事業計画書の書き方(新規起業編)

第三章 小売業の場合
④【事業の見通し】

2013/3/22

経営企画室 株式会社
代表取締役/中小企業診断士

小林 隆

事業計画書の書き方(新規起業編)
第一章 第二章 第三章【1234】 第四章 第五章

事業の見通し

先生

それでは次に「事業の見通し」を見ていきましょう。「事業の見通し」とは、首尾よく店舗が出来上がり、お店の営業が始まったときの会社の「損益」がどのようになるか、表す項目です。どちらかというと、商売を始める時には、先ほどの資金のことより、こちらを先に考えたのではないでしょうか?

Aさん

確かにこちらの方が、なじみがあります。

先生

「事業の見通し」とは、「損益計画」のことです。「日本政策金融公庫」の場合ですと、売上から売上原価と諸経費を差し引いた、ごく簡単な「損益計算書」を月平均の形で表すことになります。

Aさん

会社に勤めているころは、主任でしたので、売上と粗利益(売上総利益)のことは考えていましたが、人件費を始めとした経費のことはあまり考えた経験がありませんでした。

先生

確かにそういう側面はあるかもしれません。しかし、常識的に考えて必要と思われるものを中心に項目出しして行けば、そんなに難しいことではありませんよ。

社長として会社の経営を行う場合、先ほどの「設備投資」も含め、いかに利用できる「資源」を効率よく活用して利益を生み出すか、を考えなくてはなりません。

その基本となるのが、事業の「損益」です。事業の「損益」とは、売上から商品の仕入コストである「売上原価」を差し引いて、そこからさらに「販売のための費用」や「会社を維持するための費用」を差し引いて、残額としての「利益」を計算するものにほかなりません。

Aさん

なるほど、そういってもらえると、なんとなくわかってきます。

先生

それぞれの数字はお金を表すわけですし、この「損益」から生まれてくる「利益」をもとに金融機関から借りたお金を返済するわけですから、どれくらい「売上」や「利益」を稼ぐ力があるかは、お金を貸し出す金融機関にとっては大きな関心事です。

難しく考える必要はありませんが、「開業当初」と事業が「軌道に乗った後」の2種類の「損益計画」を、きちんと裏付けのある数字として見積もって作成しなければなりません。

Aさん

わかりました。それでは、真剣に見積もって事業の近未来を予測してみたいと思います。

先生

まず売上高ですが、小売業の場合は、

売上高=(買い上げ)客数×客単価

で表すことができます。

したがって、売上高は、大体1日に何人のお客様が来店して、そのうち何パーセントが購入し、その一人のお客様の客単価はいくらかを想定すると、1日あたりの売上高が算出できます。それに月間営業日数を乗ずると、一月の売上が計算できることになります。

もちろん、衣料品小売業の場合、シーズンによって売上が大きく上下しますので、一概に月平均という考え方はなじまないかもしれませんが、目安としての月平均売上が求められればOKです。

「事業の見通し」を記入する場合、数字の根拠を示さなければなりませんから、基本的な客数×客単価、くらいは見積もりの根拠として記載するようにしましょう。

Aさん

わかりました。

先生

次に原価率(売上原価率)ですが、売上原価は、正式には、商品カテゴリーごとに、一定の計算方法に則って、算出するものですが、この事業計画書を作成するときには、業界の平均値や仕入先の仕切値、商品の販売価格設定の考え方、及びこれまでの経験を踏まえて、予定の原価率を設定してもかまいません。もちろん、なぜそのような数値としたかの根拠は、値入(値段の付け方)の考え方として記載しておきます。

Aさん

わかりました。できるだけ安価で仕入れて、適正価格でも高い利益率となるよう、にしたいと思います。プロパー(通常価格での販売)の「消化利率(仕入れた商品のうちどれくらいを、売り切るかの割合)」と 「損益分岐点」も考えながら、値付けしていきたいと思います。

先生

経費の項目は、「損益計算書」の「販売費及び一般管理費」に当たる項目です。「日本政策金融公庫」に提出する書式では、銀行などに払う、支払利息などもこの中に含めます。経費項目は、子供服の場合、春夏モノと秋冬モノで半年ごとに大きな商売の流れがありますね。したがって、通常かかる経費項目を半年又は1年単位で算出し、それを平均して一か月平均とするのが望ましいいですね。

Aさん

そうですね。クリアランス時期のように忙しい時には、アルバイトを頼むこともあるかもしれませんから、そうした経費も平均値の中に見込むということですね。

先生

その通りです。それでは、まず人件費を見てみましょう。人件費は、ご自分の役員報酬の他、従業員さんの給料にかかる経費のことです。

Aさん

そうですね。それでしたら、当面は私の報酬を月20万円、パートさんを2名使ってその一人あたり平均の人件費を8.5万円としようと思います。パートさんはご主人の給与の配偶者控除にひっかからないように、103万円以内で働こうとする傾向がありますから、だいたいそのくらいの水準だと思います。

事業が、軌道に乗った後は、私の報酬を33万円として、社員として従業員も1名採用し、パートさんも3名に増やしたいと思います。その際の社員の給料は22万円としたいと思います。なんとか1年間でこの水準まで引き上げないと、私個人の生活費がもちません。

先生

わかりました。基本的に考え方はそれでいいと思います。ただ、人件費を算出する場合、他の経費と異なり少し注意をしていただきたい点があります。それは、従業員を雇用した場合には、社会保険費用を会社で負担しなければならず、給与として払う額の約1.2~2割程度の金額を「法定福利費」として、余分に見積もっておく必要があるということです。

Aさん

いや~。これって雇われているときにはあまり意識していませんでしたが、結構大きな負担ですね~。

先生

そうなんです。給料日だって雇われていた時は、お金が入る日として喜んでいたと思いますが、経営者になると、給料日は会社からお金が出てゆく日ですから、大変なんですよ。

Aさん

確かにそのとおりですね。よ~し、私は従業員さんにたくさん払えるよう、頑張ろう!(笑)

先生

よい心がけです。それでは、その他の経費項目を見て行きます。代表的なのは、月々の「家賃」です。Aさんは物件が決まっていますが、決まっていない場合は、地域の相場で記載しておきましょう。

次に「広告宣伝費」を見積もります。広告費は、チラシ等の広告を、あらかじめ いつどれくらいの量を使用するか見積もり、計上しておきます。また、ホームページの製作費や、上位表示させるためのSEO対策費がひつような場合にはこれを予算化しておきます。

Aさん

私の店舗では、インターネット販売を併用する予定です。ですから、ホームページはある程度しっかり作ろうと思います。ただしそれは、リース契約で、月々の費用として支払う予定です。

先生

わかりました。それでは、その経費もしっかりと見積もっていおかないといけませんね。
 そのほかの経費として代表的なのが、減価償却費です。これは、店舗の内装等長い期間使用する会社の資産(減価償却資産)を一定の期間(税法等で定められた年数)に配分して、費用として計上する、その金額です。店舗の内装などは、長期に使用するのだから、購入した年だけに費用を多額に計上とするのでなく、長期間に渡って費用化しようという考え方です。

Aさん

それは、代金を最初の年に全部支払ったとしても、長期間にわたって費用にするのですか?

先生

その通りです。減価償却費というのは、売上を上げるために長期にわたって使用する資産を、その使用によって生じる価値の減少を反映させて、費用として計上しようという考え方ですから、代金の支払いが終わっていても、耐用年数というその資産を使い続けることができるとされる期間にわたって、費用として割り振って計上します。

Aさん

なんだか難しいけれど、とにかく購入した資産の価値が減った分を毎年費用とするのですね。

先生

そういうことです。経費はそのほかにも、「通信費」、「消耗品」、「水道光熱費」、「交際費」、「教育費」等いろいろな項目がありますが、目立って大きな項目がなければ、それらはまとめて「その他諸経費」といった項目を作ってまとめて計上します。

Aさん

なるほど、わかりました。

先生

経費項目は毎月ほぼ変わらない項目もありますが、月ごとやシーズンでずいぶん変わる項目もあります。そうした意味でも、先にお話した通り、6ケ月又は1年分の損益を作成してから月平均を作成すると、より精度の高い1月平均の「損益計画」を作ることができます。

Aさん

数字の計画ができると、だいぶリアリティがわいてきますね。

先生

そうですね。事業計画は金融機関から融資を受けるにあたって必要不可欠なものです。しかし、「金融機関に提出するために作る」のではなく、「自分の夢の設計図を作る」つもりで取り組むと、よりよい計画ができると思います。

今のワクワクした気持ちを表し、伸び伸びと構想を描き、数字でそれを裏付ける。それがポイントです。

わからない時には、いつでも連絡くださいね。頑張ってください。

⇒「事業の見通し」である「損益計画」は、には、かならず数値の裏付けとしての根拠を掲載します。
 Aさんの場合は以下のように見積もりました。

創業当初
①売上高: 店頭販売(約80%) 客単価0.8万円×10人×25日=200万円
ネット販売(約20%) 売価.0.6千円×3人×30日=54万円
②仕入高: 海外仕入 (原価率50%、シェア 70%) 75万円
国内仕入 (原価率65%、シェア 30%) 42万円
③人件費: 役員報酬 20万円、パート8.5万円×2、(社保4万円)
④家賃15万円
⑤支払利息: (利率2.5%、借入額1000万円)2万円
⑥その他の経費: 広告費10万円、交通費2万円、交際費1万円、運賃7万円、
通信費5万円、水道光熱費5万円、その他5万円
軌道に乗った後
①売上高: 店頭販売(約80%) 客単価0.8万円×15人×25日=300万円
ネット販売(約20%) 売価.0.8千円×5人×30日=120万円
②仕入高: 海外仕入 (原価率50%、シェア 70%) 147万円
国内仕入 (原価率65%、シェア 30%) 82万円
③人件費: 役員報酬 33万円、社員22万円、パート8.5万円×3、(社保11万円)
④家賃15万円
⑤支払利息: (利率2.5%、借入額1000万円)2万円
⑥その他の経費: 広告費15万円、交通費3万円、交際費2万円、運賃12万円、
通信費12万円、水道光熱費5万円、その他15万円

⇒売上が確約されている「受注書」「契約書」等の証拠資料(エビデンスといいます)があれば添付します。

提供元:士業ねっと

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