― 大塚社長には、創業時の苦労話などいろいろ聞きたいのですが、まずは、大評判の子育て応援コンビニ「ハッピーローソン」から。そのきっかけも偶然だったとか。ハッピーローソンのお話は、すごく大塚社長らしいエピソードだと思うんですが、そのお話から聞かせていただけますか?
ハッピーローソンは本当に偶然のきっかけでしたね。
たまたま経営者の会合で、ローソンの新浪社長に会って名刺交換をしたので、せっかくだからと思って提案をしたんです。「ローソンって凄くいい土地にコンビニがあるから、そこに託児所って併設してもいいんじゃないですか?」
そうしたら、新浪社長も「それいいよねぇ!!」って、結構盛り上がって、いろいろ話したんですよ。
それで、帰ってきてメールを送っておいたんです。
「ローソンで託児所併設型店舗を開いたらいかがですか?一度正式にご提案したいんですけど。」
でも新浪社長からは、なしのつぶてで。当然ですよね。あのクラスの人になれば毎日大勢の人たちと会っていますから。「まあそんなもんだよな。偉い人だし・・・・。」って思っていて。
ところが、それから2年くらい経ったときに、うちの社員がパソコンを見ていたら、ネットのニュースか何かで、【ローソン、託児所付きコンビニを始める!!】という数行の記事をみつけて。
「あれ?社長、これ社長が新浪社長に提案したって言っていたやつですね。いよいよ始まるんですね !」
「え?いやいやそんな話は聞いてないぞ!」
それですぐに、新浪社長の名刺を急いで探してメールを送ったんです。
「私が2年前に提案させてもらったんですけども、いよいよ実現するんですね。よろしかったらお手伝いさせてもらえませんか!」
新浪社長からすぐにメールの返信がありました。
「そうなんですよ。実はやることになりました。大塚さんのことはよく覚えていますよ。」
絶対覚えてないと思うんですけどね。私のことなんか。でも「覚えていますよ。」って書いてくれたんです。「つきましては、担当者から連絡させますので、是非会社に来てください。」と書いてあったので、ローソンに乗り込んでいきました。
会ってみたら、担当部署の人たちもそういう記事が出ちゃったのは知っているけれども、託児所付きとは思っていなかったと。基本的には子育て応援みたいなかたちで、子育てママが喜ぶようなコンビニを作ろうということだったんだけれども、新浪社長が「託児所付き」って言ってしまったんですと。だから、これからの検討だし、まだまだどうなるか分かりませんよと、最初に言われたんですよ。
自分の持論としては、「ワーキングマザーよりも子供を預けられない家庭の主婦の方がストレスが多いから、虐待のような問題もでてきてしまう。ストレスから解放してあげられるスペースが必要だ。」というものがあるんです。
なので、熱く語ったんです。
「いや、これは新浪社長がおっしゃっているように、非常に有意義なことですよ!」
「子育てママが苦労していると、結局社会にとってはよくないんです!」
「それを考えると、コンビニに託児所は本当に“あり”なんですよ!」
それで、といろいろ議論が始まって、「じゃあ、実現に向けて進めてみましょう。」ということになったんです。
― 普通だったら、新聞記事見て「なんだよ。やられた・・・。」って終わるもんです。
だけど、「ちょっと待ってくださいよ!」と行動が起こせる。そこが大塚社長の強みですよね。
ベンチャーって、人脈も無くて、資本も無くて、無い無いづくしじゃないですか。
まあ、基本的に無いづくしなわけだから、怖いものなしで行けばいいと思っているんです。新浪社長にぶつかってみて、断られたら、そんなもんだよねって諦めがつきますから。どこにでもぶつかって行けるっていうのがベンチャーの強みですよ。
― 悩んだり、悔しがったりするよりも一歩でも動いたほうがいい?
うん。動いた方がいいですよね、やっぱり。悩むひまがあるなら。それがやっぱり自分たち起業家の本来のあるべき姿(★1)ですよ。
そうやってぶつかっていったからこそ、こちらが心配するような状況ではなかったことがわかるんです。最初に訪問した時には、ローソンの社員の方にもノウハウも無くって、どうすればいいんだと右往左往しているところでした。十分チャンスがあったんです。はじめからあきらめていたら(★1)、そのチャンスも知らずに終わっていました。
(★1) KOSHIISHI’S POINT
大塚社長のハッピーローソンのお話は、一般のサラリーマンが持っていない起業家に必要な特有の考え方を教えてくれています。
一般サラリーマンの思考は、(1)できないと決めつけがち、(2)まず計画、その後に実行、(3)失敗の可能性の高いものには手をださない、という傾向があります。
一方、成功する起業家は、(1)簡単に諦めない、(2)思い立ったら即実行、(3)失敗の可能性を恐れずあたってくだけろのトライアンドエラー、で最終的な成功の確率を高めていきます。
― それで、その後はとんとん拍子に進んだんですか?
それが、一筋縄ではいかないですよね。やっぱり。
まず、一年がかりでの構想作りでしたから。それだけでも大変でした。20回以上はローソン本社に足を運んだと思います。「カフェがあったほうがいいんじゃないか。」とか、「子供たちの育児用品があったほう方がいいんじゃないか。」とかいろいろ提案をして、揉みに揉んだというのはありました。
それで、いざ、もう実行しますという段階になったら、今度は、土地が見つからないんですよね。普通のコンビニより広い土地が必要だったんです。「見つからない!見つからない!」「どこにする?どこにする?」と。横浜の住宅地にするのか、日本橋のような目立つ所にするのか、いろんな案は出ました。それで、最終的に土地が見つかったら、「申し訳ありませんが、ルールなので採用は4社入札になります。」っていわれて。
「おいおいおい!ここまで1年間一生懸命にやってきたのに!!」
でも、「ルールなので、他の企業さんにも、話をしますから。」「大塚社長の熱意と誠意は十分理解していますが、今回の話とは別なので...。」といわれて。そりゃ、ないよって正直思いましたが、同時に、ああ、さすが大企業だなとも思いました。
その時にコンペになった4社は、全て大手の教育会社でした。基本的に大手の本体があって、その子会社の育児サービス会社みたいなところに声が掛かりましたね。
とにかく安心ですもんね。ベンチャーっていろいろな意味で危ないですから、大企業からすると怖いと思うんですよね。いくら新浪社長に言ったからっていっても、新浪社長と私は、あの時の1回の面識しかなかったんです。実際、プロジェクトには顔なんか絶対に出さないから、こりゃ、どうなるか分からないなと思っていました。ただ、そんな状況でしたよ。
― でも最終的に選ばれましたね。
「何で御社が任されたんですか?」ってよく聞かれるんです。なぜ、宇都宮の地方ベンチャーに。「提案力ですね。」って答えるんですけど、提案力だけではないですよね。最終的には誠意とか思いの部分だったと思います。
うちの会社の姿勢としては、よりよい子育て環境を提供していきたいというのが常にあります。子供の教育とその周りの環境づくりが、車の両輪だと思っているので。「子供の教育を!子供によりよい教育を!!」って声高に叫んでも、子供のことばっかり言っていると、親に負担ばっかりいくじゃないですか。「ちゃんとお弁当作ってくださいね。」とか「手料理を作ってくださいね。」とか。だけど、そんなことを言っても、実際のお母さん達は忙しすぎて作れなかったりするわけですよ。じゃあ、どれを選んでどれを省くかっていう選択肢を与えてあげないと、ストレスばかり溜まっちゃいますよね。
繰り返しになりますが、ローソンのような大企業がそれを少しでも実行に移していくということは、本当に意義があります。それと当時は、子供が襲われるとか誘拐されるとかの事件が多く、公園に連れて行っても遊ばせられないっていう時代背景もあったので、安心して子供を遊ばせられる場所を提供したいというのもあったんですよね。
― それで、ハッピーローソンはずいぶんマスコミでも話題になりましたね。
そうですね。日本橋店は期間限定だったんで、7ヶ月間だけでしたけど。終わった時に新浪社長からわざわざ直筆の色紙をいただいたんです。あの方は赤い筆で書くのが有名で、それでちゃんと社印付きで、「うちの子供達も連れて行きましたけど、本当によかったです。」って。心遣いにも凄く感動しましたし、本当にやってよかったなあって実感しましたよね。
半面、「新浪社長、上手いな。」とも思いましたけど。そこまでやられたら、またいつかローソンのためにって思っちゃうじゃないですか。でも、このプロジェクトは、本当にやってよかったです。
次回は、大塚社長のこうした積極性の背景となっている生い立ちやスタートアップ時の苦労話などについてお話いただきます。
【次号】第2回:国を変えるのは教育だと「志」をたてて。
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