第1回 そもそも借用書ってどういうもの?
万が一に備える借用書の書き方ガイド
【第1回、第2回、第3回、第4回】
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「借用書」は金銭トラブルからの護身符
借用書。最近のニュースでも話題になりましたね。昨年、猪瀬直樹前東京都知事が、民間団体から5,000万円を受け取ったとされる件で、猪瀬前知事は「あくまで個人的に借りたお金であって献金ではない」と説明し、記者会見で自ら「借用書」を公開しました。その後、その内容が物議をかもすこととなり、結果として都知事の職を辞任することになったのは記憶に新しいところではないでしょうか。ここでは、そんな「借用書」とは一体どのようなものなのか、何のために作成するのかを理解することによって、金銭トラブルを避け、平和な人間関係を保っていくことを目指していきたいと思います。
お金の貸し借り、法律で見てみると?
こんなシーン、よくありませんか?――皆さんが職場の同僚と一緒に飲みに行きました。そして割り勘でお会計、となったものの、財布を開けてみるとお金が足りません。「悪いけどちょっと貸してくれる?」「いいよ」「給料日が来たら返すから」――。こういったお金の貸し借りを、法律では「金銭消費貸借」といいます。この金銭消費貸借はどうやって成立するかといいますと、法律では「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じものをもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」(民法第587条)と定めています。簡単にいいますと、お金のやり取りとお金を返す約束があれば成立するとしているのです。
借用書の作成は法律で定められたものではありません
お金の貸し借りをするときに、もし貸した人がきちんとした人の場合、借りた人に対して「借用書を書いてください」と言ってきます。そして、お金を借りた人は「平成○○年○○月○○日、○○○円確かに借りました。」といった一文と自分の名前を書き、はんこを押して貸した人に渡すわけです。しかし、先ほど民法の条文をみていただいたとおり、金銭消費貸借ではお金を借りた人が貸した人に対して借用書を書いて渡すことについて、法律では全く触れられていません。借用書は、法律で作成が義務付けられた書類ではないのです。にもかかわらず、なぜお金を貸す人は借りた人に借用書を書かせるのでしょうか。
何のために借用書はあるの?
ここで貸した側の本音を考えてみましょう。「お金を貸したのはいいけど、あの人はちゃんと返してくれるかどうか心配だからな…」。そうなのです。貸した人は確実に返してもらうアテにするために、借りた人に借用書を書かせているのです。お金は物と違ってそれぞれの色や形が違っていないため、財布の中でほかのお金とまぎれてしまうと、もうそれが借りたお金なのかどうかわかりません。なので借用書を書いてもらっていない状況で「お金を返してほしい」と言っても、借りたものが明確でないという理由から、万が一「お金なんか借りてないよ」と相手に言われてしまえば、貸し手は何も反論できません。そんな金銭トラブルを防ぐために、借用書は存在しているのです。では具体的にどんな書面にすれば良いのか、具体的な書式を見ながら次回以降で紐解いていきます。
ポイント①
そもそも法律ではお金の貸し借りをするにあたって借用書は要求していない
ポイント②
借用書がなければお金を貸したという証拠が存在しないことになる
ポイント③
借用書はお金を貸した人が返済を確保するためのものである
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<続く>
提供元:ドリームゲート