いものとするかがポイントだ。この場合の「場」は、什器等のハードやITインフラ、ハウスルールや人事制度、さらに社風や企業らしさも、全てを包含したものとしての「場」である。

この場を総務が中心となり、生産性の高い場としていくのだ。この時の生産性をさらに二つに分割する。「効率性」と「創造性」である。下記の言葉がある。立正大学の吉川教授による言葉だ。

「1時間あたりに作れるまんじゅうの数を増やすのが、技術的な意味での生産性上昇。一方、世の中の変化に合わせて売れるまんじゅうを新たに作り出すという生産性の上昇もある」
一つ目が効率性の向上であり、もう一つが創造性の向上、いわゆるイノベーションの創出となる。

働く場においての効率化は、テクノロジーを使い、使い勝手の良いITインフラを構築し、業務の効率化の実現を目指すこと。どのようなテクノロジーを導入しているかと言うと、導入率の高いものから順に、
ウェブ会議システム、クラウドストレージ、ビジネス・チャット、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
である。
これらが導入されていくと、いつでも、どこでも、誰とでも働ける場が構築される。この場合の場は、テレワークも含む。目指すべきは、現場社員が本業に専念できる職場環境整備である。

オフィスでの仕掛けは効果的

もう一つの創造性の向上とは、社内コミュニケーションの活性化を目指すことだ。そのコミュニケーションも、部門の異なるメンバー同士によるものを増やすことが重要となる。イノベーションは「新結合」とも言われるように、既にあるものの組み合わせにより生まれる。異なる部門、畑の違うメンバー同士が出会い、会話をさせることが重要となる。

オフィスは毎日利用するものなので、オフィスに仕掛けを施すと、日常的に活性化が図られる効果の高い施策となる。最大の目的は、社員が交わる場を作ること。例えば、あえて不便な状態にすることで、社内を歩かせたり、動線を交わらせたりして、会話に結び付く出会いの場を提供するのだ。

オフィスにおける社内コミュニケーション活性化には、「クリエイティブオフィス」の考え方が参考になる。クリエイティブオフィスとは、社員が持っているナレッジを表に出しやすいようにレイアウトを工夫し、創造的な仕事やイノベーションが起きやすい環境を整えることだ。

具体的には「オフィスの見える化」だ。どこで誰が、どのような仕事をしているかが、一目瞭然となるオフィスのこと。優れたオフィスとして表彰されるものの多くは、執務室内に視界を遮る什器や間仕切りがほとんどない。会議室もガラス張りとなっていて、ホワイトボードに書かれている内容や集まっているメンバーを見れば、いまどのようなことが会社で動いているのかが理解できる。

このようにして仕事の現場が見渡せることで、自らが抱えている課題やアイデアについて、それに関連するナレッジを持っているメンバーを見つけやすくなる。さらに対話がしやすい場が数多くあれば、それだけコミュニケーションは活性化していくというわけだ。

対話させる仕掛けとは

気軽に対話できる場として「ちょいミーティングスペース」という場が活用されている。従来は、打ち合わせや会議はしかるべき場所の会議室で行われることが多かった。しかし、会議室が埋まっていたり、そもそも数が足りなかったりすると、いま思い付いたアイデアが生かされなくなってしまう可能性が高い。

「ちょいミーティングスペース」が執務室内に数多く配置されていれば、思い付いたときに打ち合わせができ、また別段かしこまらなくても会話がしやすい雰囲気となる。優れたオフィスには、そのようなスペースが至るところに配置され、ホワイトボードやモニターも常備されるなど、どのような打ち合わせにも対応できるようになっている。

このほか「マグネットスペース」と呼ばれるレイアウト方法がある。これはコピー機やプリンターなどの共用機材や備品、必ず使うであろうものをあえて一か所に集め、そこで偶発的な出会いや会話を生み出そうとする社内コミュニケーション上の工夫のことだ。

コピーやプリンターの出力を待つ間、違う部署の同期社員が横で出力を待っていたら、「久しぶり! 元気?」というような会話がされるだろう。つまり、通常業務ではなかなか会話がされないような人たちを、この場所で会話させようとするスペースである。あくまでも可能性でしかないが、各部署にコピー機やプリンターがある状態だと、このような会話はほぼされることがない。

ある企業では、ゴミ箱が執務室内の一か所に集約され、さらにそのゴミ箱の上には、壁新聞やお知らせを掲示するボードが立ててある。ゴミを捨てに来る社員間での偶発的な会話、ゴミを捨てる際に必ず掲示物が目に入るという状態、さらに掲示物をネタにしての会話、そのような可能性を提供する場として活用されているのだ。

このように共用スペースを一か所に集約し、あえて不便な状態にすることで、執務室内を「わざと」歩かせ、交わらせ、会話がされるようなレイアウトとするのだ。日常的に利用するオフィスなので、その効果は大きなものとなるのだ。

  • 著者プロフィール
豊田 健一

豊田健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務

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