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第4回 「分析の準備に必要なもの。」 分析の心構えと準備(1)

著者: 株式会社ウフル 事業推進本部 本部長  前野 好太郎


分析のゴールは何かを考えてみる

よくデータ分析を進めるミーティングに出ていて感じることがあります。
それはデータ分析でいろいろなことがわかるのは良いとして、それが「わかったことでいったい何の役に立つのかがわからない…」という状態のまま分析の方法やテクニックの話に終始してしまうことです。
特にビッグデータを扱うプロジェクトはデータの収集から分析に至る期間がとても長かったり、分析者と分析結果の利用者が別の人だったりすることでこのような状況に陥ることが多いのではないかと思います。
分析者にしてみれば、多くの時間と費用をかけて分析した結果に対して「それはわかったけど、何の役に立つの?」と言われてしまったら、本当にショックではないかと思います。

このような状態に陥らないためにも、分析したデータを使ってそもそも何がしたいのか「利用目的をはっきりさせる」ことと「利用イメージを持つ」ことが必要ではないでしょうか。
データをそろえたり、分析環境を整えたり、分析のためのスケジュールを組んだりと「分析環境」のことばかり意識してしまうことが多いと思いますが、どうかそこでは無く、分析のゴールをしっかりと考えることに十分な時間をかけるようにしていただきたいと思います。

分析の5W1H

利用目的を考える際に、分析の軸を持つことはとても重要なことです。何のために分析をするのかがはっきりしてくるという効果や、どのようなデータをどの粒度で集めるのかという方針をはっきりさせるという効果もあります。
まずは最もベーシックな分析の軸となる「5W1H」です。ポイントを確認していきましょう。

いつ(when)

「時間軸」です。データの粒度を決定する際に利用する軸と考えていただければと思います。いくつかのデータを比較する際には、どうしても最大公約数でしか分析ができません。例えば、1時間単位のデータと1日単位のデータを比較検討する場合には1日単位のデータ分析しかできません。この点に留意しながら分析の粒度を決めて行って下さい。分析の粒度が極端に大きいデータか混じっている時には、あえてそのデータを外すのも手です。

どこで(where)

「場所・地域性」の軸です。データの中に住所データや都道府県データ、地域の区分データ、店舗データなどがあった場合にはこれを使わない手はありません。地域属性によって施策が成功したり、失敗したりしていることを把握することはもちろんのこと、同じような環境であっても数字にばらつきがあれば、別の軸に原因を求めることができます。

だれが(who)

「主体」の軸です。ここでは主体を主に人として位置付けて下さい。例えば、担当者ごとの分析や部や課といった組織によるもの、あるいは、広告などの場合には起用した人(タレントや社員、一般の人など要素は多岐に渡ります)などがこれに相当します。私たちが行っている Social Listening の分析では、まさにこの軸が中心となります。

なにを(what)

「モノ」や「事象」の軸になります。人以外の何かになります。一般の企業であれば「商品」や「サービス」が相当すると思います。ポイントは「モノ」だけではないところです。アフターサービスや営業の提案の仕方、プレゼンテーション(セミナー)の内容、満足度のようなものもこの軸に含まれます。

なぜ(why)

「理由」の軸になります。狭義の意味でとらえるとアンケートやコールセンターログ、 Social Listening の書き込み内容などがそれに当たります。VoC(Voice of Customer)とも呼ばれます。ここから有意な情報を取り出すためにはテキストマイニングが必須の要件となります。このようにお伝えするとハードルが高くなってしまいますが、広義の意味で考えればいろいろなデータが該当するので、利用できるデータの幅が広がります。例えば新聞や Webのニュースの内容、そして天候などのオープンデータを利用することで理由を突き止めたり、推測したりすることが可能になります。

どのように(How)

「方法」の軸になります。例えば、どのような方法でその結果に至ったのか、プロセスを軸に分析をしてみたり、データの取得方法を変えることで別の結果を取得してみたりすることがこれにあたります。この分析をするためには物事(例えば消費者の購買行動)をプロセスに分ける必要があります。
田中正道さんとの共著の「ビッグデータ分析 Excel新機能で簡単に!」の「第2章 カスタマージャーニーと顧客行動分析」にその詳細が書かれていますので、詳しくはこちらを参照してください。

分析データの出力方法とその位置づけ

データの出力形態は、データ集計に新しい方法が利用できるようになったことにより、これまでとは大きく変貌を遂げてきています。次の図は「これまで」と「これから」の分析データの位置づけを考える上で役立つと思いまとめてみました。左に寄れば寄るほど「これまで」の位置づけであり、右に寄れば寄るほど「これから」の位置づけとなると考えていただければと思います。

これまで、システムは左寄りのものを提供することがメインだったと思います。しかしながらこれらのデータを一覧的に眺めることは分析とは言えないと思います。定量的なデータについて、それはそれで必要なものではありますが、軸を変えて分析することが難しいデータであるということが言えるのではないでしょうか。例えば、日次で集計されているデータを月次に軸を変えてみたり、商品のデータをいくつかピックアップして推移を見てみたり、商品ごとの集計を担当者ごとに見てみたり…。これは非常に時間のかかることですし、そもそも集計されているデータを分解して組みなおすことは、技術的にもとても難しいことです。

また、情報が形骸化しイノベーションを起こすことが難しいとも言えます。
Excel を利用すれば、これらの問題を解決することができます。例えば、日付から月を取り出して日次のデータを月次に加工したり、年を取り出せば年次の対比(昨年対比)をしたりすることも可能です。また、後に扱うピボットテーブルは軸を自由に変えることができます。例えば、時間の軸を固定し、地域の軸や人ベースの集計に変えていくなどの操作がマウス操作で簡単にできます。フィルターを変えることも容易です。私の会社でもそうですが、売上分析をするときには Excel をミーティングの時に利用し、その場で集計単位や軸を変え、原因や Next Action を考えながらディスカッションを進めています。

柔軟にデータと向き合うことで、新しい気づきが生まれ、イノベーションも生まれやすくなると思います。言い方を変えれば「静的」なデータ分析から「動的」なデータ分析に移行しているとも言えるのではないでしょうか。
私がコンサルティングしている企業でもイノベーショナブルな活動をして、常に前向きにさまざまな取り組みを行っている部署では、ディスカッションの際に Excel の帳票を常に変化させながら、分析を進めると同時に次の取り組みを考えていらっしゃいます。以前勤めていたマイクロソフトでも同様です。これが Excel の先進的な使い方であると思います。

次回は準備の4回目として、引き続き、分析の準備と心構えについてご紹介します。
どうぞお楽しみに!!

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著者プロフィール

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前野 好太郎

株式会社ウフル 事業推進本部 本部長

都留市立都留文科大学社会学科卒、国立上越教育大学大学院教育研究科修士中退。
アイシーイー株式会社 取締役、有限会社ビイクリエイティング 代表取締役、株式会社インフォース 取締役を経て、日本マイクロソフト株式会社に入社。同社ではSQLServerを中心としたBI製品やOffice 365の販売促進を担う。
現在は、株式会社ウフル 事業推進本部 本部長。プログラマ、システムエンジニア、コンサルタント、エバンジェリスト、セミナー講師、そして同社のマネージャー業とマルチな活動を行っている。
趣味は、畑仕事。山梨から都心の会社まで、毎日、片道2時間半をかけて通っているが、週末の畑仕事はやめられない。夏はトマト、キュウリ、カボチャを中心とした夏野菜を、冬は白菜、大根、春菊、ネギなどの鍋の材料を栽培している。あとは最近手に入れた一眼レフとペットの犬と猫。暇を見つけてはシャッターを切っている。

〈著書〉
『中小企業向けAccess開発実践ノウハウ』(翔泳社、2007年)
『実践Accessアップサイジング』(共著、翔泳社、2008年)
『ビッグデータ分析 Excel新機能で簡単に!』(共著、日本経済新聞出版社、2014年)
『はじめようExcelでビッグデータ分析』(リックテレコム、2014年)

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