前回は、日テレ・女子アナ内定取消訴訟に関連して「採用内定」の法知識を検討していきましたが、今回は採用内定取消の有効性等について解説していきます。なお、日テレ・女子アナ内定取消訴訟の検討は、新聞等のマスメディアから得られた情報のみを基礎としています。

1.内定取消事由だけでは足りない?

前回、採用内定の取消は留保された解約権の行使ということをお伝えしましたが、その解約権の行使の有効性について検討していきます。

「今回のケースですと、銀座のクラブでのアルバイト経験を申告していなかった点は、その点だけあえて申告していないと、経歴詐称や虚偽申告にあたりそうですし、そうすると解約権の行使としての内定取消も有効となるのではないですか?」

「確かに、そのように考えられそうですよね。しかしながら、採用内定通知書に記載されている内定取消事由に該当しそうな事実関係があるだけでは内定取消は有効と判断されていません。この点について、詳しく解説していきますね」

そもそも、どのような事由に基づいて解約権が留保されているかについては、採用内定通知書に記載された内定取消事由を参考に判断されているといえます。

ただし、当該内定取消事由に基づく解約権の行使が有効か否かについては、判例によると、「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる」か否かの観点から判断されています(最高裁昭和54年7月20日判決)。

「内定取消事由にあたりそうな事情があるだけでは足りないということですね」

「その通りです」

内定取消が有効か否かについては、内定取消事由を手がかりとはするものの、結局は、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的と認められるか否か、社会通念上相当といえるか否かが慎重に判断されることになります。

「会社は内定取消についても慎重に判断する必要があるということですね」

2.事案の検討

日テレ・女子アナ内定取消訴訟については、内定取消事由として経歴詐称や虚偽申告が挙げられていた場合、仮に、銀座のクラブでのアルバイト経験だけをあえて申告していなかったとすると、経歴詐称や虚偽申告に該当するか否かが問題となり得ます。

「ただし、解約権を行使して内定取消をしても良いのか否かは、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的と認められるか否か、社会通念上相当といえるか否かが慎重に判断されるということですね」

「その通りです」

マスメディアの情報によると、会社からはアナウンサーには高度の清廉性が求められるといった理由が主張されたとのことですが、会社側としては、アナウンサーには高度の清廉性が求められることをもって、内定取消の客観的合理性、社会通念上の相当性を立証しようとしたのではないでしょうか。

しかしながら、最終的には和解に至り、争っていた女子大生はアナウンス部に配属予定の内定者に戻されたとのことですので、裁判所は会社にとって厳しい判決になる旨を示唆したことが推測されます。

「マスメディアの情報によると、女子大生は、母の知り合いの関係者が経営している銀座の小さなクラブで、お手伝いを頼まれて短期間アルバイトをしていたみたいですね」

このような経歴がアナウンサーとして働くにあたって大きな支障になると考えることは、やはり難しいと考えられます。そうすると、このようにアナウンサーとして働くにあたって大きな支障とならないことを申告しなかったとしても、特段問題はないだろうという考え方に至ると思われます。

したがって、このような経歴について会社に申告していなかったとしても、その不申告をもって、経歴詐称や虚偽申告として留保された解約権を行使することは、客観的に合理的とはいえず、社会通念上も相当とはいえないと考えられます。

「以上より、今回のような事案では採用内定を取り消すことは無効になると判断される可能性が高いと考えられますね」


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