コロナ禍で注目される人材確保等支援助成金
「テレワークコース」

2021/09/02

新型コロナ助成金

人材確保等支援助成金「テレワークコース」を解説

働き方改革の一環として、コロナ前より推進されていたテレワーク。とはいえ、それほど関心は高くない状況でした。しかし、コロナ禍において一気に状況が変わりました。一般的な働き方として社会に定着したかどうかの判断はまだ早いでしょうが、柔軟な働き方のひとつとして認識されつつあるのではないでしょうか。

国では引き続きテレワークの推進に取り組んでいます。令和3年度においては、人材確保等支援助成金「テレワークコース」を創設して導入を支援しており、助成額は最大200万円。今回は、人材確保等支援助成金「テレワークコース」をご紹介します。

●テレワークへの取り組み状況は?

日本生産性本部が4月に発表した「新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響の継続調査」によると、令和3年4月のテレワーク実施率は19.2%となっています。同調査では「企業にできる感染防止策は、人の移動・接触をできるだけ少なくすることであり、そのためには、やはりテレワークの推進が必要であろう」としていますが、人々のコロナ慣れもあり、テレワークが大きく普及しているとはいえません。

【テレワークの実施率】

令和2年5月 令和2年7月 令和2年10月 令和3年1月 令和3年4月
31.5% 20.2% 18.9% 22.0% 19.2%

(参考:日本生産性本部「新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響の継続調査」)

ただし、東京都に限ると、ある程度取り組みが進んでいる状況がみて取れます。東京都産業労働局「テレワーク実施率調査結果」によると、今年4月の都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は56.6%となりました。3月後半調査(56.4%)に比べて0.2ポイントの上昇です。昨年4月に62.7%となった実施率は徐々に低下していましたが、今年1月からの緊急事態宣言期間をみてみると60%前後で推移しています。令和2年3月の実施率は24.0%ですから、東京都においては取り組みが進んでいるといえそうです。

●人材確保等支援助成金「テレワークコース」の概要

新型コロナウイルス感染症への対応として、一時的にテレワークに取り組んだ企業も多かったと思われます。しかし、テレワークには労働者の多様で柔軟な働き方を実現するという役割もあります。人材確保等支援助成金「テレワークコース」は、「良質なテレワークを新規導入・実施することにより、労働者の人材確保や雇用管理改善等の観点から効果をあげた企業」を支援するものです。働き方改革に積極的な企業を支援する助成金だといえるでしょう。

【助成金の概要】

企業がテレワーク勤務を新規に導入することを目的として、テレワーク用通信機器の導入・運用、就業規則等の作成・変更等を実施し、テレワーク勤務を適切に導入・実施した場合や、テレワーク勤務の導入後も引き続きテレワーク勤務を実施し、従業員の離職率の低下について効果をあげた場合に支給される

●助成対象と申請の流れ

助成対象は、「機器等導入助成」と「目標達成助成」に分かれており、支給額は次の通りです。

機器等導入助成 目標達成助成
支給対象経費の30%
※以下のいずれか低い方の金額が上限
  • 100万円
  • 対象労働者数 × 20万円
支給対象経費の20%
<生産性要件を満たす場合35%>
※以下のいずれか低い方の金額が上限
  • 100万円
  • 対象労働者 × 20万円

申請のおおまかな流れをみてみましょう。

テレワーク実施計画の作成・提出 → 労働局の認定
  • 認定を受けたテレワーク実施計画に基づき、テレワークを可能とする取り組みを実施
  • 評価期間(機器等導入助成)においてテレワークを実施
機器等導入助成に係る支給申請 → 支給対象経費の30%の支給
評価期間(目標達成助成)においてテレワークを実施
目標達成助成に係る支給申請 → 支給対象経費の20%(35%)の支給

「評価期間(機器等導入助成)」とは、テレワーク実施計画の認定日から起算して6か月が経過する日までの期間内において、任意に設定した連続の3か月間をいい、「評価期間(目標達成助成)」とは、評価期間(機器等導入助成)の初日から1年を経過した日から起算した3か月間をいいます。

●機器等導入助成とは

機器等導入助成の支給要件は次の通りです。

  • 新たに、テレワークに関する制度を規定した労働協約または就業規則を整備すること
  • テレワーク実施計画認定日以降、機器等導入助成の支給申請日までに、助成対象となる取り組みを1つ以上行うこと
  • 評価期間(機器等導入助成)における、テレワークに取り組む者として事業主が指定した対象労働者のテレワーク実績が、次のいずれかを満たすこと
    • ア 評価期間(機器等導入助成)に1回以上対象労働者全員がテレワークを実施する
    • イ 評価期間(機器等導入助成)に対象労働者がテレワークを実施した回数の週平均を1回以上とする

助成対象となる取り組みは次の5つであり、それぞれ上限額が決められています。

  • テレワーク用通信機器の導入・運用
    • ネットワーク機器(15万円)
    • サーバ機器(50万円)
    • NAS機器(10万円)
    • セキュリティ機器(30万円) 等
  • 労務管理担当者に対する研修(10万円)
  • 労働者に対する研修(10万円)
  • 外部専門家によるコンサルティング(30万円)
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更(10万円)

機器等導入助成の注意点をいくつかみてみます。

助成金(機器等導入助成)の支給対象となる経費の範囲は要綱に細かく定められており、定めのないものについては原則として支給対象とはなりません。PC、タブレット、スマートフォンの購入費用やレンタル費用については支給対象外ですから、特に注意してください。

外部専門家によるコンサルティングに取り組む場合、専門家への謝金や旅費などが対象となりますが、労務管理に係る内容のコンサルティングであれば、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(令和3年3月25日厚生労働省)を踏まえたものでなければ支給対象とはなりません。また、労働者に対し研修を行う専門家への謝礼等の場合も同様、ガイドラインを踏まえた内容であることが必要です。

就業規則等に関しては、テレワークの定義、テレワーク勤務の対象者の範囲、テレワーク勤務を行う際の手続き、テレワーク勤務を行う際の留意事項に関する規定が必要です。また、テレワーク勤務の対象者やテレワークを実施した労働者に適用する労働時間、人事評価、人材育成、費用負担、手当に関する取り扱いが、その他の労働者に適用する取り扱いと異なる場合には、その取り扱いに関する規定も設けてください。厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」や、「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」が参考になると思われます。

●目標達成助成とは

目標達成助成の支給要件は次の通りです。

  • 評価期間後1年間の離職率が、計画提出前1年間の離職率以下であること
  • 評価期間後1年間の離職率が30%以下であること
  • 評価期間(目標達成助成)に、1回以上テレワークを実施した労働者数が、評価期間(機器等導入助成)初日から1年を経過した日における事業所の労働者数に、計画認定時点における事業所の労働者全体に占める対象労働者の割合を掛け合わせた人数以上であること

目標達成助成では、離職率を低下させることが求められています。テレワークの導入により、働き方に制約がある方でも離職せずに働き続けることができる環境が整えば離職率も下がり、より多様で柔軟な働き方が広がるのではないでしょうか。

コロナ禍において一気に注目されたテレワーク。感染防止対策として、人との接触を避けるという側面ばかりが強調されているきらいがありますが、テレワークは本来、労働者の多様で柔軟な働き方の実現を支援するものです。先にみた日本生産性本部「新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響の継続調査」のまとめには、「テレワークを実践した雇用者は、新しい働き方や生活様式への変化の可能性を肯定する傾向が強い」とあります。アフターコロナ時代には、新しい働き方として、テレワークへの関心がさらに高まるかもしれません。テレワークを推進するため、国の支援も続きます。テレワークの導入を含め、より働きやすい職場環境の実現に向け、自社の環境を一度見直してみてはいかがでしょうか。

※ 本内容は、令和3年5月27日現在、厚生労働省より公表されている情報に基づいております。申請にあたっての詳細は、管轄の都道府県労働局等に確認をお願いいたします。

新型コロナ対策関連書式

  • 著者プロフィール
角村俊一

明治大学法学部卒業。地方公務員(杉並区役所)を経て独立開業。
「埼玉働き方改革推進支援センター」アドバイザー(2018年度)、「介護労働者雇用管理責任者講習」講師(2018年度/17年度)、「介護分野における人材確保のための雇用管理改善推進事業」サポーター(2017年度)。
社会保険労務士、行政書士、1級FP技能士、CFP、介護福祉経営士、介護職員初任者研修(ヘルパー2級)、福祉用具専門相談員、健康管理士、終活カウンセラー、海洋散骨アドバイザーなど20個以上の資格を持ち、誰もが安心して暮らせる超高齢社会の実現に向け活動している。

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