先日、世間の注目を浴びた日テレ・女子アナ内定取消訴訟について、和解が成立したと報道されました。結局、争っていた女子大生はアナウンス部に配属予定の内定者に戻され、4月に入社することになったようです。
そこで、今回は「採用内定」について法的観点から検討していきます。

1.そもそも「採用内定」って何?

「今回の日テレ・女子アナ内定取消訴訟でクローズアップされた採用内定ですが、採用内定って、法的に考えていくと、どのような状態なのか、いまいち、よくわかりません」

「そうですよね。雇用契約書を締結しているわけでもないですし、わかったようでわからない状態ですが、考え方を伝えますね」

まず、この問題については、画一的に決まった法律関係が法定されているものではありません。それぞれの企業における採用内定の方式が異なることから、ケースバイケースで判断せざるを得ないといえます。

「画一的に決まっていないので、よくわからないのですね」

ただし、実務上は、入社日と一定の内定取消事由を記載した採用内定通知書を送るケースや、入社日を記載した採用内定通知書の送付とともに、一定の内定取消事由を記載した誓約書を提出してもらうケースがよく見受けられます。

このようなケースでは、採用内定によって始期付解約権留保付労働契約が成立したと考えられます(最高裁昭和54年7月20日判決・大日本印刷事件)

2.採用内定=始期付解約権留保付労働契約?

「始期付・・解約権留保付・・労働契約って・・何ですか?法律用語の固まりでよくわかりません」

「わかりました。ゆっくり解説していきますね」

そもそも、契約は契約の申込みとそれに対する承諾によって成立します。これを労働契約に置き換えて考えると、学生等の応募行為や採用試験の受験が労働契約の申込みになると考えられます。そして、このような申込みに対し、企業が採用内定通知を発信することが企業による労働契約の承諾になると考えられるのです。

このように、採用内定によっても労働契約が成立していると考えられるわけです。それゆえに、企業は、勝手気ままに安易に採用内定を取り消すことができないと考えることができます。

「一度、採用内定を出した以上、その取消は慎重にする必要があるということですね」

また、採用内定がなされる時期は未だ学生の時期で、働くことができる状況になっていません。そのため、労働契約が成立していても、その就労の始まりの時期、略して「始期」が例えば4月1日など卒業後一定の日に設定されていると考えられます。そのため、「始期付」といった表現をします。

更に、内定取消事由が設定されていた場合、そのような内定取消事由が生じた際には、内定を取り消すことが予定されているといえます。このような内定取消については、事前に内定取消事由が設定されているため、労働契約を解約できる解約権が留保されていると考えることができます。そのため、「解約権留保付」といった表現がなされます。

「これらをまとめると、始期付解約権留保付労働契約という表現になります」

「当社では、採用通知書を送っているだけで、内定取消事由は定めていないのですが。一般的に、どのような事由が定められているのですか?」

実務上は、以下のような事由の一部又は全部を記載している例が見受けられます。

  1. 履歴書に虚偽があった場合(経歴詐称等)
  2. 卒業できなかった場合
  3. 心身の故障で就労困難になった場合
  4. 企業の名誉・信用を損なう行為をした場合
  5. 刑罰法規に違反した場合
  6. その他従業員としての適性を欠く事情が発生した場合
  7. 企業の経営上やむを得ない必要性がある場合

「そうすると、これら内定取消事由が発生すると、解約権が留保されている以上、企業は、採用内定取消しを比較的簡単にできそうですし、日テレ女子アナ採用内定取消の件も日テレの方が有利だったと思われるのですが」

「一見そのように思われるのですが、実は、判例によって採用内定取消事由は限定解釈され、その有効性は慎重に判断されています。そのため、日テレ女子アナ採用内定取消の件も法的に見ると、やはり女子大生の方が有利だったといえます」

そこで、次回は、更に掘り下げて、採用内定取消の有効性等について解説します。

コラムの王様トップ »
このページの上部へ