第5回
働き方改革における、働く場の仕掛け方

2020/04/07

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長 
月刊総務』編集長 豊田健一
働き方改革
生産性の高い、働く「場」とは?

働く「場」の重要性

スタッフ部門が行う働き方改革のテーマ、生産性向上、それを考える上で大切なのが、働く「場」という概念。総務業界では「場づくり」という言葉が使われ始めている。ここで言う働く「場」とは、オフィス空間や什器というハード、その場を使うためのハウスルールやその場が所属する組織の制度といったソフト、その場に組み込まれているITインフラ、その場を使う従業員の関係性、さらにはそれらも含めた社風や文化。それらを全てひっくるめたものとしての「場」である。

この働く「場」を生産性が高いものにしていくことは、スタッフ部門の全社における働き方改革ということになる。前のコラムで記したように、効率性の高い働く場、創造性の高い働く場にしていくことである。さらに最近では、快適性の高い働く場も視野に入ってきている。

この働く「場」という概念、なぜ働き方改革において重要なのか。働く「場」は舞台であり、従業員はその働く「場」で演じる役者である。当然ながら、舞台が変われば役者も演じ方を変えざるを得ない。この舞台装置を変えることがスタッフ部門の仕事であり、舞台を変えることが、とりもなおさず、働き方を変える仕掛けとなる働き方改革なのだ。また、働く「場」を、その組織に所属している従業員であれば当然ながら使わざるを得ず、そこには強制力が働くのだ。

効率性の高い働く場とは、現場従業員が本業に特化できる職場環境整備と言うことができる。創造性が高い働く場とは、イノベーション創発の可能性が高い働く場のことである。快適性の高い働く場とは、ストレスを軽減する仕掛けがされている、あたかも公園で働いているかのような働く場のことである。(それぞれの詳細は後のコラムで解説)

働く場の多様性の重要性とは

この働く場にどのような仕掛けを組み込むべきなのだろうか。その考え方は三つある。まずは、多様性である。この多様性、イノベーション創発を高める意味でも重要である。そもそも、イノベーションとは新結合と訳されるように、その本質は組み合わせである。あるロシアの科学者が、人類発生以来の全ての新技術について調査したところ、九割が既存技術の組み合わせだったと紹介している。真の新技術はそうそうないのだ。つまり、組み合わせの数を増やすことが重要となる。

そして、もう一つ、働く場におけるイノベーション創発の可能性を高めるには、従業員同士を「衝突」させるのだ。グーグルのオフィスは「人を衝突させる」ことをコンセプトに設計されていると言われる。衝突することで、そこに対話が生まれ、その対話の中から新しいヒントへの気付きが生まれるのだ。

そして、先の新結合という意味では、部門の異なる人たちの衝突による対話、いわゆる偶発的出会いの場を数多く生み出すことが肝要となる。働く場の仕掛けでの多様性という意味は、この偶発的出会いの場が数多く生み出せるような多様な場を仕掛けるという意味である。

単なる執務室と会議室だけでなく、集中スペースがあったり、リフレッシュスペースがあったり、社食があったり、図書室があったり。そのようにいろいろな種類の働く場があれば、それを利用する際に移動することになり、その場や移動の途中で偶発的な出会いが数多く生まれる可能性があるのだ。

確かに、多様な働く場があったとしてもイノベーションが必ず生まれる保証はない。ただ、そのような多様な場がなければ、偶発的な出会いの可能性は少なくなり、結果的に、それによるイノベーション創発の可能性は限りなく低くなる。

働く場での主体性、働く場への求心力

働く場における重要な仕掛けの二つ目は主体性である。前のコラムで記したように、働き方改革における働き方の多様性が拡充されることに伴い、従業員の主体性が必要となる。この主体性を働く場で少しでも育むことができないだろうか。

先に記した多様性が、それに貢献できる。多様な働く場が用意されていれば、各人が自らの仕事のモードに基づき、その多様な働く場から適切な働く場を選択することができる。「企画書を作成するので、集中スペースを使おう」、「Aさんとプロジェクトの進捗確認をするので、二人用のミーティングスペースを使おう」。そのように自ら働く場を選択する主体的な行動に結び付くのだ。

さらに、選択できるということは、自らの裁量で行うことであるためモチベーションの向上にも繋がる。あそこで働きなさい、このような場所でしか仕事ができない、というように選択できない、選択肢が少ないとなると、モチベーションも低下してしまうものだ。

また、多様な働く場があり、そこで最高のパフォーマンスが上げられれば、そこがお気に入りの場所となり、そこで仕事をしたくなるという、その働く場への求心力へと結び付く。テレワークが進展してきている中、オフィスのあり方の一つとして、最もパフォーマンスが上がる働く場とする考え方もある。

多様な働く場により、このオフィスへの求心力を働かせるという仕掛けも重要なのだ。結果、多くの従業員が働く場に集い、多様な組み合わせの出会いも生まれる。そこでヒントが得られ成果が上がるのであれば多くの人との出会いを求めるだろうし、成果が上がるならまたこの場に来ようと思うだろう。このような良い循環を目指して、多様な働く場をつくり込むのである。

働き方改革・労務関連書式

  • 著者プロフィール
豊田 健一

豊田健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務

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