成毛眞

欧州の中小企業経営者が裕福な理由とは?

――欧米も日本と似たような経済状況にあると考えていいのですか?

経済の状況としてはそうです。リーマン・ショック以後は、暗中模索の状況が続いていると思います。

――日米欧で経営者の考え方に違いはありますか?特に多数を占める中小企業についてはいかがですか?

米国と日本の中小企業はほとんど一緒です。ただし、欧州のイタリア、フランス、ドイツなどと日本は少し違うかもしれません。

――どのような違いがあるのですか?

制度的な問題です。イタリアやフランスでは、いわゆる裏経済が発達しているのです。政府が補そくできない所得がたくさんあるわけです。そこには税金がかけられませんから、イタリアやフランスの中小企業の経営者はものすごく裕福なのです。
「イタリア経済はボロボロだ」と言われていながらも、街のピザ屋のおじさんが上質なスーツを着ていたり、高級車に乗っていたりしています。昨年公開された『アマルフィ 女神の報酬』という映画では、イタリアのピザ屋さんがすごくかっこいい身なりで登場するのですが、イタリアに行ってみると本当にあのような人がいるのです。

――どちらが幸せなのですか?

脱税や裏経済を肯定しているわけではないですが、それは断然に欧州です。ただし、裏経済が大きいがゆえに、一度崩れ出すと、経済そのものは大きく崩れてしまいます。2倍にレバレッジがかかっているのと同じことですから。でも、個人は全体経済とは関係なく、暮らせるわけです。蓄えもありますから。

本物のお金持ちは”モノ”で蓄える

――蓄えと言っても、日本人が預貯金でお金をためるとはわけが違うのですね。

まったく違います。裏経済というのは、ためる経済。フロー経済ではなく、ストック経済です。イタリア人に大家族が多いのは、おじいちゃんやおばあちゃんが財産をもっているからです。日本では相続税を取られて残りません。日本にはフローもストックもありませんが(笑)。所得の補そく率が低いところは大家族化し、補そく率の高いところは核家族化します。

だから、イタリアではフェラーリのような大企業に勤めるよりも、自分で商売をしたほうがもうかるわけです。

――ヨーロッパのお金持ちたちの個人資産はけた違いです。

持っている絵画の数とかが、全然違いますよ。欧州では、絵画や高級宝飾というのは、一種のマネーロンダリングに利用されていた歴史があります。500万円の臨時収入があったとき、黙っていたら税金で半分が取られてしまいます。だから、500万円の時計を買います。これがストックになるわけです。

――困ったときに、現金化もできます。

ルガリやカルティエなどの高級ブランドメーカーには、商品を販売するためのカタログがあるのですが、過去のカタログに載っていたもの、つまり今は誰かの手に渡っているものにも買い手がついたりするのです。メーカーは買い手が誰だかわかっているので、売買が成立します。ただ、どこの国にあるかはまた別問題です。そのようにして、ある種のマネーロンダリングのようなことが行われているようです。イタリアとかフランスに宝飾店が多いのは、このような理由があるのです。

だから、何千万もするような時計を腕につけている日本人がいますが、それを見たイタリア人は腰を抜かします。「脱税の証拠を見せびらかしてどうする?!」(笑)。

――そのようなところまでわかっている日本のビジネスパーソンはほとんどいないですね。

日本人は「日本経済はどうですか」と聞くと、前の週に見たバラエティ番組のコメンテーターのコメントをそのまま言うような人が多すぎます。テレビに出演している方で、アメリカの年次改革要望書を読めば未来が見えるなんて言う人もいますが、そのような人は、海外に行ったことがないか、英語が読めないかのどちらかではないかと思います。
経営者や事業家ならば、少なくともある現象に対する自分の仮説くらいは持っていないと厳しいです。

今回は、ヨーロッパの裏経済やフロー経済とストック経済の違いなどについて伺いました。次回は、成毛さんが投資したくなる経営者像や起業家として成功する人のタイプなどについて伺います。
投稿日:2010年4月7日
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