前回は、逆転の発想で思いついた「エグゼクティブパーティ」と、自分に投資することの
意義について語っていただきました。今回はいよいよ、飲食業界に打って出たお話を中心に伺います。「たこ焼き」、「夜お茶」、「ウェディング・パーティー」。貞方社長のヒストリーに迫ります。
たこ焼き屋を始めるにあたり、ノウハウはあったのですか?
全くありませんでした(笑)。すべて自分ひとりで試行錯誤しました。飲食業の経験則を得るにはそれが一番早いと思ったからです。
料理の経験が全くなかったので、たこ焼きに山芋を入れることも知らなければ、薄力粉と強力粉の違いもわかりません。水と粉の配分とか、火力の強さとか、タコの大きさとか、外側がカリッと中側はしっとりと焼くために、何十回もトライしました。
それから、美味しく焼くには技術も必要ですから、キリの扱い方や泡の立て方など、オープンの2~3ヶ月前に朝から晩まで寝ずにいろいろなことを研究しました。焼きすぎて、腕がつったことは何度もでした。
それで、学芸大学の商店街で5坪・家賃10万円のところで始めたたこ焼き屋は、初月で1ヶ月170万円売る店からスタートできました。
成功の秘訣は?と聞かれるのですが、味ももちろんですが、「うまくプロモーションをしたから」と思っています。まずは「そこに美味しいたこ焼きがある」ということをわからせないと、みんな買いに来てくれません。割引券を駅前で配ったり、新聞に折込チラシを入れたり、とにかく地元のお客さまに徹底的な周知を図りました。
それから、学芸大学という街を、その街に住んでいる人をとにかく調べましたね。西口は若い夫婦が多いとか、半径500mは女性の一人暮らしが多いとか。
学生パーティで女子大生を集めたり、ねるとんパーティでエグゼクティブを集めたり、もともと人を集める仕組みが得意でしたので、今まで何気なく身に付けたマーケティングで売れたと思います。
飲食は、味はいいのは当たり前で、プラスアルファで何をするのかが重要ではないでしょうか。
たこ焼き屋をきっかけに、次の事業が生まれていったのですか?
そうです。たこ焼き屋を続けていく中で「あ、貞方が飲食やっている」という噂が広まって、たこ焼き屋も上手くいっているし、ねるとんパーティも上手くいっているから、「こいつにレストランやらせたら上手くいくかな?」と思ってくれた人がいました。
そこで、共同経営で『ムーンチャイルド』というレストランを作ることになったのです。
私はお金を出さずにノウハウと人を提供し、共同経営者がお金を出してくれました。
保証金が3000万円で内装代が5000万円くらい、トータルで8000万円くらい。
たった25坪くらいのレストランでしたが、当時は珍しいオープンテラスで、シフォンケーキやカプチーノ・エスプレッソなどを本格的なイタリア製の珈琲メーカーで作っていました。
お酒に強くない女性が、夜中にあと1軒だけどこかに寄りたいと思ったときに行く店がない、そういう層を取り込めばうけるはずだ、と考えてました。
するとそのうち、イタリアンやオープンテラスが流行ってきて、夜にカフェオレやショートケーキを食べる「夜お茶」ブームが雑誌の“JJ”などに取り上げられて、女性客が増え、それに連れて男性客が増え、とにかくすごく繁盛しました。
そのまま順風満帆に進んだのですか?
最初は、本当に順風でした。1ヶ月に1700万円売り上げて、単純に700万円ほど利益が出たのです。たった、25坪のレストランから!
それを共同経営者と折半なので、350万円が自分に入ってきました。
でも、上手く行っている時には必ず落とし穴があるといいますが、1年半くらい経った頃に、共同経営者が「貞方のノウハウはもう十分だ」と、私が売上の半分を貰っていくことに不満を感じたのか、「貞方を追い出そう」と画策したのです。
当時は私が人件費を払っていて、もちろん店長にも給料を払っていたのですが、「今の給料を1.5倍にしてあげるから」と言って、私を裏切らせたのです。
そうすると、私が居なくともお店はまわるので、お金を出していなかった私は、結果的に追い出される形になったのです。結局、共同経営は1年半で終わってしまいました。
それでどうしたのですか?いきなり路頭に迷ってしまったのですか?
実はその当時、ねるとんパーティもたこ焼き屋も平行して続けていました。
「共同経営は長くは続かない」とう危機感をどこかで抱いていたのです。ですから、レストランで儲けた350万円を和食屋やディスコなど、次のお店に投資していました。
ある有名な社長さんが代官山にFLWという帝国ホテルを設計した建築家フランク・ロイド・ライトのイメージで作ったディスコがあり、そこが1年くらい手付かずのままでした。
今でいうクラブなのですが、天井が高く、厨房が狭いのでレストランや他の用途に転用できなかったのです。
でも私も夢を見ていて「かっこいい!」と思ったので、会員制のバーを開きました。
しかし、今度は全く上手くいかず、3ヶ月で1500万円くらい赤字を出してしまいました。従業員からも「もう止めましょうよ」と言われました。
でも、契約するときに2000万円払っているし、赤字の分を含めると3500万円
パーになってしまう・・・。それは厳しいと思って「大きな会場でできることはないか?」と、またも必死で考えました。
どのようなアイデアを思いついたのですか?
普通の飲食店は設備が不十分で合わないし、大箱のクラブはいまさら流行らないし、何か良い手立てはないか。
そこで思いついたのが、ウェディング・パーティー専門会場でした。
ちょうどその頃、リクルートからゼクシィが創刊され、オリジナル・ウェディングやレストラン・ウエディングが流行りだしていました。天井の高さや重厚感がウェディングをするのにはいいスペースだと閃いたのです。厨房が狭くて料理に適さなくても、ケータリングなどでカバーできる。
「地下でウェディングなんて・・・」と思うでしょうが、そこにキャンドルを敷き詰め、幻想的な空間を作り出すことで、薄暗い地下のイメージのデメリットをメリットに変えたのです。
それがまた当たりまして、九死に一生を得ることができました。
お話を聞いていると、成功の後には失敗があって、そして成功・・・その連続ですよね?
いつも波瀾万丈というか、上手くいったと思うと人から裏切られたり、このくらい売上があって良いなと思うと、結局みんな就職したり。
そんな繰り返しで、上手いっても、いつもギリギリなのです。
人にサービスすることが大好きで、徹底していますよね?
そうですね。人が幸せにしている姿が大好きです。お客様がどうしたら喜んでくれるのかを常に考えながら、サービスを提供しています。
レストランやエステなどの次は、子供の頃から夢だったサービス業の集大成であるホテルと決めていました。4年前に、それを熱海に「Relax Resort Hotel」としてオープンしました。
ホテルについて改めて考えてみると、ただ泊まるだけとして、カプセルホテルに泊まれば3千円。ビジネスホテルだと7千円。だけど、ペニンシュラだと7万円するわけじゃないですか。どこも「ただ、寝るだけじゃない」と言ってしまえば、確かに寝るだけ。
広さが10倍だから10倍の料金を払うわけではないですから、サービスの対価として大事になってくるのが「付加価値」なのです。
その人が感じる価値は、カード会社のCMではないですけど、まさにプライスレス。
例えば、飛行機だってファーストクラスだったらヨーロッパまで130万かかるのに、エコノミーだったら8万円くらいで行けますよね。同じ飛行機なのに、と言ってしまえばそれまでです。
でも、ファーストクラスに乗れば、「貞方様」と名前で呼んでくれる。12時間のフライトだったら、夕食を今食べてもいいし、降りる直前に食べてもいい。好きなときに好きな物が食べられるし、お肉も「焼き方をどうなさいますか?」って聞いてくれる。
「そんなのに、100万円以上も払うの?」って思うかもしれませんが、ファーストクラスに乗る人にとってみれば、その価値が重要だと思います。
それは貞方社長の経営するホテルにも言えることですか?
もちろんです。私のホテルもたった13部屋しかありませんが、ファーストクラスみたいなサービスを提供しています。
実は、付加価値が高いことをやらないと勝てない、という信念があるのです。
【次号】第4回:人を使うのは面倒である反面、それを避けてはいけない。
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