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ものづくり補助金 採択率を向上させる秘訣とは

著者: 中小企業診断士  牧野 孝治

目まぐるしく変わる外部環境に適応する新規事業を始めるために、サービスや設備導入に多額の費用がかかります。その負担を軽減するために、補助金の活用を検討される方も多いことでしょう。

なかでも、ものづくり補助金【正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金】の補助上限は、一般型が最大1,000万円、グローバル展開型の場合は最大3,000万円と大きな金額となっています。これを活用しない手はないでしょう。

そんなものづくり補助金ですが、採択率は令和2年3次締切では「38.1%」と極めて低い状況となっています。

ただし、ものづくり補助金の申請には事業計画書の作成が必要になり、多くの労力と時間が必要です。

事業計画書作成にかかる時間は、統計によると約65~70時間が必要と示されています。せっかく苦労して作成した事業計画書が、あっけなく落とされてしまうと、本当に悲しい気持ちになりますし、何より今後の事業計画にも影響が出ますよね。

そこで今回は、採択される可能性を高める秘訣を解説します。ズバリ「加点項目数をいかにして増やすか!?」です。

※注意事項:本記事の内容は2021年5月13日時点の「ものづくり補助金公募要領」に基づき作成しております。


ものづくり補助金採択率を向上させる秘訣とは

1.ものづくり補助金の採択率を上げるためには

ものづくり補助金では、申請方法の間違いや必要な書類が添付されていないといった最低限(足切りライン)の不採択理由を除くと、事業計画書の内容が評価されていないことが不採択の大きな要因となります。そのため、採択されるために大きく以下2点が求められます。

①審査項目に沿った内容を記載し、高い評価を得ること。
②審査項目の基準を満たした上で、加点項目をできる限り増やすこと。

審査項目に沿った内容を記載し、きちんと計画書が作成されていたとしても、よほど革新的な事業計画ではない限り100%採択されるとは限りません。
なぜなら、明確な合格ラインが無く、他の申請者の事業計画書と比較され、より高い評価を受けた事業計画書が採択されるからです。
年々、全体の事業計画書レベルが高まっており、しっかりとした事業計画書を作成しても、採択されづらい状況となっています。
そのようななかで重要になるのが、加点項目をいかに増やして他の事業計画書と差をつけるかが鍵となります。

2.採択率向上には加点項目数を上げること

ものづくり補助金において、加点項目数と採択率については以下の表をご確認ください。

【加点項目数と採択率について】

【加点項目数と採択率について】

参照:「ものづくり公式事業ホームページ

上の表を見て頂くと一目瞭然ですが、加点項目が無い場合の採択率が14.5%であるのに対し、加点項目を5点すべて満たすと84.6%まで採択率が向上します。
3個以上の加点項目を目標としたいところですが、なかなか難しいのが現実です。せめて最低限2個は確保できるようにしましょう。
0個→2個に増やすだけでも、採択率は14.5%→39.7%と3倍近くまで増加しますので、ぜひ実施していきましょう。

3.加点項目の種類とねらい目について

それでは、ものづくり補助金の加点項目について確認していきましょう。
全部で加点項目数は5項目あるのですが、ズバリねらい目としては「③災害等加点」と「④-1賃上げ加点等」です。この2点は最低限実施することが可能ですので、必ず盛り込むようにしましょう。

【加点項目の種類と内容について】

項目 内容
①成長性加点 有効な期間の経営革新計画の承認を取得した(取得予定の)事業者
②政策加点 創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)
③災害等加点 有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した(取得予定の)事業者
④-1賃上げ加点等 「事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者」又は「事業計画期間において、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者」
④-2賃上げ加点等 被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合

“ものづくり補助金の公募要領より抜粋し表を独自で作成”

①成長性加点:経営革新計画について

経営革新計画とは、中小企業等経営強化法に基づき事業者が新事業活動に取り組むことで「経営の相当程度の向上」を図ることを目的に策定する中期的な経営計画のことです。
ちなみにこの経営革新計画が認定されるとものづくり補助金の加点になるだけでなく、保証や融資で優遇措置や、販路開拓の支援措置など他にも多くの支援策を享受することができます。
ただし、経営革新計画は都道府県によって差はありますが、基本的には、非常に難易度が高く労力も必要です。作成期間として1カ月は見込んでおいたほうが良いでしょう。
そのため、経営革新計画のメリットである支援策の活用を検討していない限りは無しでも良いと考えます。
ただし、ものづくり補助金と経営革新計画は内容が似ている部分も多いので余力があれば対応したいところです。

②政策加点:創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)であること

これに関しては、創業5年以上が経過している場合はどうすることもできません。5年以内であればもれなく加点されますので「ラッキー!」と考えましょう。

③災害等加点:事業継続力強化計画について

事業継続力強化計画は、ものづくり補助金の加点項目では必ず申請したい項目です。
「中小企業が行う防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が認定」し「認定を受けた中小企業は、税制優遇や補助金の加点などの支援策を活用が可能」という制度です。

この事業継続力強化計画も、認定されるまでに申請書類の作成が必要となりますが、①の成長性加点:経営革新計画と比較すると天と地の差があります。そのため加点項目としては必須で申請をしておきたい項目です。
ただし、地域によっては申請書類が認可されるまでの難易度にバラツキがありますので、ご留意ください。
また、事業継続力強化計画は、ものづくり補助金の申請時までに認定されている必要は無く、ものづくり補助金の申請後に認可されれば問題ありません。申請ができていればOKとなりますので、とにかくまず申請を行いましょう。
また、事業継続力強化計画は以下のメリットもあります。

  • ✓低利融資、信用保証枠の拡大等の金融支援
  • ✓防災・減災設備に対する税制優遇措置
  • ✓補助金(ものづくり補助金等)の優先採択
  • ✓連携をいただける企業や地方自治体等からの支援措置

④-1賃上げ加点等

賃上げ加点については、上の表の通り2段階で評価され「事業計画期間において、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者」の方がより高い加点を得ることができます。

※なお、賃上げについて以下2点は必ず達成する必要があります。この2点が未達成となると達成状況に応じて補助金を返還しなければいけません。

  • ✓事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加。
    (被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
  • ✓事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする。

④-2賃上げ加点等(被用者保険の適用拡大)

被用者保険の適用拡大ですが、事業者によっては保険料の費用負担が大きく経営に与える影響が強いため、ものづくり補助金の加点のためだけに実施することは比較的ハードルが高いのではないでしょうか。
経営への影響を検討し、可能であれば実施しましょう。

4.まとめ

ものづくり補助金において、100%採択される事業計画を盛り込んだ申請書類を作成することは極めて難しいですが、加点項目をうまく活用することで他の申請者と差をつけ、採択率を向上させましょう。
また、ものづくり補助金は、仮に不採択となったとしても、何度でも再申請を行うことができます。そのため、申請が行き詰った場合には、より難易度の高い加点項目にチャレンジし、加点を追加し再申請することもひとつの手段です。
加点項目をうまく活用して補助金を獲得し、今後の事業活動をより良いものにしていただければ幸いです。

執筆の参考にしたサイト

「ものづくり補助金7次締め切り公募要領」
ものづくり補助金総合サイト

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著者プロフィール

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牧野 孝治

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1992年生まれ,京都府京都市出身。
2018年中小企業診断士登録
商社営業を経て、現在は経営コンサルタントとして活動中。
得意分野は、顧客目線で展開するマーケティング施策、低コストでITを活用しコスト削減と売上拡大、従業員のモチベーション向上施策立案、M&Aなど。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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