近年、未払残業代の請求に関するホームページが散見されており、割増賃金の支給がない企業が批判にさらされるなど、残業代に対する意識は確実に高まっています。

そのような中、法的に可能な範囲で割増賃金の支給を抑えるために、みなし残業代と呼ばれる手当が広まっています。しかしながら、その正確な理解と制度の運用には注意が必要です。

1.「みなし残業代」とは?

「給与明細に職務手当として支給されている金額について、みなし残業代という説明があったのですが、どういう意味でしょうか?」

「みなし残業代という法律上の用語はありません。多くの場合は、残業代について一定額を固定して支給する方法をとることについて、みなし残業代と表現されていると思われます。」

「残業代について一定額を固定して支払うことで、企業にとってメリットがあるのでしょうか?」

「業務を行うにあたって、一切残業が発生する可能性がない業務というものはあまりないと思われます。そのような場合に、一定額を前もって残業代として織り込んでおくことで、毎月一定額の支給をすることで残業代の支給を済ませてしまうことができます。また、割増賃金計算の基礎となる賃金からも控除されるため、割増賃金の発生額を抑えることもできます。」

「みなし残業代を支払っていれば、どんなに残業しても割増賃金は支払ったことになるのでしょうか?」

「あくまでも、固定残業代の支給した額について、支払済みとなるにすぎませんので、割増賃金を計算した結果が固定残業代の額を超過した場合には、超過した金額について割増賃金を支給する必要があります。」

2.固定残業代運用上の注意点

「固定残業代の運用において注意する点はありますか?」

「固定残業代が有効と認められる要件が、裁判例でも判断されています。まず、①基本給と別に支払われる手当であること、②当該手当が割増賃金の支払に代えて支払われるものであることを明確にしておく必要があります。また、③当該手当部分が1ヶ月あたり何時間分の時間外労働に相当する割増賃金に代えて支給されているのかについても明確にしておくべきです。」

「具体的には就業規則にどのような定めをしておくべきでしょうか?」

「例えば、「基本給30万円に固定残業代を含む。」というだけの記載では不十分です。①の基本給と手当の区別が実施されていないからです。固定残業代として十分な記載をするとすれば、「基本給とは別に職務手当として支給される5万円は1ヶ月20時間の時間外労働に対する割増賃金とする。なお、当該手当を超過する割増賃金は別途支給する。」といった定めをしておくべきと考えられます。ただし、歩合給を併用している場合など、毎月の割増賃金の基礎となる賃金が変動するような場合には、支給する手当に相当する時間外労働を固定することは困難であるなど、歩合給などの条件に即した工夫が必要になるでしょう。」


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