株式会社マッシュルーム社長・フラワーデザイナー 佐藤康之 社長インタビュー|たまごが立たないコロンブスたちへ!

社長インタビュー たまごが立たないコロンブスたちへ!Vol.030

掲載日:2009年3月25日  社長インタビュー一覧
イベント空間を彩る花の魔術師 株式会社マッシュルーム社長・フラワーデザイナー 佐藤康之
動くこと、手を抜かないことがチャンスを掴める条件
フラワーデザイナーとして超有名ブランドや芸能人のイベントを手掛け、株式会社マッシュルームの社長としてフラワーショップを7店舗経営する佐藤康之。その才能を開花させたのは、並々ならぬ努力とそれを支える信念、そしてイベントに関わるすべてのことを俯瞰する目だった。高校中退後、自分を見つめ、イギリス留学を決意したところから、彼の挑戦は始まった。どんな仕事もけっして手を抜かない姿勢、まず動くことでチャンスを捉える手法はビジネスマンや経営者にとって示唆に富んだ話である。
たまごが立たないコロンブスたちへ!とは?

目指せば、社長は誰でもなれる時代…。
でも、社長には、必ず苦難の壁が立ちふさがります。そのような壁を乗り越え、輝く成功をつかみ取った社長たちの物語に、カリスマ顧問の越石一彦が鋭く迫ります。

聞き手 顧問 越石一彦


前回は、何事にも手を抜かない姿勢でつかんだチャンスについて語っていただきました。今回は、さらに大きなチャンスをどう掴んだのか、そして今後について語っていただきます。

え?俺ですか?

――前回(第3回)、小さなきっかけからそこそこ食べられるようになったあと、もっとすごい転機が訪れたという話でしたが、それはどんなものだったのでしょうか?

あるとき、海外の有名なブランドが、日本で大きなファッションショーを開くことになりました。デザイナーが初来日ということで、日本法人もかなり力を入れていたようです。これもたまたま知り合いがそこのブランドの会社の社員で、その人は以前から友人の誕生日とか同僚の送別会とか、そういうときに私に花を頼んでくれていたんです。

その人から、「このファッションショーの記念パーティーでフラワーデザイナーのアシスタントをやらないか。」という話がありました。ファンションショーだけでなくパーティーも盛大に開くということで、フラワーデザイナーも料理人もフランスから呼ぶことになっていたのですが、そのフランスのフラワーデザイナーに日本人アシスタントが必要だということになったのです。

――フラワーデザインの実力を買われて、お声がかかったわけですか。

いいえ。多分、イギリスにいたから英語ができる、花の仕入れのルートもわかっている、もちろん花にも詳しい、どちらかと言うと雑用係として便利だったからだと思います。「あんまりお金にならないけど、どう?」と言われて、当時は花の仕事は暇でしたから「おもしろそうだから、やるよ!」と軽い気持ちで引き受けてしまいました。

それで、フランスのフラワーデザイナーと、コンセプトから細かいセッティングに至るまで、海外とFAXでの打ち合わせが何度も続きました。ところが、パーティー直前になって、そのブランドの会社とフラワーデザイナーとがケンカして、デザイナーがこの仕事を下りてしまったんです。

パーティーは絶対に失敗できませんから、会社の方も焦ったと思います。もう一からやり直している時間はありません。それで「打ち合わせはだいぶ進んでいたんでしょ。君、やってよ。」ということで、私がフラワーデザインを担当することになってしまったんです。

「え? 俺ですか?」という感じですよ。いまだにこのときのパーティーの規模が経験した中で一番大きくて、花代だけで2日間で1200万円かかりました。よく会社も実績のない私に任せたと思いますね。まあ、他に選択肢がなかったのは事実ですが。

デザイン以外の部分が実は重要

――そのパーティーは成功したんですか?

数日前から緊張で眠れないほど大変でしたが、おかげさまで大成功を収めることができました。この成功によって、業界内で「この花は、誰がやったんだ?」という話になり、ルートもできて、そこからいろいろなブランドのフラワーデザインをやらせていただけるようになりました。

ただ、今思うと、フリーターとしていろいろな仕事を経験していたおかげで、すごく助かったことがあったんです。パーティー会場って壁や柱に傷をつけないように、壁や柱の上にもう一枚、板を貼ったりして新しい壁を作るんです。


そういう新しい壁を作ってしまうともともとどこに柱があったかとかがわかりづらくなるんですが、私は内装屋で働いていた経験があったので、ココとココなら釘が打てるとかわかるんです。そういう、他の人があまり知らないことも、「ああ、それだったらこうすればいいんじゃないですか。」なんて提案できたことがいくつもありました。

―― 一番評価されたのはどういった部分だったのでしょうか。

フラワーデザインが認められたこともあるでしょうが、それ以上にいろいろなセクションとの折衝とか、段取りなんかがうまく運べたことが一番だと思います。そういう、デザイン以外の部分が実は重要なんです。雑務と言えば雑務ですが、その交通整理がうまくいくかどうかが、イベント成功のカギだったりするんです。

あとは私の場合、クライアントの意向を最大限に尊重しつつ、自分の考えをそれに当てはめていくということを重要視しています。デザイナーは、自分を出しすぎる人が多いんですが、そこは自分を出しすぎないように気をつけています。

例えば、全体のコンセプトが「白」と決まっていて、テーブルクロスとか食器とか照明など全部がその「白」というコンセプトで統一されているのに、フラワーデザイナーが花だけを見て「白い花だけじゃ寂しすぎる!」と赤い花を入れてしまったら、すべてがぶち壊しになってしまいます。

――イベント全体を俯瞰して見ることができる目があったんですね。

そういう見方ができないと難しい仕事かもしれません。私のデザインでも、「こんなデザインだったら誰でもできるよ。」と酷評されることがあるんですが、フラワーデザインは芸術ではないので、デザイナーの独断で誰にもできないようなことをされては困るんです。

芸術家は自分の技を極限まで追求して、「これが最高傑作だ。」と見せるのが仕事です。でも、私の仕事にはクライアントがいるので、自分を出すのではなく、クライアントのイメージをいかにして実現させるかが勝負なんです。

花ってもっと身近にあっていいもの

――今後はどのような展開を考えているのでしょうか。

もちろん、企業として会社を大きくしたいというのはあります。でも、それは結果としてそうなったらいいなという感じです。まずは、花というものを人々の身近な存在にしていきたいんです。

――何か具体的に取り組んだりしているんですか。

そうですね。例えばですが、母の日に子どもさんがカーネーションを買いに来ますよね。でも、せっかく買いに来たのにお金が足りなかったっていうこともけっこうあるんです。なので、母の日にはお店の店員さんたちに小銭を渡しておいて、おまけしてあげるように言っています。

「じゃあ、お姉さんが払ってあげるね。」と言って、そのお金を出してあげてくださいと。会社が値引きするんじゃなくて、店員のお姉さんが出してくれるっていうところに意味があるんじゃないかと思っています。

花ってもっと身近にあっていいものだと思うんです。長嶋茂雄さん(読売巨人軍終身名誉監督)が本の中ですごくいいことを言っていました。原文は忘れましたが、内容は「花にはパワーがある。どんな極悪人でももらって悪い気はしない。見て嫌な気持ちになることはない。それだけ花には人を幸せにするパワーがあるんだ。」と。

――読者に一言お願いします。

チャンスって必ず誰にも訪れるものです。私はそれを“まず動く”ことで掴んだと思っています。悩んだり、考え込んだりする前にまず動いてみる。イギリス留学のときも、「英語ができないから。」なんて躊躇していたら今の自分はありません。有名ブランドのパーティーのときも、「そんな大役、自分に務まるだろうか。」なんて悩んでいたら、今もアルバイトで暮らしているかもしれません。

動かないと何も起こらないんです。失敗という経験すら得られません。動けば、最低でも経験だけは得られます。今は特に景気が悪いので、「利益につながらないだろう。」なんて思って動かないことが、逆にチャンスを逃しているのではないでしょうか。「失敗」とは動かないことです。ちょっとのこと、微力なことでも、意味がないことはありません。些細なことでも積み重なっていけば、必ず実ります。どんな小さなこともないがしろにしない姿勢こそが大事なんだ、と私は自分に日々言い聞かせています。

KOSHIISHI’S NOTE ~インタビュー後記~

「微力ではあるが、無力ではない」

佐藤社長はチャレンジ精神のカタマリのような人でした。
英語が全く話せない状況で英国へ留学したことにも驚きましたが、わずか5000円の花に「一球入魂」ならぬ「一花入魂」でぶつかったり、デザイナーが逃げた誰も引き受けないイベントを成功に導いたり、それらエピソードには感動しました。

みなさんは、「今は力が無いから」とか、「今できるのはこのぐらい」と、自分の限界を自分で作っていませんか?
今、持てる力を出し切り、全力で目の前の仕事にぶつかって行く。何年も先を考えて、努力することも大切ですが、がむしゃらに“この瞬間”を突破することのほうが重要であり、そのエネルギーが将来の自分を支える本当の原動力になるのではないでしょうか。


「微力ではあるが、無力ではない」



インタビューの中で彼が述べたこの一言がとても印象深かったです。自分を信じて挑戦していく佐藤社長の話を聞いて、証券会社に入社したてのがむしゃらな自分と、そんな自分を気に入ってくれたお客様や上司がたくさんいたことを思い出し、初心に帰ることの大切さを思い出したインタビューでした。

株式会社クライアントサイド・コンサルティング
代表取締役社長 越石 一彦


佐藤 康之 SATO,Yasuyuki

株式会社マッシュルーム 代表取締役社長。フラワーデザイナー。20歳で渡英し、英国王室の花装飾を担当する「コンスタンススプライ」のフラワースクールでデザインと経営学を学ぶ。帰国後、英国時代の人脈や経験をいかし、有名ブランドのファッションショーやブライダルなどの各種パーティーの装飾分野に進出。デザイナーとして活躍するとともに、フラワーショップ7店舗を営む。

 

フラワー&ガーデン「マッシュルーム」
所在地 東京都港区赤坂3-6-12
電話番号 03-3588-8787

越石 一彦 KOSHIISHI,Kazuhiko
株式会社クライアントサイド・コンサルティング 代表取締役社長
アントレプレナードットコム株式会社 代表取締役会長

 

史上最年少31歳で山一證券池袋支店の課長に就任。メリルリンチ日本証券を経て、株式会社クライアントサイド・コンサルティングを設立、代表取締役に就任。
現在、企業顧問として、現場の直接行動を劇的に変化させる実践論を中心に常時20社以上のベンチャー企業や上場企業の経営を支援。
また、アジア国際支援財団の評議員 議長、函館大学非常勤講師も務める。「ビジネスで成功する決め手は、パーソナルブランド」(ゴマブックス)など著書、講演多数。

 

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