近年、クールビズが定着し、官庁によってはスーパークールビズなども推奨されているようです。しかし、短パンはダメ、ポロシャツはOK、かりゆしもOKなど、その基準はいまいちわかりません。
ところで、服装や髪形、ヒゲの有無などについて「身だしなみ基準」を制定したり、違反した従業員の人事評価を下げたりすることは可能なのでしょうか。

1.憲法が保障する幸福追求権との関係

「勤務中の服装だけでなく、従業員の髪型やヒゲの有無などについても基準を設けることはできますか?」

「この問題は、憲法が保障している幸福追求権との関係で議論しなければなりません。なぜなら、憲法は『生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする』(憲法13条)と規定し、『人としてどのようなスタイルで人生を送るかについては、公の秩序に反しない限り自由である』と保障しているからです。そして、『どのようなスタイルで人生を送るか』の中には、服装や髪やヒゲをどうするかといった自由も含まれていると考えられています(幸福追求権)。
もちろん、国から自由を侵害されることを想定して権利を保障しているのが『憲法』ですが、もちろん、会社と従業員の間でも、このような趣旨は十分に配慮されなければなりません。
もっとも、勤務中であれば、労働者は会社の指揮監督下にあるため、幸福追求権が絶対的に保障される、というわけにはいきません」

2.規制することはできるか?

「『身だしなみ』を就業規則などで規制することはできますか?」

「従業員の『身だしなみ基準』を定めること自体が違法とされることはないと考えられています。
裁判所も、郵便局に勤務する従業員がヒゲをはやしていたことを理由に人事評価が下げられたという事件において、『髪型やひげに関する服務中の規律は、勤務関係又は労働契約の拘束を離れた私生活にも及び得るものであることから、そのような服務規律は、事業遂行上の必要性が認められ、その具体的な制限の内容が、労働者の利益や自由を過度に侵害しない合理的な内容の限度で拘束力を認められるというべき』と判断し、この事件では、窓口業務かどうかや、お客さんと接する割合などを考慮せず、一律にヒゲを禁止していた点を過度な制約であると判断し、慰謝料30万円の支払いを命じています(神戸地判平成22年3月26日)。
結局のところ、『身だしなみ基準』によって従業員の髪型などを規制することは可能であるとしても、規制することの必要性や、その程度などについて具体的な場面を想定しながら、慎重に進めなければならないということです。
したがって、人事評価をするにしても、その従業員の職種や職責、会社の顧客に与える影響などを、髪型やヒゲの程度などを衡量しながら必要な範囲で慎重に行わなければなりません」


投稿日:2015年9月9日
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  • 筆者プロフィール
山岸 純

山岸 純

弁護士法人ALG&Associates
執行役員・弁護士
早稲田大学卒業、東京弁護士会所属。
東京弁護士会公益通報者保護特別委員会副委員長、東京三会公益通報者保護協議会委員、宮内庁外部通報窓口を務める。
企業法務関連の法律業務、特に特定商取引法、景品表示法、不正競争防止法を得意とし、通販・訪販業界に関する法律業務に広く携わっている。また、企業のインターネットトラブル対策に関連するセミナーや執筆も多数行っている。
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