『戦略テーマ』の決定~各戦略への落とし込み

市場概況分析~SWOT分析により、戦略の方向性が4つ確認できました。ここまで『第3のビールの新製品』を例に進めてきましたがいよいよ大詰めです。今回の事例では、どの方向の戦略テーマが最もふさわしく、またそのテーマに沿った各戦略はどのようなものになるでしょうか?

『戦略テーマ』について(留意点)

戦略テーマとは、最も上位にあるビジネス戦略のキラーワードであり、具体的・箇条書きである必要があります。そのテーマを見た社内の各部署の方々が、それぞれ異なるイメージを持つようでは、実際の各戦略にブレが生じてしまいます。また、これまで行ってきた市場概況・SWOT分析は既にある情報の「収集~整理」であるのに対し、戦略テーマは情報をもとに「新たに生み出す」こととなります。その為、ブレーンストーミングなどの手法を駆使し、「何を・誰に・どこで」を念頭に置いたテーマを生み出します。ここでは、クロスSWOT分析により「積極攻勢戦略(強み×機会)」を選択したとして、戦略テーマの決定に進みます。

戦略テーマの決定

積極攻勢戦略(強み×機会)を選択したキーとなる情報を抜き出します。
ビタミンC配合ノウハウ×健康志向の高まり=???
200mlミニ缶製造ライン×2人で1本飲む老夫婦=???
大ヒット商品を生み出したプロデューサー×健康志向の高まり=???
ワンストップでの生産ライン×2人で1本飲む老夫婦=???
など、構成要素を掛け合わせ、様々な案を出し議論した結果、以下の戦略テーマが導き出されました。

『ビタミンC配合の第3のビールを新たに開発し、シニア夫婦をターゲットに、200ml缶をメインに発売』

この戦略テーマを下に、各戦略へと落とし込んでいきます。尚、通常は各戦略の立案については専門部署が検討・決定する場合が多いです。ここでは用語の解説を簡単に記載します。

各戦略の考え方と事例

製品戦略

製品戦略は、アイテムを構成する「コア機能」「形態」「付随機能」があり、そのうち最もマーケティングに関連する「形態」は特徴、スタイル、ブランド名(ネーミング)、パッケージ、品質の5つの特性があります。
例えば『ビタミンC配合の200mlミニ缶、ネーミング案(○△)、パッケージ(◆色基調)』等、製品に関する戦略に加え、製品ラインについても検討し決定します。

価格戦略

価格戦略は自社のポジショニングにかかわる重要な戦略です。例えばこの新商品が競合他社との差別化の可能性が高く、競争の心配が少ない場合は高単価設定の「スキミングプライシング(上澄吸収価格設定)」という戦略を取り、他社が追随してくる前に開発費等の初期費用を回収してしまう戦略を取ります。「トクホのお茶」として初めて発売された商品はわかりやすい例だと思います。
あるいは、市場シェアを獲得するために、価格設定をコスト以下、あるいはコストとほぼ同等に抑えることで、競合他社の追随を断念させる「ペネトレーションプライシング(市場浸透価格設定)」もあります。どちらも新製品の、導入期の価格戦略の1つです。

営業戦略

営業戦略は営業目標を達成するための枠組みの作戦、と捉えることができます。具体的には「目標を達成させる計画性」「戦略の下に各戦術が位置する体系」「長期的な作戦」であることが重要です。戦略は長期的(1年以上が望ましいとされている)であるのに対し、より具体化した戦術は短期的であることが特徴です。

チャネル・地域戦略

チャネル戦略とは、流通チャネル構築のための戦略でもあり、大部分が基本的に外部資源であるという特徴があります。構築には時間と費用がかかり、いったん構築してしまうと変更が難しいという特徴があることから、中長期的視点にて戦略を策定する必要があります。チャネル戦略構築においては、商品価格に見合ったチャネル戦略コストなのか、製品の特性にあったチャネルなのか、ブランド展開や商品ラインナップに適応したチャネルなのか等を意識する必要があります。

販促戦略

販売促進戦略とは、広告によって高まった消費者の関心を実売に直結させる、マーケティングのプッシュ戦略のことです。販売促進は、流通業者向けと消費者向けの2つに分かれます。チャネル向けの販売促進は、卸売業者や小売業者へのインセンティブであり、消費者の目には触れないことも多いです。一方、消費者向け販売促進は、主に流通業者を介して潜在顧客に試用を促したり、値引きや記念品などのおまけ(景品)を付けたりなどの手段を講じることによって、購入意向を促すものです。

組織戦略

組織戦略とは、一般的に「組織形態、人事・評価制度、意識改革等の組織や人を動かす仕組み」のことを指し、長期的な視点に立って経営戦略と併せて検討・立案されることが多いです。この場合は「新製品を発売するための組織体制(事業部制の検討、責任部署の検討等)やプロジェクト発足」などが挙げられます。

まとめ

これまで4回に渡ってお伝えしてきました『マーケティング戦略体系図』、完成形は以下のようになります。

皆さんが日常的にご利用になっている商品・サービスのほとんどが、マーケティングによって情報収集・分析・戦略の決定を経て世に送り出されている、ということが少し実感できたでしょうか?マーケティング力上達のコツは「実際に自分でやってみる」ことです。例えば身近な商品・サービスを例に、ご自身で一度この『マーケティング戦略体系図』をぜひ作ってみてください。「なるほど、このような意図があったのか!」など、きっと新しい発見があると思います。最後までお読みくださりありがとうございました。

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