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第1回 正しい債権回収の基本

著者:東銀座綜合法律事務所 経営者弁護士  野村 雅弘


弁護士が伝授!正しい債権回収の方法第1回第2回第3回第4回

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債権回収は重要?

債権回収は企業にとってどの程度重要なのでしょうか。
売上が1億円の会社(利益率は5%)で100万円の債権未回収が発生した例を考えてみましょう。

確かに、売上から考えれば、未回収は1%にすぎません。
では、100万円失われた利益を、売上でカバーすると、どれだけ必要でしょうか。
この会社の利益率から考えると、100万円の利益を取り返すためには、100万円を5%で割った、2000万円必要となります。
つまり、売上全体を2割も増やさないと、この損失を埋められないほどの重要ということになります。

会社にとっては売上を増大することも重要ですが、これに負けず劣らず債権を未回収にしないことが重要だということがよくわかっていただけたかと思います。

債権回収の重要性から導かれる債権管理方法

重要性が認識できれば、普段から債権管理をなおざりにはできなくなります。

債権管理として好ましいのは、以下のようなものです。
【平常時】
取引の前に相手の信用を調査する。
契約書を作成し、できれば前払の取引を考え、難しければしかるべき担保を確保する。
債権管理の責任者(担当者)を決め、請求書を漏れなく発送し、支払いがあったのかを確認する。
【信用不安発生時】
支払いが無ければ再度の請求を書面や電話や直接交渉でしたり、債務者の現状を調査する。
いざとなれば担保を実行したり時効が成立しないように(売掛金の場合2年で消滅します。)訴訟等の対応を行う。

最悪の場合(債務者が破産する)を意識する

しかしながら、上記のような理想的な債権管理は、実務上そう容易いことではありません。実際に債権の未回収はよく起こるものです。そういった場合、どう対応するのがよいのでしょうか。

一言でいうと、債権回収の基本は、まず最悪のケースを意識することにあります。

債権回収における最悪のケースとは、もちろん、債務者が破産し、1円も回収ができなくなることをいいます。

これが意識できると、破産される前に回収するしかない(迅速な行動、情報収集)、破産されても回収できるようにする(担保の確保)、破産されるよりは少しでも回収した方が良い(柔軟な債権回収)という基本が導き出されます。

最後の手段とは

債権回収の基本としてもう一つ大事なことは最後の手段、つまり、訴訟を提起し、強制執行をするというケースを意識することです。この場合、概要以下の流れになります。

①主張・証拠を整理して準備する→②訴訟の提起→③審理(主張・立証)→④判決→⑤差押の準備(差押える財産の調査)→⑥強制執行の申立→⑦差押命令→⑧換価手続(競売)→⑨配当

実際には、①~④で約1年ほどの時間を要し、訴訟費用、弁護士費用が必要です。つまり、時間もコストもかかります。
参考までに弁護士費用の一例をご紹介します。
300万円の訴訟を弁護士に委任する場合、訴訟の着手金として24万円、報酬として48万円、強制執行の着手金として12万円、報酬として12万円の合計約100万円が必要です。

最後の手段を意識することによって導き出せる基本

以上のような最後の手段を意識すると、訴訟前の決着が好ましい(交渉・任意の支払いの優先)、訴訟をしないですむ方法は何か(担保の取得、公正証書の作成)、最後は訴訟(訴訟に耐えられる証拠を普段から確保する、契約書の作成、証拠書類の保管、経緯のまとめ)、訴訟後に強制執行ができなければ意味がない(財産の調査、保全措置による財産の確保)という基本が導き出されます。

今回のポイント

・債権回収の重要性を認識し、債権管理を徹底する
・最悪の場合(債務者が破産する)を意識し、迅速な行動、担保の確保、柔軟な対応をする
・最後の手段(訴訟後に執行)を意識し、任意の支払い、担保、公正証書、証拠を確保する

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著者プロフィール

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野村 雅弘

東銀座綜合法律事務所 経営者弁護士

早稲田大学、慶應義塾大学大学院法務研究科卒業後、司法試験合格。司法修習を経て、2009年1月から東銀座綜合法律事務所に入所。現在、同所経営者弁護士。主に中小企業法務、民事事件、家事事件等を取り扱う。

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