助成金を活用して介護現場の労働環境改善を!

2020/10/12

新型コロナ助成金

介護現場の労働環境改善

介護業界は、常に人手不足で悩んでいます。コロナ過で有効求人倍率は低下を続け、6月には全体で1.11倍となりましたが、職業別にみてみると、「介護サービスの職業」は4.04倍。依然、高い水準にあるといえます。

人手不足を解消するには、採用の強化と人材の定着が重要です。身体的負担の大きい労働環境を改善し、介護人材を確保していかなければなりません。そこで活用したいのが人材確保等支援助成金の「介護福祉機器助成コース」。

介護事業主が介護福祉機器の導入等を通じて労働環境の改善を図り、離職率を低下させた場合に助成される制度です。今回は、人材確保等支援助成金の「介護福祉機器助成コース」をご紹介します。

人手不足感と離職率

介護労働安定センター「令和元年度介護労働実態調査」から介護現場の人手不足感をみてみると、全体で65.3%となっています(「大いに不足」+「不足」+「やや不足」)。職種別では特に訪問介護員の不足感が著しく高くなっており、平成28年度以降80%を超える高水準で不足感が推移しています。

次に、訪問介護員と介護職員(2職種合計)の採用率と離職率をみてみると、1年間(平成30年10月1日から令和元年9月30日まで)の採用率は18.2%、離職率は15.4%となっています。

【採用率と離職率】

平成27年度 平成28年度 平成29年度 平成30年度 令和元年度
採用率 20.3% 19.4% 17.8% 18.7% 18.2%
離職率 16.5% 16.7% 16.2% 15.4% 15.4%

ここでいう離職率は、ある地点における労働者数に対する、1年間の離職者数の割合となります。1年間で15%超の職員が辞めていくということですから、採用を強化するだけでなく離職率を下げ、採用した人材を職場に定着させることが人材確保のためには必要です。特に勤続3年未満の労働者へのフォローが求められます。

【離職者の勤続年数】

離職者(訪問介護員と介護職員)の勤続年数
1年未満 1年以上3年未満 3年以上
38.2% 25.8% 36.0%

介護福祉機器の導入で労働環境の改善を

職場に人材を定着させるための方法の1つが、重労働とされる介護現場の改善です。同調査から労働条件・仕事の負担に関する悩みをみてみると、「人手が足りない」が55.7%と最も多くなっていますが、「身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)」も29.5%となっており、身体的に厳しい労働環境であることがうかがえます。

介護現場は、女性労働者と高年齢労働者が比較的多い職場です。離職を防ぐには、介護現場における身体的負担の軽減が必要だといえます。

人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)は、移動・昇降用リフトや装着型移乗介助機器 などの導入等を通じて労働環境の改善を図る企業を支援するものですから、ぜひ利用を検討してみましょう。本助成金には機器導入助成と目標達成助成があり、最大で300万円受給できます。

人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)の申請の流れ

機器導入助成とは

初めに機器導入助成についてみてみましょう。
受給要件は、

  • (1) 導入・運用計画を作成し、労働局長の認定を受けること
  • (2) 認定された導入・運用計画に基づき介護福祉機器を導入し、介護労働者の雇用管理改善に努めること
  • (3) 雇用管理責任者を選任していること
    となります。

まずは(1)の計画の内容等を把握しましょう。

①計画の内容 ・導入する介護福祉機器の品目、台数、費用、メンテナンス方法
・導入機器の使用を徹底するための研修の予定日、内容、費用
・導入効果を把握するスケジュール 
②計画期間 3か月以上1年以内
計画開始日は、最初に介護福祉機器を導入する月の初日になります
③提出期限 計画開始日からさかのぼって、6か月前~1か月前の日の前日まで
④提出先 介護福祉機器を導入する事業所の所在地を管轄する各都道府県労働局

計画認定申請の添付書類として、計画時離職率算定期間に係る介護労働者名簿、介護事業主であることが確認できる書類(介護保険指定事業所の指定通知書など)、介護福祉機器のカタログ、価格表、見積書(写)、離職証明書(写)などが求められます。

(2)に関しては、次の通りです。

①機器の導入・運用 介護福祉機器の導入とは、介護福祉機器を設置または整備することをいい、運用とは、当該機器を適切かつ効果的に活用して介護関係業務に用いることをいいます
②導入効果の把握 助成金を受給するには、介護福祉機器を導入したことによって、効果的な介護関係業務が行われたかどうかを把握することが必要です。全ての介護労働者にアンケートを行い、導入効果を測定・評価します

導入効果は、身体的負担が大きいと感じている職員数の改善率で評価します。改善率が70%以上であった場合、機器の導入関係費用について支給決定がなされます。

介護福祉機器の範囲も確認しておきましょう。

①移動・昇降用リフト ・立位補助器、非装着型移乗介助機器を含みます
・人の移動又は移乗に使用するものに限ります
②装着型移乗介助機器
③体位変換支援機器 エアマット、ベッドのうち、体位変換機能を有するものに限ります
④特殊浴槽 移動・昇降用リフトと一体化しているもの、移動・昇降用リフトが取り付け可能なもの又は側面が開閉可能なもの等

介護福祉機器は、介護労働者が使用することにより、直接的に身体的負担の軽減を図ることができ、労働環境の改善が見込まれるものであることが必要です。

3つ目の要件は雇用管理責任者を選任していることです。計画認定申請時までに事業所ごとに選任し、その氏名を事業所内に周知してください。

【雇用管理責任者】

雇用管理の改善への取組、労働者からの相談への対応、その他労働者の雇用管理の改善等に関する管理業務を担当する人

目標達成助成とは

目標達成助成の受給要件は次の通りです。

  • (1) 機器導入助成で求められる措置を実施すること
  • (2) 離職率を目標値以上に低下させること
  • (3) 離職率が30%以下となること

助成金の受給には、評価時の離職率を、計画時の離職率より下表のポイント以上低下させることが必要です。

雇用保険一般被保険者の人数 1~9人 10~29人 30~99人 100~299人 300人以上
低下させる離職率ポイント(目標値) 15%
ポイント
10%
ポイント
7%
ポイント
5%
ポイント
3%
ポイント

離職率の計算は次の通りです。

離職率(%) 所定の期間における離職による
雇用保険一般被保険者資格喪失者数
× 100
所定の期間の初日における
雇用保険一般被保険者数

ただし、離職率を目標値以上に低下させたとしても、離職率が30%以下でなければ助成金を受給することはできませんので注意してください。

例えば、30人規模の事業所では離職率を7%ポイント以上低下させなければなりませんが、計画時の離職率が40%、評価時の離職率が33%となった場合、目標値はクリアしていますが、離職率が30%以下ではないので助成金はもらえません。

最大で300万円の支給額

最後に支給額をみておきましょう。

機器導入助成 支給対象経費の合計額(税込)の25%
上限150万円
≪支給対象経費≫
イ.介護福祉機器の導入費用(設置費用等は除く)
ロ.保守契約費
ハ.機器の使用を徹底させるための研修費
目標達成助成 支給対象経費の合計額(税込)の20%(生産性要件を満たした場合は35%)
上限150万円

現在、厚生労働省においては、介護現場における介護ロボットの開発や普及に向けた取組を進めています。介護を必要とする人が増加する一方、介護サービスを提供する人の確保が困難を極める中、すべての介護を人力だけで行うのは現実的ではありません。

人材を確保するには、介護ロボットを含め、介護福祉機器を有効に利用した、介護労働者の身体的負担を軽減する介護体制を構築する必要があります。ぜひ本助成金を活用して、介護現場の労働環境改善を図ってみてはいかがでしょうか。

※本内容は、令和2年8月20日現在、厚生労働省より公表されている情報に基づいております。申請にあたっての詳細は、管轄の都道府県労働局等に確認をお願いいたします。

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  • 著者プロフィール
角村俊一

明治大学法学部卒業。地方公務員(杉並区役所)を経て独立開業。
「埼玉働き方改革推進支援センター」アドバイザー(2018年度)、「介護労働者雇用管理責任者講習」講師(2018年度/17年度)、「介護分野における人材確保のための雇用管理改善推進事業」サポーター(2017年度)。
社会保険労務士、行政書士、1級FP技能士、CFP、介護福祉経営士、介護職員初任者研修(ヘルパー2級)、福祉用具専門相談員、健康管理士、終活カウンセラー、海洋散骨アドバイザーなど20個以上の資格を持ち、誰もが安心して暮らせる超高齢社会の実現に向け活動している。