是枝伸彦×桜井淑敏 特別対談「経営者よ、世界マーケットで戦え!」 前編

特別対談 是枝伸彦×桜井淑敏

掲載日:2009年6月3日  社長インタビュー一覧
特別対談 「経営者よ、世界マーケットで戦え!」 株式会社ミロク情報サービス 会長 是枝伸彦×元ホンダF1チーム総監督 桜井淑敏
「経営者の挑戦を支援する。」その思いがこの二人の対談を実現させた。これまで中小企業の経営を財務・会計の分野から支えてきたミロク情報サービスの是枝伸彦会長と、企業家を支援すべく『桜井塾』を開講する元ホンダF1チーム総監督の桜井淑敏氏。奇しくも二人は43歳で新たな道へとチャレンジを始めたという共通点を持っていた。そんな二人が考える中小企業の進むべき道とは!? この先の見えない時代にやるべきことは!? 熱い思いをぶつけ合う対談の中から、経営の本質、経営者のあるべき姿をあぶり出す。司会・構成 海bizocean事務局
何のために存在するのか?

――現在の不況下において、日本の経済、あるいは各企業が抱える課題について、お二人はどのようにお考えでしょうか

 

桜井

グローバリズムという名のもとで行われてきたアメリカ型の拝金資本主義は、もうすでに過去のものとなっています。ですが、各企業はまだまだ従来の価値観から抜け出せていません。

お金というのは本来、経済の主役ではありません。車で言えば実体経済が自動車そのもの、金融資本は車を動かすためのガソリンです。それを勘違いして、多くの人、多くの企業が金融資本で簡単に儲けるようになってしまいました。そして、実体経済を担うべき企業も、結局、お金だけを追いかけるようになってしまったのです。

 

 

是枝伸彦

株式会社ミロク情報サービス代表取締役会長。1977年 同社取締役、1980年 代表取締役社長に就任。当時主流であった財務計算サービスを行う計算センタービジネスから、オフコンビジネスに業態変換する必要性をいち早く察知し、事業を転換。オープンシステムに移行した現在、全国8,400会計事務所と企業17,000社の顧客を有す。1992年 株式を店頭公開、1997年 東京証券取引所第2部上場。

是枝

桜井さんが言う通りです。そもそも、企業あるいは企業家にやりたいことがあって、それが多くの人々に役立つ公益性を持つからみんなが買ってくれて、その結果としてお金が儲かるという流れだったはずですよね。ところが、みんな、はじめにお金ありき、どうやったら儲かるかという視点ばかりが先行してしまいました。それが、今回の世界同時不況を呼んだ最大の原因と言えます。

 

 

桜井

私がずっと提唱しているのは「“拝金資本主義”から“文化資本主義”への移行」です。文化資本主義とは、これまで培ってきた文化を大切にして、その価値を活かしながら経済化していこうというものです。

 

 

是枝

“文化資本”とは何ですか?

 

 

桜井

具体的に説明します。例えば、私が勤めていたホンダという会社ですが、今回、F1からの撤退を決断しました。おそらく、F1にこれだけ投資しても、これくらいしか回収できないという計算のもとでの決断だとは思います。

しかし、ホンダの文化資本とは何だろうと考えたとき、やはりF1で世界一になったこと、そしてそれに感動してくれたファンが大勢いることだと思います。文化資本主義の最大の特徴の一つにファンができることがあるのですが、この経済効果は計り知れません。単純に、いくら投資していくら回収できたという話ではないんです。

 

 

是枝

そうですね。同じ町工場があって、かたやそのまま町工場のままで終わり、かたやソニーやホンダのような世界企業になる。その違いは何かと言えば、私は井深(大)さんや本田(宗一郎)さんが持っていたフィロソフィーだと思います。何のためにこの会社をやるのかという企業哲学がしっかりしているかどうか。そこに大きな違いがあったのだと思っています。

このフィロソフィーが企業のエネルギーになって、大きくなっていったのだと思います。

桜井淑敏

(株)レーシング・クラブ・インターナショナル代表、桜井文化経済研究所主宰。1967年、本田技研工業株式会社に入社。1971年、実現不可能と言われていたアメリカの排ガス規制法を世界で初めてクリアしたCVCCエンジンの開発に成功し、その後も数々のヒット商品を創り出す。1984年、ホンダF1チーム総監督に就任。斬新なマネジメントシステムを創案し、1986、87年と2年連続世界チャンピオンを獲得する。1988年、F1総監督を勇退。同年、43歳で取締役も辞し、新文化創造を目指して、レーシング・クラブ・インターナショナルを設立。拝金資本主義から文化資本主義への移行を提唱し、広範囲な分野で活動を続ける。2009年秋、志ある企業家を啓蒙・支援する目的で、『桜井塾』を開講予定。

 

私はよくたとえ話をするのですが、ろうそくの光、電灯の光、レーザー光線の光などいろいろな光がありますが、それぞれ光の届く距離が違います。この違いはエネルギーの違いです。大きなエネルギーを持つ光は長く遠くまで届きます。

長く続く企業、大きくなる企業はエネルギーが違うのですが、そのエネルギーとは何かと言えばフィロソフィー、つまり何のためにこの会社はあるのかという理念だと思います。

“上場したい”では経営はうまくいかない!

――桜井さんのおっしゃっている“文化資本”と是枝さんのおっしゃっている“フィロソフィー”には、大きな共通点があるように感じます。これらを中小企業やベンチャー企業が実践していくためには、どんなことが必要だとお考えでしょうか。

 

是枝

企業理念とか経営哲学と言いますと、大きな企業には必要でも中小企業には必要ないと思っている経営者も少なくないようです。ですが、ここに大企業も中小企業もありません。

むしろ、現在のような経済状況の中では中小企業にこそ必要なものでしょう。本当はどんな環境においても、常に意識しなければならないものですが、現在のような大不況期には改めて問い直すべきものと言えます。

自分の会社の存在理由、どうしてこういうビジネスをしているのかをもう一度確認し、あとは自分の周りの環境をよく見て、それと照らし合わせれば、何をすべきかが自ずと見えてくるのではないでしょうか。

 

 

桜井

是枝さんはまさに、そうやって時代を読んで、会社を大きくされたんですね。

 

 

是枝

長年経営者をやってきた経験からそう言えますね。

 

桜井

私は以前、ベンチャー企業の文化資本を応援しようと約200社を集めて、その経営者から考え方や事業方針を聞いたことがあります。ですが、このときは応援に値する企業はほぼ皆無でした。

みんな結局、お金のためだけに企業経営をしようとしていたのです。とにかく“株式を上場するにはどうすればいいか”ばかり考えている。「じゃあ、上場したら何がしたいの?」と聞いても、「上場したあとは株価を上げたいです。」と、こう来る。

これは明らかに順番が違います。上場したいとか株価を上げたいとか、そういうことでは経営はうまくいきません。自分たちは世の中のために何がしたいのか。この会社は何のために存在し、どんな花を咲かせたいのか。そういったことがまったくない。上場とか株価を上げるというのは、花を咲かせた結果の話です。まず、そこから考えてほしいと思います。

日本人の強さはビジネスにおける精神性にある

――日本の企業は世界で十分戦える力はあるのでしょうか。そもそも日本の企業の強さというのは、どのようなところにあると思われますか

 

桜井

アメリカのアップル社はとても元気がいい企業ですよね。でも、音楽プレーヤーという点では、ソニーが今のアップル社のようになっていてもおかしくなかったはずです。アップル社の製品もソニーの製品も、技術的な差はほとんどありません。

何が違ったかと言えば、人間の本性と言いますか、美意識を刺激するような戦略を取ったアップル社に対して、あくまでも技術をアピールすることにこだわったソニーという差だと思います。

 

 

是枝

私が見てきたソフトウェア業界でも、技術的には見劣りしないどころか、明らかに優れているにもかかわらず、世界的なシェアで見るとほとんど取れていないというものがいくつもあります。

世界を席巻していてもいいほどのすばらしい技術や品質にもかかわらず、シェアが取れない。これは最初の開発段階から、世界を意識しているかどうかの差だと思っています。最初からグローバルな視点を持っていれば、もっともっと戦えるはずです。

 

 

桜井

スポーツの世界でもそれはありますよ。日本が好成績を残すと、とたんにルール改正されちゃうでしょ。F1でもそれでかなり苦労しました。



是枝

確かに(笑)。その点、自動車産業は世界に早くから出て行って、ノウハウと経験が蓄積されているので戦うのがうまい。自動車でできていることが他でできないはずがありません。

 

 

桜井

世界で戦うということを、もっと意識してほしいですね。

 

 

是枝

全くです。中小企業もいつまでも大企業の下請けばかりじゃダメだと思うんです。フットワークの軽い中小企業こそ、世界に出て行く視点を持つべきだと思います。いきなり欧米が無理なら、まずはアジアからでいい。これから経済発展が見込める国に出掛けていって、そこで喜ばれる技術を提供するんです。

 

 

桜井

今は昔に比べて、グローバル化しやすい環境が整っています。問題は中身。文化資本やフィロソフィーの部分がしっかりしているかどうかです。

日本人は“仕事道”と言ったら大げさかもしれませんが、ビジネスにおける精神性、正しい道でビジネスをする、あるいはビジネスが人生そのものに通じるという考え方をしやすい国民だと思います。これは世界に出て行ったときに、大いに有利に作用すると思います。

 

 

是枝

その通りですね。今回の世界同時不況は、ビジネスの表と裏の使い分けとか、汗をかかずにお金でお金儲けをしようとしたことに対して、鉄槌を下されたかのようです。

ビジネスを人の生き方そのものと重ね合わせて“道”の領域にすることで、企業が進むべき方向性や取るべき判断が揺るぎないものになると説くお二人。実際に多くの中小企業、ベンチャー企業を見てきたお二人だからこその説得力がありました。次回は、日本の企業が世界で戦うための戦略について語り合います。

ホンダF1を世界制覇に導いた男
桜井淑敏による企業家向けセミナー『桜井塾』

 

 

カネだけを資本と考える時代が終わり、文化を最強の資本と考える時代が始まっています。あのアメリカでさえ拝金主義を捨て、文化資本の生成・発展に邁進することを予感させてます。

 

だから今、すべての経営者や起業を目指す人に問います。

“あなたたちは世の中のために何がしたいのか?”
“あなたの会社は何のために存在し、どんな花を咲かせたいのか?”

 

桜井塾』は、21世紀の企業家に求められる指針、「文化資本主義」をテーマとしたセミナーです。毎回世界の成功者をゲストに招き、日本の文化、世界の文化を基盤とした成功の手法を学んでいきます。

 

3年・30回のシリーズセミナー『桜井塾』は、同じ志のある仲間たちともに、あなたの会社を世界でも戦える力強く魅力的な存在へと導きます。

 

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