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事業計画書の書き方(新規起業編)
第三章 小売業の場合
②【取扱商品・サービスと取引先・取引条件】2013/3/22
経営企画室 株式会社
代表取締役/中小企業診断士
小林 隆

事業計画書の書き方(新規起業編)
第一章 第二章 第三章【1、2、3、4】 第四章 第五章
取扱商品・サービスの内容
小売業は、お客様の必要としている商品を、品揃えして、お客様が入手しやすいように便宜を図るのが仕事ですから、この「取扱商品・サービス」の項目は大変重要です。
そうですね。そもそも、私が創業を思い立ったのも、自分の子供に着せたいと思う、センスが良くてリーズナブルな子供フォーマルウエアがない、ということが発端でしたから、原則として自分が欲しいいと思う洋服以外は、揃えないつもりです。
その点、創業しようと思い立ってから、アメリカの会社をインターネットで発見し、そこから商品を仕入れることができるようになったのは、大きいと思います。
そうですね、その通りですね。「小売業」は基本的に商品を売るお店ですから、なんと言っても商品の「良し悪し」が最も重要になります。必要とされる商品が、適正な価格で提供されているか、そこに勝負の分かれ目があるといっても、過言ではありません。
その上で、当店が他店とどう違うのか、「店舗コンセプト」をどのように具体化するのか、「売り方」、「サービス」等で他店との違いを明らかにしてゆく必要があります。
具体的には、商品を「カテゴリー」ごとにくくり、どんな商品をどのような価格帯で販売するのかを記載します。
なるほど、ここで品揃えの幅と深さを決めて、記載するのですね表現するのですね。
さすがはもと売場主任。飲み込みがはやいですね~。
ここでは扱い商品がわかるとともに、特に主張したいセールスポイントについて、解りやすく書かれていることが必要になります。
Aさんの場合は、他の子供服店とは異なる「輸入子供服が安価で手に入る点」が最大のセールスポイントですね。
先生のおっしゃる通りです。それに加えて、子供服のセレクトショップの名に恥じないような、「日用品」や「雑貨」、「ギフト商品」なども、揃えたいと考えています。
いや~。何か、かわいい子供服と、ちょっとおしゃれな子供雑貨やギフトがそろったところが目に浮かびますね!きっと、見ているだけでも楽しいお店になるのでしょうね~。
⇒ 取扱商品は、売上のメインとなる商品カテゴリーを、売上構成比(売上シェア)順に書きます。主力商品が何で、何によって差別化を図るのかがわかるように記載します。
売場を作成するときには、最終的には「マーチャンダイジング・リスト(品揃えリスト)」を作成したほうがよいのですが、「事業計画」作成し、説明する段階では、アイテムごとに代表的な商品やスタイリングの写真などがあるとわかりやすいでしょう。
⇒店舗のセールスポイントは、品揃えの差別化ポイントを簡潔に記載します。他社と比べ何がよいのか、わかるように記載してください。
また、特徴的な「売り方」や、「サービス」がある場合は、それによってどのような利便性がお客様にもたらされるのかわかるように、合わせてセールスポイントの項目に記載します。
⇒売場レイアウト
店舗が決まっているのであれば、売場の大まかなゾーニング(配置)を示すレイアウト図を作成します。
特に店舗の内装・外装の「設備資金」を借りる場合には、どのような売場を作ろうとしていて、何にいくらかかるのか、伝える必要があります。最終的には、施工等を受け持つ業者が設計図を作成することになりますが、その前段となる大まかな売場構想を、レイアウト図として作成しておくと、どのような店舗でどのように売ろうとしているのか相手に伝えるのに役立ちます。
取引先・取引条件等
次に取引先と取引条件を記載します。「小売業」の場合は「取引先」といっても、B to Cのビジネスですから、「一般個人」が「顧客」としての対象になります。
小売業では「顧客」を、「年齢」、「性別」、「所得」はもとより、「ライフ スタイル」や「趣味嗜好」によって細かく分類し、自店の「顧客を明確化」します。
その上で、どのような「顧客」が自店の「お客様」なのか、踏み込んで記載します。どんなお客様が、どんな生活の中で来店し、何をどのように買って行ってくれるかイメージができなければなりません。
そして、そうしたお客様が、店舗の商圏に十分いなければ、小売業として事業を成立さえることが難しくなります。
「事業計画」を読む金融機関でも同様、想定される「顧客」がわかれば、その商圏にどれくらい対象となるお客様がいるのか、想定し、売上目標等の妥当性を測ったりします。
書類を読む方は、そういう見方をするのですか。
小さな欄ですが、この欄を記載することは、自分たちにとっても、その商圏で十分 店舗を維持するだけのお客様が存在するか、考え直すチャンスともいえるのですよ。
そういう意味では、「自分たちのお客様は誰かと」という、商売を行う上での基本が意識されていなければならないのですね。
その通りです。一方、「仕入先」の欄は、文字通り、商品の主要仕入先を記載する欄です。この欄も小さな欄ですが、実は小売業を行う上では、大変重要な項目です。
そうなんですか?欄が小さいから、あまり重要ではないのかと思っていました。
この欄は、いくつかの意味で重要です。まず、この会社が大事な商品を安定的に確保することができるかという意味で、どのような会社が主要仕入先となっているかは、大変 重要です。主要仕入先と良好な関係を築き、売れ筋商品が欠品することなく、安定的に供給されてこそ、小売店は売上を上げることがでるからです。
その一方で売場では、常にお客様の関心を喚起するための新しい商品を用意する必要があります。そうなれば、お客様も時々、新しい商品や情報を求めて、お店に立ち寄ってくれるようになります。そのためには、常に新しい商品と「仕入先」を探す努力が必要になります。
確かにそうですね。お客様は、「こだわり」と「情熱」をもって探してきた商品には敏感に反応します。今でこそインターネットがありますから、便利になりましたが、新しい商品や仕入先は、足を使って探すしかありません。大変ですが、疎かにできない部分です。
わかっていらっしゃいますね。この欄の記載でもうひとつ忘れてはならないのが、販売した商品代金の「回収条件」と仕入商品の「支払条件」です。小売業の場合は、カードでの決済でない限り、基本的には現金での回収ですから、あまり売上代金の回収条件は、気にすることはないでしょう。
その一方、仕入代金の支払い条件は、資金繰りに大きく影響してきます。
そもそも、仕入代金の支払いは、支払い条件とともに、商品の仕入れ方によっても異なります。例えば、食料品のような日常品を扱うお店、衣料品のような買い回り品というわれる商品を扱うお店、趣味の店のような専門品を扱うお店など、取扱商品の品目や商慣行によって異なるところになります。
ちなみに、シーズンごとに商品が変わる衣料品のような商品は、季節の始めに大量の仕入資金が必要になります。
そうですね。私の扱う子供服でも通常2月と8月は、次いで5月と10月は、次のシーズンの商品が大量に入ってくるので、そのあとの支払いは膨らむことが予測できます。
そうですね。ですから、どれくらい、仕入代金の決済までに猶予があるのか、お金を貸す方の金融機関としては、きちんと把握をしておかなければならないところなのです。もちろん、経営者であるAさんも資金が足りなくならないように、資金の状態が見えるように管理することが必要です。
Aさんも、以前に売場主任をやっていても、このあたりの仕入代金の支払いは、仕入伝票を経理に回すだけで、実際の取引先への支払いは、会社の経理がまとめてやっていたので、あまり経験がない部分かもしれせん。
そうです。その通りです。なんだか、経営者として自信がなくなってきました。
心配ありませんよ。「資金繰表」という現金の流れを、記録したり予測したりする表を作って管理すれば、恐れることはありません。
ただ、慣れるまでは専門家に教えてもらった方がよいかもしれませんね。
⇒販売先
Aさんの場合、店頭販売に加え、インターネット販売を行います。したがって、販売先にもそうしたカテゴリーを設けました。
また、一般的に子供用品の買物資金の提供者について、「子供は6つのポケット(父、母、父方・母方の両祖父母)を持っている」と言われています。したがて、祝いの席や晴れの席で子供が着るフォーマルウエアの資金提供者も、ご両親だけでなく、祖父母様というケースが考えられます。
したがって、販売先として主要顧客に加え、インターネット販売の顧客としての主婦と祖父母を想定しています。
なお合わせて、各顧客のシェアと掛取引(クレジットカード使用)の割合を記載してきます。
⇒仕入先
Aさんの最大の特徴は、アメリカの業者からの商品調達が可能である点です。この商品供給ルートによって、他社との大きな差別化が図られることとなります。
主な仕入先だけ記載し、細かな仕入れ先は、その他としてまとめます。
なお、仕入シェアと支払い条件を合わせて記載します。
⇒外注先
ジャケットの袖口や、パンツの裾直し等の衣料品の「お直し」「修理」等を行う外注先を提携しました。
提供元:士業ねっと