最近、過労死を原因とする賠償請求に関する裁判で、和解が成立し、請求されていた会社の元代表者らが謝罪したというものがありました。

さらに報道によれば、自殺した従業員と同時期に入社した従業員に対する未払い残業代の支払いに関する約束も行われた模様です。

労働災害に関する請求訴訟だったのですが、以上のような内容を含む裁判上の和解という制度はどういったものなのでしょうか。

1.裁判上の和解とは?

「過労死などを原因とする自殺に関する責任が問題となっていたようですが、謝罪や会社全体の未払残業代も問題となっていたのでしょうか?」

「まず、日本の裁判制度においては、原則として、自分の権利に関する請求しか行うことができず、自分以外の権利を請求することはできません。したがって、裁判上、過労死した本人以外の従業員に関する未払残業代が請求されていたとは考えにくいですね。」

「謝罪についてはどうなのでしょうか?」

「法律上、謝罪を求めることができる場合もありますが、本件のような労災による場合には、請求できるとは考えづらいです。請求ができるとすれば、名誉毀損に基づく場合など、名誉回復のために謝罪を行うことやそれを公表する必要がある場合に限られています。」

「だとすれば、なぜ、裁判上の和解においては、謝罪や本人以外の未払残業代を含めることができるのでしょうか?」

「裁判上の和解では、請求されている権利だけしか対象にできないわけではなく、紛争の解決に役立つようであれば、紛争の周辺にある事項についてもあわせて合意することができます。判決が出されていた場合は、このようなことにはならなかったでしょう。」

2.裁判上の和解を行うメリットは?

「裁判上の和解という解決を選択するメリットはあるのでしょうか。」

「裁判上の和解を行う場合は、事前にその和解内容を十分に検討した上で、合意に至ります。したがって、和解で負担すべき金額やデメリットが予測できるという点があげられます。また、裁判が、相当程度進行した状況であれば、裁判所からの和解に関する意見が述べられる場合もあり、判決になった場合に想定できる結論も考慮しながら和解条件を検討することができます。」

「なぜ、謝罪や未払残業代の解消といった請求されていないことまで含めて和解したのでしょうか?」

「判決であれば、確かに、謝罪や本人以外の未払残業代まで支払いを命じられることはなかったと考えられます。しかし、判決まで争い続けた場合に想定されるレピュテーションリスクや、和解において、謝罪や関連する問題点まで解決の姿勢を示した場合に、解決への前向きな姿勢などが評価される可能性があり、それらの状況を比較考量した結果の決断だったのではないかと思われます。」

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