産業保健活動に関する助成金を得て従業員の健康増進につなげよう!

2020/11/11

著者:本山社会保険労務士事務所 所長 本山恭子
補助金・助成金

従業員の健康増進につなげましょう

産業保健という言葉を聞いたことがありますか?あまり馴染みがないかもしれません。
しかし、働く人にとって重要なものだったりします。年1回の健康診断やメンタルヘルスに関することなどが一例です。健康診断は労働安全衛生法にて年1回の定期的実施が義務付けられ、他にも雇入時や特殊業務従事者の健康診断などが定められています。

もちろん、法に定められた範囲の実施でも問題ありませんが、法の定め以上の対策を講じた場合や、法的義務はないけれど実行に移した場合などに支給される助成金があります。
当該助成金は独立行政法人労働者健康安全機構が取り扱っています。

いくつか令和2年9月の段階で取り扱われている助成金があります。今回は、「心の健康づくり計画助成金」「ストレスチェック助成金」「副業・兼業労働者の健康診断助成金」の3つを取り上げます。

【1】心の健康づくり計画助成金

平成18年に労働者の心の健康の保持増進のための指針が出されてから、既に何年も経過していますが、メンタルヘルスの問題を抱えている事業場は増えても減ることはない現状があります。少しでもメンタルヘルス対策に取り組む事業場を増やしていこうとの趣旨のもとにある助成金です。

事業者が各都道府県にある産業保健総合支援センターのメンタルヘルス対策促進員の助言・支援を受けて、「心の健康づくり計画」を作成し、計画を踏まえてメンタルヘルス対策を実施した場合に助成されます。

なお、本社または本社機能を持つ事業場(個人事業主については、開業届が出されている事業場)のみ対象です。

助成金を受けるための取組要件

次の(1)~(4)の全ての取組を実施した場合に助成されます。

  • (1)各都道府県にある産業保健総合支援センターのメンタルヘルス対策促進員の訪問を受け、助言・支援に基づき、令和元年度以降新に「心の健康づくり計画」を作成したこと
  • (2)作成した「心の健康づくり計画」を労働者に周知していること
  • (3)「心の健康づくり計画」に基づき具体的なメンタルヘルス対策を実施していること
  • (4)メンタルヘルス対策促進員から、「心の健康づくり計画」に基づき具体的なメンタルヘルス対策が実施されたことの確認を受けていること

助成額

100,000円(一法人又は一個人事業主当たり、1回限り)

手続きの流れ

支援申し込みをし訪問を受ける
  • メンタルヘルス対策促進員の訪問支援の申し込み
  • 促進員より「心の健康づくり計画」の作成にかかる助言・支援を受ける
計画の作成・周知
  • 助言支援に基づき「心の健康づくり計画」を作成。完成までに再度促進員の訪問を受けることも可能
  • 完成した「心の健康づくり計画」を労働者に周知
計画の実施
  • 「心の健康づくり計画」に盛り込んだ「年次目標」に掲げた取り組み目標の中から少なくとも1つに取り組む
  • 取り組んだ事柄、内容が客観的に分かるように資料を残す
促進員による確認
  • 再度メンタルヘルス対策促進員の訪問を受け、心の健康づくり計画に基づき具体的な対策が実施されたことの確認を受ける
支給申請
  • 必要な書類を揃えて、労働者健康安全機構に申請書類を提出

具体的な取り組みとは

心の健康づくり計画に、中長期である数年の目標と、それに基づく年次目標の作成が求められます。メンタルヘルス対策促進員の確認を受ける具体的取り組みは「年次目標」に掲げた事項です。どのようなことを目標とするか基準など特にありませんので、それぞれの法人の実情に合わせてできることで構わないとされています。

例えば、まだ相談窓口がない法人であれば相談窓口を作ると目標を掲げ、相談窓口、担当者を明確にして従業員に周知するということもできます。しかし、ただ作るだけではなく、どうしたら申し出し易いか、従業員のためにも会社のためにもなる窓口になるか等を考えて作ると、よりよいものになるのは言うまでもありません。

当該助成金は、相談できる人がいる珍しい助成金です。実態を話して少しでもよりよい職場環境に繋げられる取り組みにしていきましょう。

【2】ストレスチェック助成金

平成27年12月から常時使用する労働者(派遣労働者含む)が50人以上の企業には年1回のストレスチェック実施が義務付けられています。50人未満の事業場については現在は義務ではなく、実施していないところが殆どかもしれません。そのような未実施の事業場がストレスチェックを実施し、医師からストレスチェック後の面接指導等の活動の提供を受けた場合に、費用の一部の助成が受けられるものです。

助成金を受けるための取組要件

助成の対象となる取り組みは次の2つです。助成を受けるためには取組実績の有無にかかわらず、次の①~③の「取組の要件」を満たさなければなりません。

対象となる取組 取組の要件
(1)ストレスチェックの実施 ① ストレスチェックの実施者が決まっていること
(2)ストレスチェックにかかる医師による活動
(ストレスチェック後の面接指導の実施、面接指導の結果について事業主に意見陳述をすること)
② 事業者が医師と契約を締結し、「ストレスチェックにかかる医師による活動」の全部又は一部を行わせる体制が整備されていること(*1)
③ ストレスチェック実施及び面接指導等を行う者は、自社の使用者・労働者以外の者であること

(*1)契約には次の事項が記載されていなければなりません。

  • ストレスチェック後の面接指導等を実施すること
  • ストレスチェックにかかる医師による活動1回あたりの金額が明記されていること
  • 実施医師の氏名が明記されていること
  • 申請事業場が契約を締結していること。本社等が管轄事業場の契約をまとめて締結している場合は、申請事業場が契約対象事業場として明記されていること

助成対象及び助成額

助成対象 助成額
(1)ストレスチェックの実施
実施人数分(年1回)
1従業員につき上限500円(税込)とした実費額
(2)ストレスチェックにかかる医師による活動
実施回数分(上限3回)
1事業場あたり1回の活動につき上限21,500円(税込)とした実費額

【3】副業・兼業労働者の健康診断助成金

令和2年度から新しく設けられたのが当該「副業・兼業労働者の健康診断助成金」です。事業主には少なくとも年1回の従業員の健康診断が義務付けられていますが、これは正社員の3/4以上の所定労働時間の人に対してです。それよりも短い所定労働時間の人に対しては義務付けられていないことから、未実施の事業場が多いのではないでしょうか。

この助成金は、副業・兼業労働者については所定労働時間が短いことが多く、健康診断が実施されないことが考えられるため、その方々に対して一般健康診断を実施した場合に事業者に対し費用の一部を助成するものです。

助成金を受けるための取組要件

次の(1)及び(2)の要件を満たしていることが必要です。

  • (1)次の両方の要件を満たす副業・兼業労働者に対して一般健康診断を実施している、または自発的に一般健康診断を受診した労働者に対して健康診断の費用を負担していること
    • ① 40歳未満の労働者(一般健康診断を実施する日の属する年度に40歳の誕生日を迎える労働者を除く)
    • ② 本業や副業を問わず、雇用されているすべての事業場において1週間の労働時間数が当該事業場における同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満の労働者
  • (2)自社の使用者や労働者以外の者が一般健康診断の実施等をしていること

助成対象及び助成額

助成対象:一般健康診断
助成金額:1副業・兼業労働者当たり1回限り、10,000円を上限とした実費
(1事業場あたり100,000円上限とした実費)

政府も副業・兼業を推奨しています。しかし、労働時間管理は労働者本人からの申し出によると言われているため、長時間労働につながる恐れがあります。副業・兼業労働者の安全に配慮しなければならないケースも多いと思われます。この助成金を活用し、兼業・副業者にも健康等についての意識を持ってもらうとともに、会社としてできることに繋げていただけたらと思います。

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  • 著者プロフィール
本山恭子

本山恭子

本山社会保険労務士事務所 所長

特定社会保険労務士、行政書士、公認心理師、産業カウンセラー、消費生活アドバイザー
ストレスが多く、事業運営もグローバル化の中厳しく、企業、労働者共に大変な今、少しでも働きやすい環境を作るお手伝いをすることを通して、企業、労働者の皆様のお手伝いを精一杯してまいります。法律だけの四角四面でない、気持ちを汲んだサポートを心掛けています。

【事業内容】
「働く」社会で一番大切な「人」にまつわる事柄へのお手伝いをいたします。労働基準法、社会・労働保険に関する相談から、メンタルヘルス対策、コミュニケーション、社内活性化など以下の通りです。企業、個人いずれからのご相談も可能です。
労務相談、メンタルヘルス対策、就業規則作成・変更、採用に関する相談・指導、助成金申請に関する相談・指導、労働・社会保険各種手続、相談・指導、年金相談・手続、個別労働紛争代理業務(企業、個人)、個人相談、他士業との連携による創業支援、ワンストップサービス